第六十九話 花見と開花の才
希空達の報告を毎日受ける流人、
報告にはリハビリの状況や能力の状況を事細かく書かれてあった。
「この報告書、正しいんですよね?」
「はい、我々も驚愕しておりました。」
「IQの測定が不能?」
「一応300以上と言うことです。」
「記憶力も・・・なにこれ?」
「特に希空君は空間認識力が異常値を表していました。」
「この独創性展開力ってなに?」
「一つの物からいくつ発想出来るかを測る数値だそうです。」
「希陸のこの数値は・・・?」
「異常値です。」
「希海の洞察力も異常値だよね?」
「はい。」
「あの子達・・・本当に人間なの?」
「・・・。」
紅丸と報告書を見ながら呆れる流人、
三人が全員、一回で、それも速読出来るし理解もしている。
訳を聞くと・・・悲しくなるから省略。
結論、
生きる為に、殴られない為に身に付けた能力は凡人を驚かせる。
「睡眠時間が少ない様ですが?」
「6時間を定めていますが、2〜3時間しか寝ていない様です。」
「心の問題?」
「恐らくは、それと習慣になっていたのではないでしょうか?」
「最低3時間は睡眠を取る様にお願いします。」
「御意」
「それと、花見に連れて行きますから」
「別邸の方でございますか?」
「身内として今後扱っていきますから承知して下さい。」
「御意、皆喜びましょう。」
「それとあの子達専用の移動車も用意して下さい。」
「車種は?」
「私達と同じでいいでしょう?」
「承知致しました。」
「それと、あの主治医、本気なのかな?」
「その様にございます。」
三人を執刀した女医の一人が、
今後も三人の専属医師として常勤したいと申し出ていた。
「ティナ様からは宜しく頼むとの事にございます。」
「宜しくってね、本当に良いのかな?」
「子供達には宜しい事と思いますが?」
「そうだけど・・・いいかぁ」
後に、流人が女医にフローレンスと名を与えていた。
弥生の3週目、
流人達はバイクで、子供達はフローレンスの運転する車で別館へ向かう。
神◯◯県にある幽玄倶楽部の別館で、恒例の花見を行うのだが、
今年からは女医の先生と三人の子供達も参加して行く。
「ここは我々身内だけの宴ですので、寛いで楽しんで下さい。」
「身内?」
「そうですよ、みなさんも身内ですから気兼ねなく。」
「あの桜は?」
「あぁ〜あれが桜爺と言って土地神です。」
「「「土地神様!」」」
「はい、この大地の守護人ですよ、他にも椎爺もいますよ其処にね」
「神様がいるの? どうした希空?」
「他にも沢山いる・・・けど分からない」
「ほぉ〜! 木霊の存在に気づきましたか?」
希空だけでなく希海も希陸も周囲に何かを感じている様だ。
「不思議と暖かいね」
「そうだね、神様みたいだね」
「楽しいね♪」
「この国にはこの様な場所があるのか?」
「少ないですけどございますよ。」
「そうかぁ・・・」
感心しながら周囲を見渡す先生に希空が優しく伝える
「先生、怖くないよ、みんな優しいよ」
「分かっている、ありがとう。」
「お待たせいたしました、飲み物と食べ物にございます。」
倶楽部の料理人達僕が酒やジュース、料理や果物など沢山並べて置いて行く
「凄〜い! お祭りだぁ♪」
「本当だね、お祭りだね♪」
「美味しそうだね、楽しいね♪」
「沢山食べて下さいね」
「「「いただきます♪」」」
「あれは?」
「あれは、供物です、神々への御供物です。」
「そのような物まで用意しているのだな・・・消えた!」
「お気にせずに、先生も呑みましょう?」
「おぉ、頂きましょう。」
何故か笑っている希空が印象に残っていた。
聞こえてはいないと思う、
木霊達が3人を噂している、そして歓迎していた。
聞こえてはいないが感じ取れているのだろう、
希空は優しい笑顔で周りを眺め何かを感じ癒されていた、
あの時の一生懸命な作り笑顔ではなく本心から溢れる笑顔だった。
「希空達はこれからどうするの?」
流人の言葉に敏感に反応する3人に、
言い方が悪かったのかと反省しながら聞き直す。
「したい事、やってみたい事、見てみたい物、行ってみたいところ
そんな願望はないのでしょうか?」
「願望?」
「したい事?」
「何がしたい?(笑)」
「流人! 焦り過ぎだ!」
先生が流人を嗜める。
「この子達は、先ず基礎学を学び、次に応用学、そして社会見学の順に
知識とリハビリを兼ねて学習させて行く。」
「そんな対応で大丈夫なんですか?」
「リハビリは数年から一生かかるんだよ、焦りは禁物なのだよ!」
「でもね先生・・・。」
この子達の面倒を見ると行っても、この子達の好みも趣味も分からない
どんな洋服を求めているのか?どんな食べ物飲み物が好きなのか?
