【超短編】「ジュリアのレースの下着が見たい」堅物公爵である夫の寝言。ねえ。ジュリアってだれ?
「ジュリアのレースの下着が見たい」
堅物公爵と呼ばれる夫の寝言。
ジュリアってだれ?
浮気なんて……。幸せに暮らしてるはずだったのに!
どうしよう。眠れない───
「おはよう。愛してるよ」
日が昇り、目覚めると、のんきに夫は私の額にキスをした。
まったくもって通常通り。
こんなに平気で嘘をつける人だったのか。背筋がゾクッと凍る。
が、私も冷静を装い、ジュリアを探した。
調べても、屋敷にも知人にもいない───
「ロレーヌ。食べちゃいたい」
な!? 翌晩の夫は別の女性の名を呼んだ。
次の夜は「ヴィクトリア」、その次の夜は「ヴァレンシア」
手あたり次第なの!?
でも浮気の証拠は見つからない!
悪手だとしても、直接、夫に確認するしかない……。
夜が更けた───
「ソフィア……」
「貴方、起きてっ!」
「ふぇ? アンジェ? なにがあった!?」
「ソフィアとは、どなたです?」
中指で目頭をこする夫に、問いかける。
「え。だれ?」
「おとぼけに? たった今、ソフィアと寝言でお呼びになりましたが?」
「あ。ヨーグルト? 新婚旅行で寄ったじゃないか。爵位を継いでからは、なかなか遠出できないけど。楽しかったな」
「で、では、ヴァレンシアは?」
「一緒にオレンジ食べたろ?」
「ヴィクトリアは? ロレーヌは?」
「忘れちゃった? 一緒に行ったのに」
確かに、思い出の地名……。
「で、でも『ジュリアのレースの下着が見たい』と!」
「ヴェネチアの隣のジュリアでレースを買ったよね? 下着にして、アンジェがつけてくれたら嬉しいなって。なんでこんなこと言わせるの? 辱め?」
髪をぐしゃぐしゃにし、夫は照れる。
「おかしな寝言を言うから……」
「寝言はストレスが溜まってると言うらしいよ?」
「溜まってるの?」
「好きな旅行もできないし、欲求不満かもね?」
夫は優しく私を抱き寄せた。
「ねえ。アンジェ。こんな愛しい妻がいるのに、浮気なんかしない。焼いちゃった?」
「離縁だって覚悟したんだから」
「かわいいなぁ。もう。一生別れないよ」
「うん」
夫の瞳が甘い。
「不安にさせてごめん。来週、アンジェ城に行こう。近いけど、たまには二人で」
「あらやだ、私の名前も地名だったわ」
「はは。愛してるよ。さ。おいで」
そして、とろける夜に。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
凄く嬉しいです!
キーワード寝言で「なろうラジオ大賞6」の応募作品のため、1000字の超短編です。
ジュリア:イタリア
ヴァレンシア:スペイン
ヴィクトリア:イギリス
ソフィア:ブルガリア首都
ロレーヌ、アンジェ:フランス
初チャレンジのショートショートでした!
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