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星蘭入学

今日は星蘭たちの入学式です。


クラス分け表を確認すると、星蘭は無事に理系Aクラスに入ることができました。


彩華ちゃんは文系Aクラス、紫苑ちゃんは文系Bクラスになりました。


紫苑ちゃんは、記憶喪失などいろいろあったのに合格し、しかもB判定という成績で、本当に驚きです。


来年はA判定になれるかもしれないわ。


「星蘭、頑張ったね。これで、私たち同じ道を歩めるわ。」


「ええ、でも、一年だけしか一緒にいられないわ。来年から関西に引っ越すことになっちゃうのよね。」


「そうね、二年間だけね。」


「この学校にも飛び級制度があるといいのに。」


「なくはないわよ。二年間在学すれば、志望大学が認めれば二年で大学に進学できるの。かなり厳しいけれどね。」


「可能なの?」


「わが校のAクラスでもとびぬけて成績が良ければ、学校が推薦してくれるかもしれないわ。」


「それでも、一年はお別れなのね。」


「私が留年しなければね。」


「え?いい考えね。留年してよ。」


「星蘭、冗談はやめてよ。頑張って落ちたのなら仕方ないけれど、わざと落ちるのは違うと思うの。」


「そっか、そうだよね。私が頑張って一年でも早く追いつけるようにするしかないよね。」


「ほんとを言うと私も寂しいの。」


未来がどうなるかわからないけれど、少しでも離れることに不安を覚えていました。


 *****


ここは、警視庁捜査一課で、私は今年配属されたばかりの新米刑事です。捜査一課には女性刑事が少なく、周りから好奇な目で見られることがありますが、割り切ってあきらめているところがありました。


私が配属されて指導担当になった刑事は今年度で、定年退職が決まっているベテランの刑事でした。刑事人生すべてを現場捜査にささげてきた、典型的な現場主義者でした。


私の担当になり、いかに現場が大事かそればかりを聞かされて育てられました。退職まであと半年ということで、私に今までの捜査を解決、未解決を含め教えていただいたのですが、ある案件で説明することを一旦止まりました。


「どうかされたのですか?」


「ああ、この案件だけは私の捜査人生で未解決のまま、いや表向きは解決しているのだが。」


「言っていることがわからないのですが?解決してるけれど、未解決とは?」


「ああ、少し長くなるが説明しておこう。もしかしたら、今後もこの事件に絡む新たな事件が起こるかもしれないからな。」


「ぜひお願いします。」


「今から十八年前にさかのぼるが、一件の事故があった。後になって事件であったことが判明したのだが。その時の判断で事故として扱われ、ほとんど状況証拠がなくなった後だったのだ。」


「なぜ、事件だとわかったのですか?」


「それはな、それから数か月後、今度はその時亡くなった男性の妻が狙われたのだ。」


「狙われたということは、未遂だったのですか?」


「いや、その時、女性のそばにいた男性が身を挺して守り、命を落としたのだ。その男性は何度も刺されたのに、犯人を離さなかったため、その時の犯人は取り押さえることができたのだ。」


「では、その犯人が二件の事件を起こしたのですか?」


「たぶんな。というのも、その犯人はずっと黙秘を続け、依頼者はおろか、名前さえしゃべらなかったのだ。いわば、プロの殺し屋だな。」


「それだけでは、一件目が殺人と断定できませんよね。」


「ああ、それから三年後に、一件目に殺された男性の叔父が自殺したのだ。ご丁寧に遺書を残してな。そこで、一件目も、二件目も自分が依頼したとな。一件目は事故として扱われてうまくいったため、二件目も依頼したが、しくじりジワジワと捜査も進み、生活も行き詰まったと書かれていた。」


「実際の捜査はどうだったのですか?」


「確かに容疑者の一人ではあったが、実際に暗殺者を雇えるほど金回りがよいわけではなかったし、今一つ、動機が弱かったので、泳がしていたのだ。」


「では、ほかにお金を出した容疑者がいると考えられていたのね。」


「ああ、でもたどり着く前に、自殺されたのだ。捜査員の中には、自殺ではなく消されたのだという考えが多かった。実際、私もそう考えていたのだよ。残念なことに、何も見つからなかったのだがね。」


