13,戦闘訓練
勢いよく出てきた私達だけど……一体何をすればいいのか分からない。
光の魔術を使いこなせるようにするのは、そう簡単なことではない。
多分戦闘鍛錬をすればいいのだと思うけど……一体自分がどんな状況で光の魔術を使うことが出来るのか分からないからには、何をしたらいいのか……。
「……とりあえず、私と葵さんで戦闘訓練をしてみてはどうですか?」
「麻美ちゃんと……戦闘訓練をする?」
意外な言葉だった。
確かにそれが一番手っとり早いと思ってたけど、麻美ちゃんがどの程度の実力を持っているか、私には分からないのだ。
まぁ、条件的には麻美ちゃんも同じなので、この勝負は受けてもいいと思った。
「それじゃあ……場所を移そうよ。ここじゃあ満足に戦えないよ……何せ室内だし」
「そうですね……それでは場所を移しましょう」
そして私達は、場所を移して、戦闘訓練をすることとなった。
「……ここならいいですよね?」
「……うん」
来た場所は、完全に人気のない公園だった。
いや、公園とは名ばかりで、遊具らしき物がなかった。
ベンチもなければ、水飲み場などの場所もない。
本当に、ただ草むらが敷いてあって、仕切りである塀が用意してあるだけの、簡単な作りの公園となっていた。
……いや、ここはもはや小さな草原とでも言うべきだろうか。
「けど、よくこんな場所を見つけたね。人気がほとんどないようなこんな場所を」
「……ここは私のお気に入りの場所でもあるんです。夕方になると凄く綺麗な景色が見られるので……たまにこうしてここの夕日を見に来るのです」
「ふ~ん……じゃあ、ここに来るのは私が二人目ってことなのかな?」
「……そうですね。誰かを連れてきたのは葵さんが初めてです。ここって公園って名前がついているのに、遊具もなくて不思議な場所なんですよね……一体誰がここに公園なんて作ったのでしょう」
それは天上界に前から住む誰かが知っていることだから、誰かに聞けばいいと思うけど……。
けど、この場所はまだ、私達以外は存在するかしないかすらも知らないのだ。
この場所について聞くということは、すなわち他人にこの場所を教えるってことだ。
なんとなくだけど、それは嫌だなぁ。
「それじゃあ、ここでやるんだよね?」
「……はい。ここなら誰の邪魔も入りませんし、今日はここで暗くなるまで戦います」
……そう言えば、ここって天上界なんだよね?
前から思ってたけど、確かここって光の世界なんだよね?
ならば……。
「どうしてそんな光の世界にも、夜って訪れるのかな?」
「え?」
「あ、何でもないの。別にちょっと気になっただけだから」
「どうしてこの世界にも夜が訪れるのか、ですよね?」
「あ、うん」
どうやら聞こえていたらしい。
意外と麻美ちゃんの耳はいいらしい。
「私も少し気になってアルカ様に尋ねたことがあるのですが……この世界に夜があるのは、それが世界の理だからだそうです」
「世界の理?」
「はい。人が住む世界というのは、朝・昼・夕・晩の四つの時間に分かれているのが一般的です。でないと、人はいずれどこかで体調を崩してしまうからです」
「う、うん……」
確かに、夜になったら眠れるような環境がなければ、疲れがとれなくて、その疲れを翌日まで引きずらなければならなくなる。
……そんなのは、確かに嫌だな。
「ですから、この世界も、全世界共通の認識通り、朝もあるし、夜もあります。その一方で、堕落世界にもまた、朝があって夜があるそうです」
「……なるほど」
いくら天上界と言えど、世の理に逆らって、一日中昼にしないのは、そう言った理由があったのか。
「お話はこのくらいにして……そろそろ始めますよ?」
「うん……行くよ!」
そして私達は、戦闘訓練を始めた。