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それから正式にキャスリーン嬢が僕の婚約者に決定した

そして週に2回ほど王宮でキャスリーン嬢と顔合わせをしていた



「キャスリーン嬢、今日は侍女にマカロンを頼んだんだ。いつもファルと取り合いになるくらい美味しいから是非食べてみて!」


「…そうですわね、楽しみですわ」



まぁ毎度のことながらキャスリーン嬢の反応は薄いし、お茶会の度にその態度は悪化していっているので本当に困っている


ファルなら美味しいお菓子で一発で機嫌が治るのに


まぁ拒否権もなく結婚相手が決まってしたくもない王太子妃教育なんかしてりゃ機嫌が悪くもなるか



「…王太子妃教育はつらい?」



キャスリーン嬢はわかりやすく顔を固まらせた



「キャスリーン嬢、僕と君は政略結婚だけれど僕は君と共に幸せになりたいと思っている」


「えっ」


「でももし君が嫌だと思ってるなら…」



キャスリーン嬢が心の底から嫌だと思っているなら、お父様に言ってみよう

きっと厳しいことを言われるだろうけど、きっとお父様なら…いや、厳しいことを言われて終わりかもしれないけど言ってみる価値はあるだろう


顔合わせの時間を取って相性の良し悪しを一応は見てくれるんだから厳しいだけの人じゃない



「君が本当に嫌だと思ってるなら僕がなんとかする。君はどう思ってるの?」


「えっ」


「えっ?」


「えっ」


「…えっ?」



キャスリーン嬢はポカンとした表情で僕を見つめている


…えっ?



「…殿下は私のことを嫌っているのではないのですか?」


「え、な、なんで?」


「…挨拶を失敗した私に、その、嫌味を仰ったでしょう?」


「あー…いやあれは考え事をしていて…そんなつもりはなかったんだ」


「先々週の私の誕生日にお手紙すらくださらなかったでしょう…?」


「えっ!キャスリーン嬢誕生日だったの!?」


「誕生日の次の日のお茶会で、『昨日は何してたの?』ってわざとらしく仰ったでしょう?」


「わざとらしくってそんなつもりは…!」


「それに王太子妃教育の進み具合もお聞きにならないでしょう?」


「あ、まぁそれは…」


「…他のご令嬢を選んでいる間の仮婚約のつもりなのかと思ってましたわ」


「ちがっ!僕はっ!」


「殿下、私の勘違いならちゃんと説明してくださいまし。私が間違ってましたの…?」



そういうキャスリーン嬢の瞳から大粒の涙がどんどん溢れ出す

こんな幼い子を不安にさせて泣かせてしまっているのか僕は


前世の記憶があるだけで齢は同じだけど、絶対に幸せにすると自分で決めたばかりなのにこんなに悲しませてしまっていることに胸がズキンとした



「キャスリーン嬢、きちんと説明させて。顔合わせのときは、キャスリーン嬢を見て…緊張して色々考え事をしてしまったんだ。君に嫌なことを言うつもりはなかった。本当にごめんね」


「…殿下」


「誕生日は知らなかったんだ。知ろうとしてなかった、本当にごめん。これからは毎年絶対手紙とプレゼントを送るよ。そうだ、キャスリーン嬢が嫌じゃなければ出かけたりするのはどうかな?」



キャスリーン嬢がブンブンと顔を上下にふる



「王太子妃教育のことはこれからも聞くつもりはないよ。上手くいってようがいってなかろうが、君が僕のお嫁さんになることは変わらないんだから。僕が君を幸せにすると決めたことは変わらないんだから」


「殿下…!」


「でも辛かったらいつでも言って。何か力になれることがあるかもしれないから」


「はい…!」


「…参ったな、こんなに泣かせてしまった」



そう言うとキャスリーン嬢はやっと笑顔を見せてくれた

誤解が解けてよかった


このあと侍女の報告で飛んでやってきたお母様にこっぴどく怒られてしまったことは言うまでもない


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