遺伝子操作の後遺症
日曜日の朝、私は星蘭ちゃんと待ち合わせし、彩華ちゃんのお見舞いに向かいました。
「来週、お母さんと新しい下着を買いに行く予定なの。だから来週はお見舞いに来れないと思うの。」
「そうなんだ、私のはお母さんが儲かってきてくれたみたい。急成長してきたから、お母さんもびっくりしていて、あなたも中学三年生だものね。と今は喜んでくれているけれど、これからが心配だわ。」
「それは私もよ、今買ってもと思ってしまうもの。」
女子トークをしていると、目的の病院が見えてきたので、いったん会話を中断して、病室に向かいました。
「おはよう、彩華ちゃん、お加減はどう?」
病室に入ってきた私たちを見て、彩華ちゃんは微笑みました。
「おはよう、今日はずいぶんよくなったの。お父様も、だいぶがん細胞が減ってきてると喜んでいたわ。」
「では、手術成功したのね。よかったわ。」
私は、そう心から彩華ちゃんの回復を喜びました。
「でも胸が苦しくて、今日お母さまに新しい下着を買ってきてとお願いしたの。」
「え~もしかして胸が成長したということなの。」
「そうみたいなの。今まで大きくならなかったから少し悲しかったのだけれど、やっと成長し始めたみたい。」
私は、星蘭ちゃんと目配せして、心の中で、「あ~これで副作用確定だわ。」とつぶやいたのでした。
そんな感情は顔に出さないように気をつけながら、私たちは会話を続けました。
「よかったわね。それ以外で、体の変化はない?」
「どうかな?痛みがなくなって、食欲が出てきたことくらいかな。おデブにならないように気をつけないと。」
「何言ってるの。彩華ちゃんは瘦せすぎくらいだから少し食べて成長した方がいいのよ。」
「そんなに痩せてないよ。」
「いつ頃退院できそうなの?」
「お父様がこのまま順調にがん細胞が減って、副作用とかなければ夏休み前には退院できそうだって。」
「でも、学校の復学は来年になりそうなの。」
「そう、今は二年の遅れツラいでしょうけれど、元気になればきっと楽しいことが待ってるわよ。」
「そうかな?そうだといいわね。」
彩華ちゃんが寂しそうにしているのを見て、私たちは彼女を励ましました。彼女の回復を心から願いながら、一緒に明るい未来に向かって歩んでいくことを願いました。
「紗夢ちゃん、学校はどう?」
突然話題が変わったので、私は一瞬戸惑いましたが。
「え?」
「ええ、私も二か月の遅れを取り戻すために、時々先生が補習をしてくれて、今頑張って追いつこうとしているところなの。」
「正直に言うと、とても厳しいわ。」
星蘭ちゃんも。
「私は夏休みに集中補習があるの。今から憂鬱よ。」
「二人とも大変ね。」
彩華ちゃんは寂しそうに言いました。。
「でも、事故にあった時はどうなるかと思ったのだけれど、今はそうして元気になれたのだから、感謝しないとね。」
「そうよ、私も憂鬱なんて言ってられないわね。頑張らないとね。」
私たちはお互いに励まし合いながら、前向きに考えることの大切さを共感しました。
「二人とも前向きなのね。私も見習わないと。」
「そうよ、人生一度きりなんだから、楽しまないと。」
そう言って、私たちは笑顔で笑いました。彩華ちゃんの回復と、友情に支えられた明るい未来に向かって、一歩ずつ進んでいくことを誓いました。
面会終了の時間が迫ってきたので、私たちは別れを告げました。
「もうこんな時間、ごめんね彩華ちゃん、時間だわ、また来るわね。」
「もう?じゃあまた来てね、待ってるわ。」
彩華ちゃんはとても寂しそうでしたが、最後は微笑みながら手を振ってくれました。
「じゃあまたね。」
二人で病室の出口で手を振り合い、別れました。
その後、病院を出てしばらく歩きながら。
「やっぱり、副作用だったね。どこまで大きくなるのかしら。ある程度は大きくなってほしいけれど、それでも、限度ってあるわよね。」
「そうね、バランスが悪くなるし、とても肩がこるって言われているわ。」
「もともと運動は得意ではないけれど、それにしても心配だわ。」
「ところで、紗夢ちゃん、今いくつぐらいあるの?」
