77,お部屋を決めましょう
「よう、月夜・アイミー」
先に来ていたらしい二人は、そこである程度自分の荷物を整理していた。
俺の荷物はっと……これか。
「やっぱし俺の荷物は少ないなぁ」
改めて俺が持ってきた荷物の量の少なさを把握する。
……俺ってば泊まりの癖にこんな荷物の少なさで大丈夫かねぇ……。
とは言っても、二泊三日の合宿の予定だからな……夏休みの宿題やら、そろそろ大学受験のことも考えなければいけないしな。
「大学受験かぁ……俺、何か面倒になってきたなぁ」
そう声を漏らす啓介。
「けど、大学受験しないと……小山先輩と同じ大学には行けないぞ?」
「「「!?」」」
……俺の呟きに反応する、三つの人影。
一つ目はもちろん啓介。
二つ目ももちろん小野田。
そして三つ目も、もちろん晴信……ってゴラ。
「お前には彼女がいるだろ!」
「い、いやぁ……つい反応しちまってよぉ……はっ!?」
「……晴信先輩。一度貴方の彼女が誰なのかをはっきりさせる必要があるようね……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……俺は……俺は……!!」
ドゴッ!
大広間に響く、鈍い激突音。
……刹那が晴信の頭を、魔術によって出現させた特殊な棒でぶんなぐったのだ。
晴信はもちろん気絶……ってか、死んでないよな?
死んで死後の世界で戦線メンバーとかに入隊してないよな?
「錯乱してて何言ってるのか分からないよ、瞬一……」
「はっ!? まさか俺、口に出してた?」
「うん。最後の方が口に出てたよ」
織と葵に、そう指摘される俺。
……特に最後の方の呟きは聞かれたくはなかったことだけに、俺の心のショックは大きい……。
「そういうわけで、私は晴信先輩と同じ部屋にするけど……いいかしら?」
「え? ええ……大丈夫ですわよ、刹那先輩」
さすがに千世も恐怖を感じたのか。
刹那の言葉にすぐに頷き、許可を出す。
そんな千世の許可を聞いた刹那は、自分の荷物と晴信の荷物、そして晴信を引きずって、自分達の部屋へと向かった。
「……ってか、アイツら部屋番とか分かるのか?」
「一応二階にある部屋ならどの部屋を使っても構いませんけど……人数制限の問題から、二人一部屋という制約がついてしまいますけど……」
……ていうか、ちょっと待てよ。
男子が確か四人いるんだよな、この部活。
けど、晴信は刹那に連れてかれたし……男は三人ということになる。
これに対して女子の人数が、葵・織・春香・月夜・優菜・千世・アイミーの七人。
……ひょっとして、この中の誰かと俺は相部屋にならなければならない可能性も出てくる?
……まずい、それだけは非常にまずい。
嬉しいシチュエーションのはずなのに……何故か自己防衛反応が強く出てる。
「というわけで、啓介・小野田。じゃんけんで誰が一人になるかを決めるぞ」
「しょうがねえな……一発で終わらせてやるよ!」
「負ける気がしねぇ!!」
意気込む小野田は置いといて……。
「「「最初はグー! じゃんけんポン!!」
結果……。
小野田 ←グー
啓介 ←グー
俺 ←チョキ
「……俺惨敗!?」
「そういうわけだ……悪いな」
「へっ! ざまぁ見ろ!!」
……何だか、嫌な予感がしてきたぜ。