星蘭中学校進学
中学入学から二年が経ち、今日は星蘭ちゃんの中学入学式です。
「星蘭ちゃん、入学おめでとう。」
私が星蘭ちゃんに声をかけると、彼女はにっこりと笑いながら
「先輩、一年よろしくお願いします。」
と応えてきました。私はそれに対して
「分かったわ、後輩。これからビシビシ行くから覚悟しててね。」
と答えました。星蘭ちゃんは
「え~、先輩、お手柔らかにお願いします。」
と言って、二人で笑い転げました。
*****
私も中学三年生の冬になり、高校受験勉強に力を入れています。進学先は父の跡を継いで遺伝子研究を目指すため、有名な進学校を目指して猛勉強中です。
受験勉強も久しぶりのため、懐かしい半面、かつての苦しみと不安もよみがえってきました。
星蘭ちゃんも将来同じ学校を受験するつもりらしく、一年生から結構頑張って勉強しています。
そんな中、別の中学に進学した彩華ちゃんが、重い病気であることが知らされました。先日病院にお見舞いに行くと、このままではあと三年持つかどうかと告げられたようです。彼女はとても落ち込んでいました。
お医者様のお父様がどうにかしようと色々な資料を取り寄せて、治療にあたっています。今の私にはどうしてあげられることもなく、ただただありきたりなお見舞いの言葉しか口から出てきませんでした。
今のところ症状は安定しているようで、エスカレーター式の高校の推薦を受けて合格しているので、彼女は、彼女のお父様が絶対に治してくれるのだと真剣な顔で私に訴えてきました。
当時は、そうなればいいなと思っていましたが、将来的にこの出来事が私と星蘭ちゃんの運命に大きな影響を与えることになるとは、その時は全く考えていなかったのです。
*****
今日は私の高校受験の日で、私以上に遥香ママはおろおろしています。受験票を持っている?筆記用具は大丈夫?受験開始時間には間に合うの?と、同じことを壊れたレコードのように、朝から何度も何度も繰り返されました。
私はいい加減、うっとうしいやら、でもうれしいやら複雑な気持ちでいっぱいでした。それでも、時間が迫ってきたので、私は家を出て受験会場へ向かいました。
受験会場は、最寄りの駅から五駅先で、駅から会場はバスで移動となり、十五分くらいで私が目指す私立N高学園前に到着しました。この学校はもともと女子高だったため、今でも女子の割合が高い進学校として有名です。今日の会場も八割がた女学生でした。
受験科目は五科目で、入試は二日間に及び、今日は四科目、明日は一科目と面接が予定されています。学校は結構広いですが、一学年の生徒数は百八十名と私立高校としては少なめです。その分、競争率は高く、頑張らないと合格できないことで有名です。
科目試験が終わり、今から面接試験です。面接は、先生方三名と学生課職員の四名が一グループで五グループ対応していました。
とうとう私の番が来て、面接会場の中から声がかかりました。
「受験番号三十五番、綾瀬 紗夢さん、どうぞ。」
私は元気よく返事をして、面接会場の中央にある椅子に腰を掛けました。面接官の一人が、私に向かって質問しました。
「どうしてこの学校を選んだのですか?」
私は面接官の目を見つめながら答えました。
「亡くなった私の父が遺伝子研究所の研究員でした。彼の遺志を継ぎ、私も遺伝子の研究を行いたいと考え、そのためにはK大合格率の高いN高へ進学を決めました。」
面接官は推薦状の内容を見ながらうなずきました。別の面接官が質問しました。
「この学校でどのような活動をしたいのですか?」
私は特に部活に対して興味がなかったので、正直に答えました。
「必ずこの部活動がしたいというのは決めていません。ですが、遺伝子研究につながる部活があれば参加してみたいと思います。」
他の面接官が質問しました。
「K大が目標なのですよね。大学が目標なのですか?それとも学科が目標なのですか?」
私はその面接官の目を見て答えました。
「両方です、K大大学院生命科学研究科が最終目標です。」
面接官はしばらく小声で話し合っていましたが、うなずきながら言いました。
「わかりました、今日はご苦労様でした。」
私は椅子の横に立ち上がり、挨拶を返して面接会場を後にしました。
冷や汗が出ていることに気付きましたが、もう少し面接に対して準備しておくべきだったのかもしれません。しかし、今更後悔しても始まりません。あとは天にお任せするしかないと思いました。