「え?サイズのこと?」
「詳しく知らないの。来週末お店で見てもらおうと思ってたから。今まではBだったわ。」
「私もBだったわ。でもとてもそのサイズではないよね。」
「ええ、Cもしかしてもっと大きいかも。どうしよう。」
二人はサイズの変化に戸惑っていました。そして、これからどうなっていくのでしょう。
「今のところそれ以外に副作用は出ていないけれど、急に老化が進んだり、ぽっくり亡くなるとか。考えただけで怖いわ。」
「まあ、今は考えるのはやめようよ。」
「そうね、このこと、神様は知ってるのかしら。」
「なに?急に変なこと言いだしたわね。当然、創造神様は私たちがどうなっていくのか見守ってくれてるわよ。」
「もしかして、こんなことは認めないって、元に戻してくれないかしら。」
「神様はね、直接私たちに干渉することはあり得ないの。そんなことしたら世界のバランスが崩壊するわ。」
「では、どうしようもないのね。」
私はがっかりしましたが、星蘭ちゃんは。
「そうね、すべて運命なのかもしれないわね。私たちにできることを頑張って生きていくしかないのよ。」
「そうよね、くよくよしても始まらないし、大学に行ったら頑張って元に戻せないか研究してみるわ。」
「その意気よ。頑張ってね。」
そして、周りに人影がなくなったので、私は思い切って打ち明けることにしました。
「なあに、他人事みたいに言って。星蘭ちゃんも一緒に頑張るのよ。」
「え?私も一緒に遺伝子研究するの?」
「当然じゃない、私たちはいつまでも離れずに行くのでしょう。」
「それは、立場的な意味で、ず~っと一緒にいるという意味じゃないわよ。」
「でも、常に一緒の方が見守れやすいじゃない。」
「それはそうだけれど、あまりくっついていると変な噂が立てられるわよ。」
「私は、星蘭ちゃんとなら噂を立てられても平気よ。」
「そんなことしてると、また神様の怒りを買っちゃうわよ。」
「大丈夫よ、神様も温かく私たちを見守ってくれるわよ。」
「もう、勝手なことばかり言って。本当にそういう関係になって、神様に叱られても知らないわよ。」
「あなたとなら、一緒に叱られてもいいわ。」
「・・・わかったわ、関係はともかく、遺伝子研究は一緒にできるように私も頑張るわ。」
「ありがとう。」
「大好きよ、星蘭ちゃん。」
「私も好きよ、友達としてね。」
「今はそれでいいわ。」
「・・・・・」
星蘭ちゃんは、それ以上は何も言わずに黙っていました。私は心の中で考えました。「怒ってるのかな?ちょっと焦りすぎたわね。」
しかし、突然、星蘭ちゃんが言葉を発しました。
「本気なの?」
急に星蘭ちゃんが言ってきたので、私はびっくりして言葉に詰まりました。
「え?」
「さっきの私たちの関係のこと。」
「当然よ、私は星蘭ちゃんのことしか考えられなくなってるもの。」
「秘密にできる?」
「当然よ。」
「わかったわ。私もこれからあなたのことそういう関係として付き合うわね。」
「私も紗夢ちゃんのこと愛してたの、でも私の立場が今までそれを許してこなかったの。」
「あなたとなら、たとえ女神として戻れなくなってもいいわ。」
「ありがとう、星蘭。」
「好きよ。」
そう言って、私は星蘭ちゃんの顔に口を近づけました。
星蘭ちゃんは目を閉じて、じっとしていました。少し甘い香りがして、目じりから薄い涙が流れてました。
私の目じりにも涙が一筋流れ、感動の瞬間を共有しました。
「星蘭、私、幸せよ。」
「紗夢ちゃん、私もよ。これからず~と、一緒よ。もう離れないわ。」
そう言って、恋人として手をつなぎ、指を絡めて、帰り道をゆっくり歩みました。この瞬間から、私たちの未来は新たな幸せと愛で満ち溢れました。
*****
家に帰ると、遥香ママが出迎えてくれました。
「おかえりなさい、彩華ちゃん、どうだった?」
「とても元気になってたわ。このまま順調にいけば夏休み前に退院だって。」
「それはよかったわね。ところで、どうしたの?顔がとても赤いけれど。」
「あ、だいぶ暑くなってきたからかしら。もうすぐ夏だものね。」
「そうね、そろそろ半袖ね。」
