84,出現
Side晴信
「異常なしだったけども……他のところは?」
帰ってきた俺達は、とりあえずみんなにそう尋ねてみる。
……全員いるらしいからOKってことか?
「……私達の方は異常なかったよ」
「僕達も異常なしだよ……小野田君の方は……放心状態みたいだね」
小野田はもはや動けなくなってしまっていた。
それほどまで怖かったか……夜の別荘内は。
「それじゃあこれで別荘内探索は終了ってか?」
「……ちょっと待ってください。シュンイチ達がまだ帰ってきてません」
「え?」
アイミーンからのそんな言葉。
瞬一と空ちゃんが帰ってきていないだと?
……一応メンバー確認をする。
アイミーン・啓介・小野田・葵・優菜・刹那・織・春香・俺・月夜・千世・その他使用人の皆様方。
……使用人達を抜いて、この場にいるのは11人。
やはり2人足りない……まさしく瞬一と空ちゃんが足りない。
「瞬一と空……まさか幽霊に!?」
「秀実、無線機を貸しなさい!」
「はっ、お嬢様」
千世が使用人の一人から無線機を奪うと、それに向かって大声で怒鳴った。
「二人とも、聞こえる! 聞こえたら返事をしなさい!」
「……どうなの?」
月夜が千世に向かってそう尋ねる。
千世は無線機から離れて、首を振りながら、
「ダメですわ……ノイズの音しか聞こえてきませんし、返事もありません。恐らく二人に持たせた無線機は壊れてしまっていますわね」
おいおい……それってまさか。
「幽霊の仕業……なんてことじゃねえよな?!」
「「「「「「!?」」」」」」
女子組全員が驚く姿が目に映る。
……小野田はあまりのショックに気絶してしまった程だ。
ていうか男のお前がまっさきに気絶するなよ。
「そんな……それじゃあ瞬一君と空ちゃんは、幽霊にやられてしまったってこと!?」
「落ち着け織! 瞬一がそんな簡単にやられるわけがないだろ!!」
そうだ。
空ちゃんも瞬一も……そう簡単にやられるわけがない。
アイツらだってきちんと魔術を扱うことが出来るんだ……瞬一程ではないが、空ちゃんだってある程度の魔術なら扱えるはず。
何せ葵の妹だぞ?
ある程度の才能があったっておかしくないはずだ!
「とにかく、今は二階に行ってみますわよ! 全員で瞬一達を探しますわよ!」
「「「「「「「「「はい!(ああ!!)(ええ!!)」」」」」」」」」
俺達は瞬一達を探す為に行動を開始した。
……無事でいてくれよ、瞬一・空ちゃん。
「……お前、まさか」
『……』
無言で立つ、謎の男。
ただならぬ気配……尋常じゃない程の寒気。
コイツは、まさか……。
「ゆう、れい?」
「……かもしれないな」
空の呟きに、俺は答える。
コイツがこの屋敷に住む幽霊……数年前に殺されたという、幽霊なのか?
『こんな部屋に来客が来るなんて久しぶりだな……なんだい? 君も犠牲者になりたいのかい?』
「犠牲者……? それって一体どういうことだ?」
『俺はこの部屋で殺されたんだよ。とある事件の影響でね』
「知ってる……この別荘を買い取った奴から話しは聞いてるからな」
『おやおやそうだったか……だったら話しは早い』
ユラユラと、その男は俺達に近づく。
無意識の内に、俺は空を後ろに隠す……空には絶対に被害を出させやしない。
男の身体は若干透けていて、後ろにあるものとかがよく見える。
……それがこの男が幽霊であることを余計に強調させた。
『ここで君達には死んでもらうよ……!!』
「!? 来る!!」
そして、幽霊との前代未聞の戦いが、今始まったのであった。