15歳なら、好奇心と言う成長期が果敢に溢れていておかしくない時期
それが見えてこない=遠慮や隔たりがあるのではと気にしていた。
「まぁ、好みって言ってもね、積み重ねて判断していく物だろう?
この子達には積み重ねた物がないんだから急には無理があるよ。」
困った・・・思っていた流人に敏感に反応する希空、
「流人! このご飯美味しいよ♪」
「沢山食べなさい、そして大きく成長して欲しいです。」
「うん♪」
希空の様子を観察して分かった、
この子達は感受性が豊か過ぎる、流人の些細な感情も敏感に反応、
読み取るこの子達を外へ連れて行けば疲労が耐え難い事になってしまうだろう。
「流人!」「キットが名案じゃ!」「さすがじゃなキットも!」
「キットが!?」
この子達にPCを与える、
PCの中なら情報が得られ自分の好みを理解出来る世界がある。
多少はネットで買い物も出来るし交流も可能だが、
それを始める前に適切なレクチャーを受ける必要がある。
「見えない世界だから溶け込み易いって事ですね?」
「見えない世界だから」「反対に恐ろしい事もな」「ちゃんと教えないとな」
「なるほど、知らずに傷ついては困りますからね。」
「先生どうでしょう? この子達にネット環境を使わせてみては?」
「私は良いと思う・・・が、私が使えないのでな、そのぉ・・・。」
「ご一緒に勉強為されては如何でしょうか?」
「・・・そうさせていただこう。」
「その方がこの子達も溶け込み易いと思います。」
「流人! PCってなぁに?」
「流人!ネットってなぁに?」
「楽しい?」
「君達の将来に必ず必要となる道具だよ」
「「「道具?」」」
「興味を持つ事は大切ですが、今は沢山食べて下さいね?」
「「「はぁ〜い♪」」」
弥生の風にしては、暖かく心地よい風が、
この子達に暖かく見守っている様に包んでいた。
量販店でPCを購入して子供達にプレゼントする、勿論先生にも。
使い勝手が良いのはWin◯◯wsだが、ア◯◯カで会った男の会社の方を選んだ。
「iM◯c?」
「そう、iM◯cだよ」
「何するの?」
「これを使って色々好きな事を探すんだよ。」
「好きな事?」
「楽しい?」
「どうだろうね?」
「紅丸、頼んだよ!」
「おまかせください、それでは、はじめましょう。」
流人は、はっきり言ってPCは苦手で操作も殆ど理解していない
それでも、三賢者がいるので問題がないのだが、人に教えるとなると難しい
なので、紅丸が代わって、子供達と先生に教授することとなった。
1時間後・・・。
「流人様!」
「どうしたの紅丸?」
慌てて子供達の部屋へ向かうと、みんな静かで変わりない感じだった!
「紅丸?」
「流人様、お助けください!」
「どうしたの?」
たった1時間で子供達は基礎を学び、
応用し始め疑問を紅丸に問うて来たのだが、
難問で紅丸に答えられるレベルではなかった。
「流人!」
「これ楽しいね♪」
「色々な物が見れるんだね♪」
子供達が見ていたのはネット画面ではなく、サイトのプログラム乱数表だった!
「どうやって入ったのじゃ?」「これは止めなくては」「不味いぞ流人!」
ホームページから、違和感がありそうな場所を探し出して、
サイトへ侵入しプログラムの乱数表を開けてしまっていた。
「どうやって?」
「なんとなく?」
「基礎プログラムを応用してプログラムを作ってみたんだ♪」
「自分で作れるの?」
「うん、なんとなく、こうかなって♪」
「そうしたら、文字が一杯流れて来た楽しいよ♪」
「1時間だよね?」
「天才じゃな」「それも呆れる程のじゃ」「この才は伸ばすべきだぞ!」
「そうですが・・・。」
怒るに怒れない流人、流石にどうすれば良いのか分からないでいたら、
ここでも希空が空気を感じ取り、
「そろそろ休憩しようか?」
「! そうだね♪」
「文字が一杯並んで綺麗だったね♪」
「「「そうだね♪」」」
「鑑定にもありませんでしたよ!こんな才能?」
「当たり前じゃ」「儂等の世界には無い才能じゃからな」「恐ろしいのぉ」
流人も交えて改めてPCの使い方とネットの正しい使い方を、
子供達に教えたのだが、子供の吸収力と応用力は三賢者並みだった事に
流人は、とんでもない物を子供に与えてしまったのではないかと戸惑っていた。




