第七十一話 こっそり花見会のつもりが、
本社と別館の間にある主要駅の工事が完了し賑わう周辺地域、
秋には新幹線も停車するとかで、一気に周囲の雰囲気が変わり始めていた。
「通勤の利便性が上がるよですね」
「当たり前じゃ」「その為に此処にしたのじゃ」「先行投資じゃな」
「なるほどね」
今月はこの他にも六◯木ヒルズが開業したり、
首都再開発の大規模な複合商業施設が幾つも完成し始め、
安価だった地価のテコ入れが行われていた。
当然、著名人達が招待されて盛大にお披露目をしていたのだが、
流人だけは参加せずにこっそりと群◯県に所有する複合施設の中にいた。
「地元の人だけを招いて、こっそりとお披露目をしたいんですけど、
どうしてあなた達がいるんですかね?」
「え! だってねぇ〜もえちゃん♪」
「個人として、大人として来たんだよね友里?」
「うん♪ それに家族だしね♪♪」
「参加して頂く為に渡したんじゃないですよ?」
「いいじゃないの流人! 事務所の許可は取っているんだから(大笑)」
「そうだけど和っ子さん!目立つでしょう?」
「大丈夫よ(大笑)隅でお酒飲んでいるからね(大笑)」
「そうそう、誰も気付かないって(笑)」
「観ちゃんまで!」
花見を公に出来ると言う言葉の下に、大勢の芸能人が参加していた!
「見てありさ! きれいに咲いているね(大笑)」
「本当、この前来た時と全然違うよね♪」
「流人! 私達の席って何処なよ(大笑)」
「友里もお花見したいよぉ流人♪」
「そうですね・・・それじゃちょっと待って下さい。」
紅丸に座席を調整して頂き、周囲をスタッフで囲んで目立たなく、
出来るだけ目立たなくする事にした。
「流人様、サーシャ様の眷属達の中にご用意致しましたが宜しいのでしょうか?」
「うん、そこなら目立たないでしょう、ありがとう。」
エステや美容品の専属スタッフは全員モデル並みの容姿をしているので、
本物の芸能人が混じっても周囲は気付かないと流人は思っていた。
「それじゃぁ〜みなさん、 座席に案内するので付いて来てください。」
「「「「「は〜い」」」」」「(大笑)」
「此処で大人しく楽しんでいって下さいね?」
「綺麗だね♪もえちゃん♪♪」
「そうだね、この辺だとまだ早いと思ったんだけどね」
「いやぁ〜 桜の花見、一度してみたかったんだよね(大笑)」
「私も、 この世界に居ると出来ないじゃん」
「本当よね、酒なんて飲んでたら週刊誌になんて書かれるか?(大笑)」
「大丈夫なのかな? 流人さんにご迷惑かけてないかな?」
「大丈夫だよ恭ちゃん、座って楽しもう♪」
「うん、♪♪」
「此処って、撮影で使えそうだよね♪」
「無理だよ思うよ京ちゃん」
「え〜綺麗でいいと思うけどなぁ・・・」
「流人が認めないでしょう(笑)」
「あ!そうだね(笑)」
「松さん! 悪口は本人に聞こえないと面白くないですよ(笑)」
「ごめん、聞こえてた?(笑)」
「少しだけね(笑)」
京子さんが連れて来た松さん、
初めましてだけど、気さくで明るい女優さんでした。
「お酒の追加は、周辺のスタッフに申し出て下さい、
分かりましたか和っ子さん?」
「(大笑)大丈夫聞こえているから(大笑)」
「流人様!」
進行を務めていた黒天が、急に呼び流人に一言挨拶を求めた!
「私が?」
「末長くこの地に根差すのであるなら」「隠し事は如何ぞ」「そうだぞ」
「そう言う意味ですか、承知しました。」
流人が人混みの中へ進んで行く。
「流人様、今後の関係を考慮致しまして、是非ご挨拶をお願いいたします。」
「はい、」
高台に担ぎ上げられた流人を、周囲が物珍しそうに見聞する。
「皆様、本日は・・・」
一通り挨拶を済ませると、見聞していた者達から問う声が!
「この場所は、なんて言うんだ?」
「この場所?」
「あぁ〜! 名称だ、なんて言うんだ?」
誰も考えていなかった、抑々大々的に公開するつもりもなかった場所なので
複合商業施設の名称は名付けていなかった。」
「流人様!」
慌てた黒天が遮る為に入って来たがそれを止める流人、
「そうですね、 地元県民の女性が美しく集って欲しいと願い、
important salon「ぐんまっこ」で如何でしょうか?」
「あんたはこの県民をよく知らん様だな(笑)」
「はい、これから学んで行きたいと思っております。」
「学ぶも何もなぁ、井◯美幸知らんのか? あれがこの県の代表だぞ!