私はごまかしました。心の中では葛藤していました。「ごめんね、お母さん。私、星蘭ちゃんが好きなの。」
遥香ママは続けました。「最近、星蘭ちゃんもすっかり大きくなって見違えちゃったわね。」
「ええ、来年は私と同じ高校受験するって頑張ってるみたい。」
「そう、よかったわね。あなたたち本当の姉妹みたいにして育ったものね。」
「そうね、私星蘭ちゃん大好きだから。」
「そうね、いつまでも仲良くするのよ。」
「はい。」
私は心の中で誓いました。「未来永劫離れないわ、友達としてではないけれどね。」
その後、私たちは今まで以上に頻繁にメールで連絡を取り合うようになり、本当に恋人同士になったことを実感しました。この秘密の関係は他の誰にも言えないものであり、少し後ろめたさも感じましたが、逆にそれが私たちの心を燃え上がらせているようでした。
今まで前世の記憶が私の恋愛感情に影響を与えて、男性に興味を持たなかったのですが、それが、なぜか星蘭にだけ燃え上がるような恋心が芽生えどうしても抑えられないものとなりました。
こればかりは自然に芽生えたもので、抑えようとしてもどうしても抑えきれませんでした。
私は神様と遥香ママに心の中で手を合わせ、ただひたすら願うしかありませんでした。
「ごめんなさい、私と星蘭の関係を許してください」
これから先、どんな試練が待っていようとも、私たちは乗り越えていくのだと強く心に誓いました。
*****
「ううむ、困ったことになってしまったわい。」
創造神がテーブルに映し出された下界を見ながら、困り果てていました。
「このままでは、女神のやつが道を踏み外して、天界に戻れなくなるぞ。」
「しかし、【新】の転生先の父親が開発した不老の研究結果がまさか、あの者たちに利用されるとは。事実は私の想像の上をいくものだな。」
「かといって、私が直接手を下すことはできないからな。」
「転生者を送り込んでも、あの者たちは記憶操作を行うから役に立たないからのう。」
「仕方がないのう、あの者たちの関係を今のところ認めてやるしかないか。」
「それに、あの処置にはまだ副作用があり、子供ができないからな。」
「周りに迷惑をかけない限り、黙認してやるか。」
やれやれと、肩を落としながら、創造神は天界に戻っていきました。
その様子を見ていた女神が。
「私の前任者、何をしているのかしら。創造神様の手を煩わすのじゃないわよ。私が下界に行ってい一発ひぱたいてやろうかしら。」
「そんなことはできないのだけれど。創造神様、私を下界に送り込んでくれないかしら。」
女神はいらいらしながら、そうつぶやきました。
*****
数日が経ち、私は星蘭にメールで連絡しました。
「星蘭、困ったことが起きているの。事故から一度もあれが来ないのよ。」
「あれって、あれのこと?」
「そう、あなたはどうなの?」
「私は、退院してすぐに一度あれがあったわね。あれからもう少しでひと月立つわね。」
「そう、私だけなら副作用ではないのかしら。」
「いいえ、まだ言い切れないわ。前回はまだ私に副作用が出る前だった可能性があるもの。」
「それより、私の肌が以前より艶が出てきた気がするの。妙に乳液ノリがいいから。」
「あ、それ私も感じてた。お肌が若返るのはいいことだけれど。」
「何言ってるの?周りに不審がられて、お化粧どうしてるのかとか、うるさくなるわよ。」
「そうね、老けるどころか若返ってるものね。」
「あと、あれにも気にしておくわ。」
「取り越し苦労だといいけれど、お願いね。」
「星蘭愛してるわ。」
「紗夢ちゃん、あたしもよ。おやすみなさい。」
そうメールで連絡を取り合い、二人の心のつながりを確認しあいました。
連絡を終えた後、明日の予習に集中しましたが、夜が更けてきたため、今日は休むことにしました。星蘭との連絡を通じて、私たちは副作用や体の変化に注意を払いつつ、現状を受け入れることを決意しました。未来への一歩を踏み出すために、今できることを頑張るしかありませんでした。
ついに二人が新たな関係になりました。
そして、後遺症も色々出てきてます。
どうか応援よろしくお願いします。