第六十二話 トップ会談
都心から西へ直線で250㎞、
愛◯県の北部にある人口40万人の豊◯市、
此処がこの国が誇るト◯タグループの中核事業、トヨタ自動車の本拠地である。
都心から高速道路で向かった流人達、
「先輩、かなり早く到着しそうですよ!如何します?」
「如何しますって言われてもよぉ?」
「渋滞せずに順調に流れてましたからね。」
「おぉ、こんなに空いている事は珍しいぞ!」
「先輩が飛ばし過ぎです!」
「そんな事はねぇよ! ただ・・・この車が早過ぎるんだよ♪」
「先にお昼を頂きましょうか?」
「おっ!いいね♪」
「紅丸、大丈夫だよね?」
「はい、会談時間には90分程空きございますので問題ないと思います。」
「飯ぃ〜♪ なに喰うんだ?」
「地元の料理ってあるんでしょうかね?」
「流人!」「きしめん屋じゃ!」「◯◯って店に迎え!」
「◯◯って、きしめん屋さんがあるんですか?」
「◯◯屋?」
「先輩! あそこに看板が出てますよ!」
「そこじゃ!」「そこに敵大将がおるぞ!」「奇襲戦じゃ!」
「そこでお昼にしましょう。」
「了解。」
三賢者が急に変な事を言い出すので戸惑った流人、
付き添いは紅丸一人なのであまり寄り道はしたくなかった。
「流人様、 三賢者殿の奇襲戦ってなんでしょうか?」
念話で問い掛けてきた紅丸、
「分かりません、なんですか?」
「敵は◯◯屋にいる」「そうじゃ!」「奇襲じゃ!」
「敵?」
◯◯屋の駐車場に停車、流石御膝下、ト◯タ車が多数停車していた。
「すみません〜! 4名ですが入れますか?」
大きい声で邉さんが、お店と対応していた。
「いらっしゃいませ! 4名様ですね、どうぞ此方へ」
「すいません、 お〜い 食えるぞ!」
「先輩!目立ち過ぎですよ」
「流人!」「その席は駄目じゃ!」「座敷を指定しろ!」
三賢者の声が聞こえた紅丸が、店員に取り次いでいた。
「申し訳ございません・・・!」 「ご一緒に如何ですか?」
店員が断りを入れようとしたが、それを遮って座敷の中から男が声を掛けてきた。
「ありがとうございます。 流人様!」
「相席叶いましたか?」
「はい、どうぞ中へ」
座敷の中へ入ると三人の男が座敷に座っていた。
「なんだ!すげぇ空いているじゃんか?」
「邉さん失礼ですよ! すみません。」っと流人が頭を下げる。
その仕草に慌てる渡邉、相手を確認すると見覚えのある人物が!
「経団連会長!」
「先輩!」
騒ぐ渡邉を叱咤する陣内、
「お二人共、うるさいですね、食事の場ですよ(怒)」
流人の言葉に冷静に戻り、謝罪を繰り返す邉さん達、
「宜しいですよ、気にしませんから。」
大柄で優しい声で二人を労っていた。
「敵ってそういうことだったんですね。」
「その様にございますね。」
流人と紅丸は三賢者の言葉の意味を理解した。
席の距離をとって席に座る様に店員に促されて座り、メニューを確認する。
「緊張するなぁ」
「邉さん達が気にする必要はないですよ。」
「そうだけどさぁ」
「私が求めたお店ですからね(笑)」
「そうだった! 要るって知ってたのか?」
「知る訳ないですよ先輩」
「だよな」
渡邉達には三賢者の声は聞こえないので偶然と思っている。
注文をして少し静粛が続いていると、一人の男が声を掛けて来た。
「お仕事で此方においでですか?」
「お仕事? はい、半分半分です。」
「! 半分半分ですか?」
流人の答えに、きょとんとする男、
「章男!」
「すみません。」
「かまいません、半分はビジネスですが半分は会ってみたかったのでね?」
「会う?」
「はい、この国のトップ企業のブレーンにね(笑)」
「トップ企業・・・!」
流石と言いたいほど、理解力が早い二人!