「事件はそれで終わったの?」


「いや、それから十三年後、つまり去年の春、その男の娘、実は、その男性の妻は狙われたとき身ごもっていたのだ。そして、その娘が、今度は交差点で車にはねられたのだ。」


「え?亡くなったのですか?」


「いや、すんでのところで、その娘の友達がそばにいて、助けに飛び込んで二人とも重傷だったが、命は取りとめたのだ。」


「今は元気になって高校三年生だ。」


「では、ひき逃げの犯人は捕まったのですか?」


「いや、車の番号からたどったのだが、犯人は自宅で服毒自殺をして亡くなっていたよ。まあ、これも消されたのだろうね。」


「あまりにも、この家族ばかりが狙われるので、色々調べたところ、男性の勤めていたところは、茨城にある遺伝子研究所で、画期的な研究をしていたらしいのだ。」


「では、その研究に絡んでの事件だと。」


「ああ、私はそうにらんでいたのだが、結局何も見つけることができなかったのだよ。悔やまれる事件だった。」


「では、結果的に亡くなったのは一件目の男性だけで、狙われた二人は今も元気なのね。」


「だから、その二人がいつまた狙われるかわからないのだ。そういうことだから、この件引き継いでくれるか?」


「わかったわ。私が心にとめて引き続き調べます。」


「よろしく頼むよ、ただし、くれぐれも気を付けるのだぞ、なんせ相手は暗殺者も雇うくらいの人物だからな。」


「あ、聞くの忘れるところだったわ。二件目の事件の時に止めに入った男性は、この事件とどういった関係があるの?」


「いや、全然なかった。とても正義感の強い男性で、襲われるところに居合わせたため、とっさに守ろうとしただけのようなった。」


「え~。それでは家族はいたたまれないでしょうね。その男性がいなかったら、女性も、その子供もその時に死んでいたのよね。」


「ああ、たぶんな。その女性だけにはかばった男性のことは話しているが、子供は知らないと思う。」


「そうよね。生まれる前の件で一生十字架背負わせることもないわよね。」


「叔父さんの事件があったので、薄々気付いているだろうがな。」


「奥さんは今でも、守ってくれた男性の家族と付き合いあるの。」


「いや、さすがにツラすぎるのだろうな。それはないみたいだ。だが、命日には墓参りは欠かさないみたいだよ。」


この時、まさか私がこの事件に巻き込まれることになり、人生が大きく変わるとは、全く予想していなかったのです。


 *****


病棟の別室で考え込んでいたが、彼は相談することに決めた。受話器を取り、電話を掛けた。


「何か緊急か?」


「私だが、覚えているか?警視庁のデカがいろいろ嗅ぎまわっていただろう。」


「ああ、今年度で定年だそうだな。もう少しなのだから、今はおとなしくしてれば問題ない。手を出すとかえって藪蛇になるぞ。今は何も証拠がないのだから。」


「いや、その刑事ではなく、どうも新しい刑事が配属されてその刑事に引き継いだようだ。最近、周りでいろいろ嗅ぎまわっている。」


「そうか。その刑事ならうちの研究所職員にもいろいろ聞いていたな。私のところにも来たが、何も知らないと答えておいた。」


「私もだが、危なくてしょうがない。」


「まああわてるな。今は証拠がないのだから騒がぬ方がいい。」


「始末することはできないか?」


「何を言っている。相手は刑事だぞ。一つ間違えるととんでもないことになってしまう。」


「そうか。今は動かないほうがいいのか。他の事件に巻き込まれて操作から離れてくれるといいのだがな。」


「今はほっておけ。いつかチャンスがあればその時にすればいい。」


「わかった。」


「ところで、頼まれていた件だが、今動物で実験中だ。」


「副作用が抑えれそうなのか。」


「細胞の活性化を少し調整してみたところ、動物実験では無事発情することが確認できた。ただし、活性化をだいぶ弱らせたため、老化が少し遅れる程度になってしまった。」