そして、神様、どうしているかな?私のことを見ているかな?私は神様の期待に応えているのだろうかと、今更ながら考えました。
そして、元女神の紗夢ちゃんは、私以上に神様のことを気にしているだろうなと思いました。
*****
試験会場から帰宅すると、遥香ママは私の顔色をうかがいながら、大丈夫よ、心配しないでね、もし万が一があっても来年があるのだからと言ってきました。
私は彼女が心からの励ましを送ってくれていることを理解していましたが、もう既に不合格だったことを想定していることに苦笑いが出ました。どこか彼女は不安な様子を察知したのでしょう。そこで、私は明るくふるまうことに決め、心配させないようにしました。
それから二週間が経ち、明日は合格発表の日です。ワクワクと不安が入り混じる気持ちで、修学旅行前日のような興奮が私を襲いました。それでも朝日が昇ってきて、朝食を済ませた後、私は受験票を握りしめ、N高学園を目指して出かけることにしました。
遥香ママが
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
と送り出してくれました。学校の入り口わきの掲示板には合格者一覧の紙が貼り出されていました。私は受験番号三十五番を、掲示板の紙に張り付くように見つめました。
そして、見つけました!思わず周りのことが見えなくなり。
「やった~受かった受かった!」
と、大声を出してしまいました。
しばらくして、興奮が収まると、周りから冷たい視線を感じました。私は少し気恥ずかしくなり、掲示板の前から退いてしまいました。
スマートフォンを取り出し、震える手で遥香ママに連絡をしました。数回の呼び出し音の後、彼女が受話器に出ました。
「ママ、合格したよ!」
と、私は喜び勇んで伝えると。
「〇×▽!」
と言葉にならない叫び声が聞こえてきました。
「ママ、落ち着いてよ。これから学生課に行って入学の資料を受け取ってくるから。」
「ええ、わかったわ。よかったね。」
最後の言葉は少し涙声になっていました。私は心の中で切ない気持ちに包まれました。
学生課に行き、受験票を渡すと、係の人が言いました。
「はい、確認できました。おめでとうございます。それでは、入学の手引と手続きの資料一式が入っています。入学金の払い込みには期限があるので気を付けてくださいね。期限を過ぎると資格を失いますから。」
私はお礼を言い、学校を後にしました。
現在の登場人物
【綾瀬 遥香】
七月生まれ 三十九歳 現在未亡人
スタイルも良く、整った顔立ちで、ロングヘア
性格は明るく、コミュニケーションが得意で話好き
主人公が前世で助け、現世での母親
【その他の情報】
遥香は明るく朗らかな性格で、人懐っこくコミュニケーションが得意な若い未亡人です。
過去の事件には深い謎があり、夫の死と"新"の死が何らかの関連がありますが、現在は不明です。
母親は九州に住んでいるため物語にはほとんど登場しません。
遥香には三十歳になる妹がいますが、両親とも他県に住んでおり、物語には時々登場しますが、
物語の進行には直接的に関与していません。
【綾瀬 紗夢】
十月生まれ 十五歳
女性(転生者) 身長は、成長中 髪型は、膝まであるロングヘアーに前髪は三つ編みハーフアップ
性格は、幼いながらも知識豊富で、前世の記憶が一部残っている。
普通の赤ちゃんよりも大人びた一面も持っている。
”新”が転生した遥香の娘
【その他の情報】
紗夢は前世である”新”の記憶を失っていますが、天界で女神とのやりとりや転生に関する内容
など、一部の知識を保持しています。
この特殊な状況が彼女のこれからの人生に大きくかかわることになります。
父の跡を継ぎ遺伝子研究者になるため猛勉強中、その知識や賢さは彼女の運命に重要な役割を果たします。
【姫野 星蘭】
十一月生まれ 十三歳
女性(女神転生者) 身長は、成長中 髪型は、母親譲りのロングボブ 年齢は、紗夢より二つ年下
【性格と使命】
元女神の彼女に与えられた使命は、紗夢を見守ることです。
紗夢の隣に住み、親友として成長していく紗夢をサポートし、重要な役割を果たします。
【物語への影響】
現在紗夢と同じ中学の一年生。
女神の転生者として、物語の展開に重要な要素を担っています。
【本城 彩華】
保育園で初めて出会った友達
八月生まれ 十五歳
父親は医師だが、紗夢の父親の事件に案らかのかかわりがある模様
重い病気にかかり余命三年と言われている病名不明