この後会談する相手だと直ぐに理解した。
「それじゃ! プロジェクトRの!?」
その言葉に紅丸が起立して名刺を渡そうとするが止める流人
「紅丸、此処は食事を楽しむ場所ですよ。」
「失礼致しました、挨拶は後ほど改めてさせて頂きます。」
「此方も承知いたしました。」
「(笑)」
ご当地料理のきしめん料理が出てきた!
「群◯県のひもかわに似ていますね?」
「どちらも平打ちうどんとして有名にございます。」
「そうなんだ・・・いただきます♪」
「「「いただきます♪」」」
「出汁に特徴がありますね?」
「なんでしょうね、この地域でしたらムロアジ節を使う様ですが?」
独特の野性味を感じる汁に驚いていた流人達に助言が飛んで来た。
「この店は、ムロとイワシ粉で出汁をとっておるんです。」
経団連会長こと、碩が説いてくれた。
「ムロとイワシの粉、確か静岡の方ではイワシの粉を使うとか?」
「うむ、おでんに掛けて食しますね。」
「なるほど、それでこの強さですか♪」
流人は喜んで冷やしきしめんを平らげていた。
「ご馳走様」
「「「ごちそうさんでした。」」」
先に店を出て行ったはずの三人が我々の車の前で立ち止まっていた!
「流人! だからポ◯◯ェは、まずいって言ったろう!」
「言ってましたか?(笑)」
車に近づいて行くと流人が、
「如何ですか、うちの車は?」
「去年発売されたばかりのカイエンが、もう国内を走っているとは・・・。」
「会長! これ、ただのカイエンではなさそうです。」
「章男、分かるのか?」
「分かりません・・・でも、無名の部品が使われているのは分かります。」
「無名かぁ」
「一応、自社ブランドなので無名ではないはずですよ(笑)」
「それは失礼致しました、刻印が登録ナンバーだけだったので」
「なるほど・・・紅丸!社名も刻印して下さいね。」
「御意」
楽しそうに車を眺めている章男氏を見て流人が提案をする。
「如何でしょう? 章男さん運転してみませんか?」
「え!」
「章男さんの車は・・・邉さん運転できるでしょう?」
「そりゃぁ出来るが・・・」
「如何ですか?」
会長の顔を伺う章男氏、
「章男! お前が考えろ! そして好きにしろ!」
「・・・載せてください♪」
「喜んで(笑)」
章男さんの車に邉さんと陣さんの二人が乗り込む。
「邉さん! ぶつけないで下さいね? 修理代出しませんからね(笑)」
「心配するな!」
「それじゃ行きましょうか、章男さん?」
「はい。」
車に乗り込むと直ぐに違いに気付く!
「後部座席が広くなっていますね?」
「はい、私達の居住性を求めていますので」
「なるほど、・・・!車高も?」
「はい5cm程下げていますよ(笑)」
「バランス調整ですか?」
「流石、車好きですね?」
「好きというか・・・私ですから・・・。」
「なるほど。」
走り出すと更に驚く!
「加速が! でも音的にノーマルですよね?」
「はい、車体重量の軽減で加速性能をカバーしています。」
「軽減・・・どのくらいの?」
「600㎏ほど!」
「!!すみません。」
「安全運転でお願いしますね(笑)」
色々考え出した章男氏に流人が一言告げる!
「我が社が手掛けた最初の車なんですよ。」
「これが!」
「はい、今後は更に精進して行くつもりです。」
「・・・」
普通はエンジンの排気量を大きくしたり、
馬力重視の使用にしたりするメーカーが殆どの中、
今自分が運転している車は多分、
オリジナルのカイエンより操作し易く乗り易いだろうと章男は思っていた。
「我が社の車もカスタムするんですか?」
「今のところは考えていませんが、出来たらしたいですね。」
「そうですか・・・。」
「素直ですね。」
「よく会長に指摘されます。」
「でも、私は好感が持てますよ。」
「ありがとうございます。」
足回りや加速、ブレーキなど、乗っている流人達を気遣いながらも
色々試していた章男氏が突然、
「僕を採用して頂けませんか?」
「章男さんは、私達とト◯タを全面戦争に持ち込みたいのですか?」
「・・・ですよね、すみません。」
「大丈夫ですよ、その為にこれから会談をするんですからね。」
博打付きで名が通っている碩会長、
果たして流人の申し出に乗るのか反るのかどっちでしょう。