「そうか、不老ではなくなってしまうのか。で、どのくらい遅らせられたのだ?」


「実験ではサルを使ったところ、老化が約20パーセントほど遅れた。」


「人間で言うと、例えば80歳なら96歳か…微妙だな。」


「今のところ、再度調整して50パーセントでどうかを試している。せめて老化を2倍程度遅らせることを目指しているがな。」


「今三名に施した処置は完全な不老になっているのか?」


「結果だけを見ると、細胞の若返りは永遠に続くため、細胞だけを見れば不老と言えるな。」


「そうか。ほかに問題はなさそうか?」


「いや、どうも精神的な問題があるようだ。発情はするものの、異性ではなく同性に対して発情してしまうことがわかった。それに、一部の動物では記憶障害も発生している。ただし、お前が行った実験ではこれらの問題は発生していないようだがな。」


「同性が好きになる問題については、思い当たることがある。」


「どういうことだ?」


「うちの娘な。今は私を見る目がとても嫌なものを見る目をするのだ。それと、例の男性な。見た目は女性になって、家に引き取ったわけだが、なぜか娘は感覚でわかるのか、私を見る時と同じような目をするのだ。」


「そうか、他の二人はどうだ?」


「そちらにはあまり拒絶反応は出ていないようだな。」


「そうか、個人差があるのかもしれないな。」


「それと記憶障害の件な。確かに女性三名には出なかったが、男性では記憶がなくなっているのだ。当初運び来られた時に瀕死だったのでそのショックで記憶喪失なのかと思ったが、もしかしたら男性には出るのかもしれないな。」


「いや、性別ではなく、これも個人差があるのかもしれないな。」


「まあ、もう少し待ってくれ。引き続き調べるから。」


「わかった、よろしく頼む。」


「それでは切るぞ。」


「ああ、又何かわかったら連絡する。」


「ではな。」


そう言って受話器を戻し、しばらくは静観するしかないのか、困ったものだと悩みは尽きなかった。


 *****


「ねえねえ、星蘭、最近私たちをずっとつけているのだけれど、気付いてない?」


「え?気付かなかったけれど、ストーカーかな?」


「ストーカーとは少し違いそう、だって女性だもの。」


「何言ってるの、私たちの関係のように、女性にストーカーされることだってありうるわよ。」


「そうね。でも、電話してきたり、何かあるわけでもないの。なんかただずっと監視されてるみたいなの。」


「私立探偵かしら。私たちが気付いてないか調べるため、犯人が手配したのかも。」


「そうか、なんか気を抜ける時がなくて疲れてしまうわね。」


「仕方ないわよ、できる限り外出は控えるしかないわね。」


「それって、誘っているのかしら。」


「違うわよ、いえそうなのかも。」


「どっちなのよ。」


「両方。」


星蘭はそう言って微笑みました。


「わかったわ、今晩も家庭教師ね。」


「ふふ、よろしくご指導お願いするわ。」


彼女たちはつけられていることには気づいていたのですが、その監視者が刑事だとはその時何も知らなかったのです。


登場人物が増えたので、追加の登場人物のみ書き出します。

 【本城ほんじょう 紫苑しおん

  元孤児の男の子

  本当の誕生日は不明 十一月生まれ  十五歳

   【影響】

  遺伝子操作で、女性化してしまった、記憶もなくしていて、本城家に引き取られた。


 【本郷警部(ほんごう)

  本年度で定年を迎えるベテラン刑事

  主人公の事件をずっと追っていた。新人刑事に引き継語事に。


 【不知火刑事(しらぬい)

  今年配属され、本郷警部の指導で事件を引き継ぐことに。

  今後事件に巻き込まれ人生を大きく狂わされてしまう。


今後ともよろしくお願いします。

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