13,事件の整理
「んで、具体的にどうするんだよ?」
保健室から出た後、第一に晴信が大和に尋ねる。
大和は冷静に、こう答えた。
「まずはこういうことを相談できそうな人達に会いに行こう。そうだな……生徒会とか」
「早乙女達か……確かに、こういう調査は生徒会の範疇だもんなぁ。一応学園内で起きた事件だし、耳に入れておく必要はあるよな」
瞬一も、後から反応するように答える。
確かに、学園内で発生した事件等は、校長が現在倒れている為、教師陣だけで片付けるのは難しい。
ひょっとしたら、春香が倒れた件が、未だに蜜柑達生徒会メンバーに伝わっていない可能性も否定は出来ない。
そんなわけで、荷物を片付ける為に教室に向けていた足を、そのまま生徒会室にベクトル変換した。
「さて、これまでに身近で起こった事件をまとめて整理してみることにしようか」
まずは、ここまでに発生した事件を改めて振り返ってみることにした。
「まず発生したのが、全国で発生していた襲撃事件の延長線上で起きた、東京都内科学製品工場襲撃事件、か」
「その建物こそ、僕達『組織』が利用している建物でもあったから、僕と森谷の二人で調査してみたんだけど……そこにはすでに、何者かがいた」
「その何者かの目的はなんなのか良く分からないが、とりあえず俺と大和の二人は迎撃した」
瞬一の言葉に続くよう、大和と大地が言う。
第一に発生した……科学製品工場連続襲撃事件。
東京を最後にその事件の報告も聞かなくなったが、未だに全国では復旧していない工場もあるらしい。
犯人グループが何を考えているのかも分からないため、こちらに関してはあまり大きな動きを見せることが出来ないのが現実だった。
「続いて、校長が倒れた、か……」
晴信が呟くと、
「こっちに関しては、前兆も何もなかったし、どうして倒れたのかも不明だな……」
「というより、校長先生がどこにいるのかも分からないですよね?」
啓介の呟きの後で、アイミーンが尋ねる。
そして、月夜が呟いた。
「…………もしかして、すでに」
「いや、その可能性はないよ。何故ならついちょっと前に、僕達の方に連絡が来てるからね……校長先生本人からではないけど」
実は大和、すでに『組織』の上層部から校長について説明を聞いていたのだ。
その説明によると、校長は未だに意識不明の重体だが、外的な怪我などがあるわけではなく、特にこれといった変化はないとのことだ。
ただ、上層部からの話によると、
「校長はアンジック病にかかっているらしい」
「「「「「「え?」」」」」」
大和の言葉に、瞬一達は驚きの声をあげた。
何故驚いているのかというと、
「校長の病気は、あの日に治ってるはずじゃなかったのかよ……!」
「そ、そうだよ! だって私達、吉沢先生に薬を作ってもらうようにお願いしたじゃない!」
葵の言う通りだった。
そう、校長はすでに、茜の処方を受けているはずなので、本来ならアンジック病にかかるわけがないのだ。
それが、どうだろう。
「これには何か裏がありそうだな……ひょっとしたら、最後の春香のアンジック病感染と何か関係があるんじゃないか?」
瞬一は、やがて第三の事件のことを口にする。
それと校長のアンジック病の件は……繋がるのではないかと考えていた。
「そうだね。そう考えるのが妥当だと思う。恐らくこれらの事件は繋がっているはずだ……科学製品工場襲撃事件からだからね、アンジック病患者が急激に増えたのは」
これらの事件が意味することとは、果たして何なのか?
春香がアンジック病にかかってしまったことで、彼らにとっても他人事ではなくなってしまった為、どうにかしてこの事件を解決させたい。
そう思っていた彼らは、やがて生徒会室にたどり着いていた。




