2,二学期
九月。
夏休みも終わり、各学園において新学期が始まる時期でもある。
ここ、雷山塚高等学校も例外ではなかった。
「いやぁ……色々あったけど、始業式ってのはやっぱり夏休みの疲れを引きずるから面倒臭いよな……」
瞬一は、歩きながらそう呟く。
隣にいた晴信は、
「そうだな……夏休みがあれだけ楽しかっただけあって、始業式に学校来るのが面倒なんだよなぁ」
「だろ? ……かったるい。いっそのこと始業式をネットとかでやったらいいのによ」
「そうするとクラス分け試験が出来ないでしょ?」
「まぁそれもそうだけどよ……どうせ二学期のクラス分け試験って筆記じゃねぇか。それならいっそのことパソコンで選択形式の問題にすれば集計も取りやすいしいいんじゃねえか?」
「制限時間とか守らない人とか出てくると思うけど……」
瞬一達は、そこまでしても学校には来たくないようだ。
……高校生である者、あるいは学生であった者なら恐らくは分かるだろうこの気分。
夏休みが明けて次の日の登校というのは、どうも気分があまりすぐれないのも納得は行く。
宿題を済ませ、遊び、受験生である瞬一達はそれに加えて受験勉強もやった。
それだけ充実した夏休みから解放されて、二学期の授業が始まるのだ。
身体が拒絶反応を示してしまったとしてもおかしくはないだろう。
「……まぁ、来るからには今日も頑張りますか。どんな内容の試験がこようと、見事に突破してみせますよっと」
「瞬一と葵は頑張ってS組残留を目指すんだな……俺は大丈夫だからな!」
「何で? 晴信も試験は受けるんでしょ?」
前回のこの時期となると、晴信がかなり焦っていた時期でもある。
というか、この時期に晴信はS組からA組に落ちたのだ。
だが、今回の晴信はかなり余裕そうな表情を見せている。
瞬一には、それが虚勢なのではないかと思わせる程の笑みだ。
「確かに俺も試験は受けるぜ……だが、受けるだけでクラス変更の心配なんかしなくて済むんだよ」
「なんでだ? ……そうか! 学級委員特権か!」
「御名答だよ瞬一君。つまりもう俺はどんなに成績が下回っていようとも、S組残留決定なのだよ!」
……晴信はS組の学級委員だ。
学級委員特典として、特別にその者は一年間同じクラスに在籍するということになる。
つまり、晴信はもう、一年間クラスが変わる心配をしなくてもいいということだ。
「ずるいなぁ……晴信だけ」
「ハハハハハ! 悔しかったらS組に残留するよう試験問題を頑張って解くんだな!!」
「……クソ。去年までだったら試験問題のことで晴信を弄れたのによ……」
心底残念そうに呟く瞬一。
高二の時のクラス分け試験の日は、瞬一はクラス分け試験の問題のことで一日中弄り倒した程だっただけに、今回の晴信の待遇には、少しイラッとくる所もあった。
しかし、瞬一はそれらの思いを口にはせず、心の中に留めておいたという。
「何がともあれ、そろそろ学校につくな」
「そうだな……そしていよいよ、クラス分け試験が始まる」
瞬一達は、話をしている間に校門前まで辿り着いていた。
……この門をくぐれば、学校の敷地内に入ったことになる。
「さてそれじゃあ、行きますか!」
「「うん! (おう!)」」
元気よく声を出し、三人は校門をくぐった。