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Magicians Dream  作者: ransu521
第二部 新学年
105/139

82,散策

「……ただの空き室だな」

「……そうですね」


ここは異常なし、か。

出来ればこの調子で終わってくれればいいんだけどな……千世の話が嘘だとは思っていないけれど。

けど、幽霊がはたして本当にいるのだろうか……いや、それに近い存在なら見たことあるんだけどよ。

科学にまみれたこの時代で幽霊、か……。


「次はここだな」

「は、はい」


どうやら空も若干恐怖が消えてきたらしい。

けど、夜であるのと別荘内の照明が消えている所から総計して、空はまだ怖がっているのは確かだ。


「……手、繋いどくか?」

「え?」


俺からの提案に、思わずそんな声を挙げてしまう空。

そりゃそうだろ……いきなり手を繋ごうかなんて聞く男子の方がどうかしている。

しかもこのシチュエーションだぞ……何か狙ってるとしか思えないだろ。


「少しでも恐怖がやわらぐかもしれないぞ……こんな暗闇だし、迷子になっても困るしな」

「……そ、そうですね」


オズオズと、空は俺の手を握ってくる。

……空の手は、冷や汗で微かに濡れていた。

それほどまで恐怖に耐えてきたのだろうか。


「……あ、あの。これだけじゃまだ不安なので、その……腕に抱きついても、よろしいでしょうか?」

「ふぇ?」


……空が顔を赤くして、身体をもじもじとさせてそんなことを聞いてくる。

いやいやいやいや。

それやられちゃったらまずいよ?

俺の理性ぶっ飛んじゃうかもしんないよ?

こんな場面でそんなこと言うのも不謹慎かもしれないけど……俺の理性がいつまでもつか分からないよ?

そこんとこ了承してる?


「その……瞬一さんなら安心出来ますから。瞬一さんは信頼出来ますし」

「……そ、そうか。なら、俺の腕を貸してやってもいいぞ」

「本当ですか? ありがとうございます……それじゃあ遠慮なく」


『信頼出来る』と言われて、その言葉を裏切るわけにはいかないな。

空は俺のことを信じて、腕に抱きついているのだ。

……理性を壊して空を襲うわけにはいかないだろ、この場面。

俺は空の期待に応えなければならないということだ……しかし。

しかしこれは半殺し状態と言っても過言ではないんじゃないか?

その……腕に柔らかい物の感触が二つ感じられるのですが?


「……」


空の方を見ると、俺の腕にしがみつくことで若干の恐怖から解放されたらしい。

それでもまだ怖いのか、身体を若干震わせているのが分かる。

なかなかに健気な少女だ……空は。


「大丈夫だ。そんなに怖がらなくても……さっきも言ったが、俺が守ってやるから」

「……は、はい」


俺はそう言って空を安心させる。

……とは言っても、幽霊なんて出てきそうにないんだけどな。

そんなに怪しい気配とか感じるわけでもないし……。

……さて、そろそろこの扉を開くとするか。


「開けるぞ?」

「は、はい」


空に確認を取ってから、俺は扉を開く。

ギィッ……というわずかな音を立てて、扉は開いた。

しかし。


「……異常なし」

「ですね……ホッ」


短く溜め息をつく空。

……何だかそのしぐさが可愛いなと思ってしまったのは、俺の心の中で留めておこう。


「大丈夫なんじゃないかな……この階は」

「そうかもしれないですね……多分、幽霊は別の階にいるんだと思います。だってこの階は私達も泊まってる階なんですし」

「だよなぁ……けど、一応最後まで確認しとかなければいけないし……」

「……そうですね」


俺達は、こうしてこの階にある部屋を片っ端から探して行った。

……しかし、特に変わった点が見られることなく。


「……最後にこの部屋か」

「そうですね……開けますか?」

「そうだな……開けるぞ」


とうとう最後の部屋となったのだった。













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