美人なんておる訳なかろう(笑)」(笑)(笑)
「直接お会いした事はございませんが、頑張っていると思います。」
「いくら頑張ってもな、ブ◯はブ◯だぁ(笑)」(笑)(笑)
「それなら、我々が見つけます、そしてこの場所で育てましょう美人を」
「あ〜ね、めっかるといいがね(笑)」(笑)(笑)
「美は1日にして成らず、日々の努力の積み重ねと愛情の結晶です。」
「お〜ぉ!」
「奥様に引き出物をお渡す下さい、
愛情は既に積み重なっている様ですからね(笑)」(笑)(笑)
「かかぁどんはしわくちゃけい、化粧で誤魔化せるかい?」
「誤魔化さずに、維持しましょう。」
「維持かぁ、元には戻らんね?」
「夫婦で積み重ねて来た年輪は大切にしましょう。(笑)」(爆笑)
「だなぁ(笑)」(笑)(笑)
周囲から大きな拍手が送られた♪
多分、近所のおじさんだと思う、
群馬県民らしい、雑だが温かみのある陽気な人だった。
「お疲れ様です流人様」
「少し大変だったね(笑) 名前の方は宜しくね紅丸?」
「御意、important salon「ぐんまっこ」ですね?」
「うん、「ぐんまっこ」でいいと思うよ」
「宜しい命名かと、早速対処致します。」
席に戻ってみんなと合流して酒を楽しむ、
「お疲れぇ〜流人!」
「表に出たくないって言う割に挨拶するんだね(笑)」
「此処は特別な場所だからね」
「そうなんだ。」
「そう言えば、みんなは登録したのかな?」
「したよ、直ぐにね♪」
「速攻でしたわよ(大笑)」
「したんだけどさぁ、エステとかは都内にあるんだね?」
「ね〜!びっくり! 流人が群◯って言うからさぁ」
「前にも言ったけど、此処は地元住民達への還元の場所だから」
「還元?」
「工場や研究所を受け入れて頂いたね」
「それだけの為にこれだけの事するの?」
「他にも色々あるけど、都内だけじゃ狭いでしょう?
遊びの場所は広い方が良いじゃん♪」
流人は楽しそうにお酒をぐいっと飲み干した。
「流人の遊び場って事だ・・・。」
「そうだね」
「気にしない気にしない、(大笑)」
「だからエステや美容品は都内の店舗で買えるからね」
「既に予約入れたよ」
「私もぉ〜(笑)」
「毎度ぉ〜(笑)」
「私まだなんだよね、流人!赤坂と代官山どっちがいいの?」
「自宅から近い方でいいんじゃないの、技術的に同じだからね」
「そうなんだぁ」
「説明があると思うけど、
肌管理の主治医だと思って頂けると分かりやすいと思う。」
続ける事で、意思疎通が出来て初めて効果が最大限に引き出せる、
美容院や歯科などと同様な思考で通って頂けると嬉しいと流人が説いた。
「髪のメンテナンス時に美容師に相談するだろ、そんな感じかな?」
「流人も相手するの?」
「私? !しないよ(笑)野郎が肌触ってたらキモいでしょう?
接客スタッフは全員女性だよ(笑)」
「そうなんだ・・・」
何故か少し残念そうな表情をする涼子だった。
「うちのスタッフは私以上に上手だから安心して下さい。」
「なんでだろう、当たり前の事なのに凄い説得力があるよ」
「そうだよね(笑)」
「どっちにしても、酒が美味しい(大笑)」
「流石♪ 和っ子さん(笑)」
「「「「「(笑)」」」」」
「流人様、こちら自治会の奥様方が持参した芋煮にございます、
是非お召し上がり下さいとのこと。」
「ありがとう、いただきます。」
「そしてこちらが地元の漬物らしいです、お召し上がりを」
「ありがとう・・・味噌漬けだよね?」
「はい、その様に聞いております。」
「個人で漬けているの?」
「らしいです。」
流人の疑問の声が地元住人に聞こえたのか声が返って来た!
「此処いらの住民は全員自家製味噌を拵えるだぁ〜」
「そうだぁな〜、壺漬けや味噌漬けも漬けるぞぉ〜」
「へ〜自家製味噌かぁいいなぁ〜」
「よかったらぁ、うちのかかぁどんが教えるぞ!」
「ありがとうございます。」
酒で交じり、地域住民との交流会を開いてよかったと流人は思った。
・・・花見会終了後、
「流人様これは如何致しましょうか?」
「何これ!」
サーシャの眷属達が大量の名刺を持参して来た!
「どうしたのこれ?」
「花見の最中に、ナンパされました。」
「ナンパ!」
よく見ると、芸能事務所の名刺中心に、大手企業の名刺が!
「あの場所! 全員が注目していたんだね」
「その様にございますね。」
多数の芸能人が態々群◯県まで来て、イベントに参加していた事が、
一部の業界と関係者の間で騒ぎになっていた事は流人は知らなかった。
一部、群馬弁に挑戦してみましたが、通じているでしょうか?
「あ〜ね=そうだなんだ」「めっかる=みつかる」「かかぁどん=奥さん、嫁さん」
群馬県人のみなさん間違ってましたらごめんなさい。




