アリス
「ねえルイス、この物語は幸せにならないの?」
カウンターを挟んだ向こう側にいる男性に、絵本を持った少女は自分の身長よりも高い椅子に座り純粋な疑問を問いかけた。
「ふふ…いいかいアリス、1つの物語でも誰が解釈するかによってハッピーエンドかバッドエンドか変わることだってあるんだ」
「…でも、私はどの物語の登場人物にも幸せになって欲しい!」
「ははは、それは誰だってそうさ。僕だってみんなの幸せを望んでる」
そう言いルイスはその少女にグラス一杯に注がれたオレンジジュースを出した、グラスに少し入っている氷は太陽の光を反射しまるで宝石のよう。
少女は手に持っていた絵本をパタンと閉じ、喜びながらそのグラスに手を伸ばした。
ルイスはカウンターの上に置かれた絵本の表紙を見つめながら少しため息をついた。
「アリス、毎回その絵本だけどその物語好きなのかい?」
「うん!もう自分で何回も読んでるけど、ルイスと一緒に読みたいから』
透き通った声に応えるかのようにルイスは少女の顔を見つめた。
「もう客は来ないし、満足するまで読んでいくといい」
ルイスはそう言うとカウンターの引き出しを開けた。
「そういえばストローいるかい?」
「うん、ちょうだい!」
「だろうと思ったよ…」