第八話 この世界の神?精霊?妖精?なんでもいいよ。
都内を散歩、
黒天と紅丸が付き添っているので三賢者も安堵していた。
「流人様、空気が汚れてますな」
「誠に臭いますぞ」
「車と言う馬車から出るガスが原因らしい。」
「あの脇を勢い良く走っている馬車ですな。」
「そうだよ、これでも昔よりは改善した方なんだって」
「なんと昔はもっと酷かったので御座いますか?」
「なんと!これ以上酷いとは!」
「排ガス規制とか、電気自動車とは、企業が頑張っているらしい。」
「電気自動車・・・。」
黒天は、今一電気の仕組みが、よく理解出来ていなかった。
雷撃の威力を魔道具の動力としていると説明したのだが、
雷撃は一瞬の威力、持続性の無い雷を魔道具に使えるのか、
疑心暗鬼中であった。
「黒天は流人様のお言葉を信じておらんな」
「な!何を申す紅丸、我が主人の言葉なるぞ!」
戯れ合う二人を懐かしく思う流人、 !!
「何かが来るぞ!」「人では無いぞ」「霊気を感じるぞ!」
三賢者の警告に黒天と紅丸が流人を護る。
「待ってぇ〜!怪しいけど、怪しいくは無いぞ。」
「「なにやつ!!」」
「儂は土地神と呼ばれているモノじゃぁ。」
「土地神?」
「知らんのも無理無い、儂の姿が見える人など、ひさぃ〜のでな?」
「見えると変なのか?」
「見える者が減ってのぉ、段々本当に見えなくなって来ておる」
小さい透き通った初老の姿が微かに見えていた。
「多分精霊の類かの」「神と言っておるが弱々しいなぁ」「妖精かもな」
「どちらにしても、この世界で初めて会ったね。」
「この世界? やはり異世界から来たのか?」
「来たのではなく呼ばれて来ました。」
「呼ばれた、誰にじゃ?」
「それが分からないので、帰る事が叶いません。」
「そうかぁ、誰か知らんが代わりに詫びよう、すまん事をしたのぉ」
「この世界も気に入ったので大丈夫ですよ。」
「そうかぁ、それは良かった。」
「それで、土地神様は僕に何か用でもあるのですか?」
「じつはなぁ・・・。」
宿りついた木が、諸事情で切られる事に、新しい宿を探していたところ、
強い力を感じて寄ってみたそうです。
「霊木を切るなど信じられん!」「誠じゃ」「恐ろしいのぉ」
三賢者の言葉に同意の気持ちを持つ流人が何か発しようと思うたら、
「仕方が無い、この世界は人の世じゃからなぁ」
「人の世でも善し悪しは、理解出来るでしょう?」
「見えぬモノを気遣う者はおらんよ」
「寂しい世の中ですね。」
益々薄く成りだす土地神様を少し不憫と思うてしまった。
「すみません、哀れと思うてしまいました。」
「よい、よい。 哀れか、そう受け取って貰っても仕方ないのぉ」
神を名乗る存在を、哀れや不憫と思う事は、神に対して大罪である
それをすんなり謝罪した流人に対して、
寛大なこの土地神様を、救いたいと強く思う流人。
「流人、取り敢えず霊木を見に行かんか?」「そうだ」「それからだな」
「土地神様、霊木を拝見させて頂けませぬか?」
「宿木の事か?構わんよ」
徒歩で数分歩くその場所は、たった3mの丸く区切った場所に桜の木が、
その後かは既に工事が始まっていて酷い有り様であった。
「酷い事を(怒)」
「酷いな!」「これではどうにも成らんぞ」「惨いな」
「流人様、我等に御命じ降され(怒)!」
「この様な残虐行為、許せませぬぞ(怒)!」
「待て!」
土地神が、か弱いが言霊で皆を説き伏せる。
毎年周囲の人間が桜の開花を喜んでいた、
然し、子供が車の事故で亡くなった。
土地神は何も出来なかった事を悔いていたが、
毎年、開花を喜ぶ人間に癒されて少しずつ元気を取り戻して行った。
そんな中、
区が住民からの嘆願を受けて道路の拡張を認めた!
あれ程喜んでいた住民の願いだった、土地神は少し寂しく思ったが、
広くなれば、子供の事故も無くなるだろうと思う事にした。
「だからよいのじゃ。」
「住民は、霊木を失う汚れを理解していない様ですが?」
「それも時世よ、見えぬモノは分からぬからのぉ」
諦めと悟りの土地神様の意志は崩れなかった。
「僕の家に来ませんか?」
「家?儂は土地神じゃぞ?家には宿れぬ。」
「僕が新しい土地を用意しますから、それまで家に居ませんか、
この桜の木と共に?」
「この木も一緒か?」
「はい、ご一緒に暫くお越し下さい。」
「その言葉は嬉しいが・・・」
土地神様は悲しく桜の木を見つめていた!
「流人様、恐れながらがらあの桜の木はもう・・・、」
「残念で御座いますが、既に・・・。」
黒天と紅丸が無理と諭す。
「三賢者!」
「儂らでも無理じゃ」「そうだ出来ぬ」「流人なら・・・!出来るな?」
「はい、 出来ます!」
「黒天! 周囲に結界を張って!人目を欺いて!」
「はっ!」
黒天が認識阻害の多重結界を張る。
「紅丸! 地中に未だ切られた根が在るはずだから探知して!」
「御意!」
「土地神様、桜の木ごと我が家にお越し下さい!」
「回収、休眠、再生、復元、蘇生、復活・・・。」
[魔法・回収] :上位魔法、
必要な物を亜空間又は異空間へ収納する魔法
初級・中級・上級と有り、回収出来る量や大きさ、
種類が、熟練度によって異なる。
[魔法・休眠] :中級魔法、
体力や魔力を維持させる為の魔法
初級・中級・上級と有り、対象物によって異なる。
[魔法・再生] :上位魔法、
失った部位を魔力で強制的に再生させる魔法
生き物の再生は難易度と消費魔力が異常に高い。
[魔法・復元] :上位魔法、
失った部位・機能を復元する高等魔法
生き物の復元は難易度が非常に高く困難、失敗が多い。
[魔法・蘇生] :禁断魔法、
死者を蘇生させる魔法
禁忌とされている魔法で禁止している国が多々
難易度が非常に高く、失敗すると死霊として蘇る。
[魔法・復活] :秘術魔法、
弱った状態の者を一時的に全盛期まで能力を戻す秘術魔法
術者の能力と熟練度に寄って効果時間が異なる、
一般的には0.1秒〜10秒だが流人なら1分は維持出来る。
土地神様が木の衝撃で影響を受けない様に休眠して頂き、
亜空間に桜の木を回収して、次に切られた根を回収
全て回収した根に再生と蘇生を行う。
蘇った根を桜の木に復元させ再生する。
そして土地神様に復活の秘術を唱え一時的に能力を戻し、
「土地神様起きて!」
「おぉ〜寝てしまったのか?ここはどこじゃ?」
「お話は後、土地神様の霊力で桜の木を元に戻して」
「儂の力で・・・!なんと力が!それに桜の木も・・・。」
「早く、長くは保たないから!」
「おぉすまん!えぇ〜い!!」
永く宿した桜の木、
何処に何が必要か、手に取るように土地神様には伝わっていた。
「おぉ〜蘇ったわ、儂の木が戻ったぞ♪」
良かったぁ・・・。
倒れ掛かった流人を支える黒天と紅丸
代わる代わる二人に背負われながら帰宅した。




