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第四十九話 宴の準備と所作

 一つ、霊洞には流人以外は入らぬこと。

 一つ、心身を清め潔白の衣を纏うこと。

 一つ、参加者に対し平等に振舞うこと。

 一つ、招く使いとして、風もしくは木霊を使いとすること。

 一つ、・・・・。


 幾つかの心得を頂き、宴の準備に入った流人達、

付き添いを禁じられた黒天と紅丸が少々不機嫌だった。

 

 「大丈夫ですよ、黒天も紅丸も安心してね。」

「然し流人様!」

 「ゲームの時は驚いたけど、今回は場所もこの国の中だし、

 山爺やお婆様も同席するって言ってたし」

「確かに申されていましたが・・・。」

 「それにね、椎爺や桜爺も出席出来るかもって言ってたから

 心強いでしょう?」

「御意」

 「まだ、紅丸は不満なの?」

「不満はございませぬ、流人様の意のままにお進みくださいませ、

ただ、この一帯の山神が集まるとのこと。」

 「そうだね、山神に土地神、それに、事の主も参加するらしいよ」

「失態なく勤められましょうか?」

 「あぁ〜 それは心配だね、」

「料理の方は急ぎ、僕達に作らせております、」

 「ありがとう、800万の神様って聞いているけど、

 全てが揃う訳ではないからね。」

「それにしても数が数ですから、間に合いましょうか?」

 「頑張って頂くしかないよ」

「お酒の方は如何いたしましょうか?」

 「大量って言っても限度があるよね?」

「一応蔵元に願い融通して頂きましたが、とても・・・。」


 山爺達4人の神様でも一升瓶を数十本空けていた事から、

どれだけあっても足りないだろうと諦めていた。


 

「心配致すな流人。」

 「山爺!」

「酒や肴を口に致すのは一部の神々だけだからな」

 「そうなんですか?」

「誠じゃ! 全員が飲んで食ったらこの国の酒と肴が消滅するわい!」

 「それでは、どの様にしたら宜しいのでしょうか?」


 108本の酒を積み上げる、

煩悩の数を積み上げる事で浄化され満たされると言う。

 肴も同様で、煩悩の数だけ積み上げる事で神々は満足すると言う。

「まぁ〜儂等みたいに、騒ぎたい神々は少ないからな、

再び始まった麓の宴に参加する事に意味があるので、

飲食が必要ないと思う神々もいるからのぉ」


 「それでも、必要ですよね?」

「そうじゃな、此度の参加は恐らく数百万じゃろうが、

挨拶だけで、飲み食いを求めるのは百もおらんじゃろ。」

 「そんなに少ないんですか?」

「まぁ色々あるからのぉ 人の招きに良しと思わぬ神々もおるからな」

 「なるほど」


 それでも一応、酒を1,108本、食事を1,108食分用意した。

 「ご苦労様でしたね皆さん。」

『『御意』』

 僕達が頑張って作ってくれた多数の料理を魔道具に回収して宴に備える。

 「正月用の料理もあるんですよね?」

「勿論、我等の分はご安心ください。」

 「良かった。」


 「それじゃ〜行ってくるね。」

『『行ってらっしゃいませ!』』

 「三賢者は一緒で大丈夫だよね?」

「儂等は流人と一心同体じゃぞ」「そうだ離れぬぞ!」「当たり前じゃぞ!」


 富士の裾野にある樹海へ向かう。


 目が眩むほどの磁場の歪みと、樹海の木々が迷走へと導く、

 「普通の人間なら迷いますねこれは。」

「そうじゃな。」「同じ場所を何度も歩ませようとしておる」「小癪な事じゃ」


 「此処かな?」

 岩の窪みに湧き水が流れ苔が生している、

苔で隠れている隙間から奥へ入ると開けた洞穴があった。


 「なるほど、外の湧き水で体を清めろって事ね。」

裸になって外の湧き水で体を濯ぐ、

 「タオルとか使っていいのかな?」

 中々背中の方が濯げないでいた流人に風が冷たく吹き、清水が背中へ舞った。

 「ありがとう。」


 「流石に寒いですね。」

 震えながら絹衣に着替える。

乾いた風を魔法で自身に掛けて乾かし、結界で体温を調節する。


 「これで心身の清めが行えたかな?」

 多分誰かが見ていると思う、木霊なのか霊木達なのかは分からないけど

気配は感じるが返しは無い。

 「次に・・・っと。」


 洞穴の中に、用意して来た酒や料理を準備して行く。

 「上座とかあるんだろうね? 山爺は気にするなって言ってたけど・・・」

 涼しい風がふ〜っと身体に当たる!

 「なるほど、奥が上座なのね、ありがとう。」


 上座に膳を置いて右に酒を左に料理を積み上げる、

上座に対してVの形に膳を置いて行き入り口に流人が座る。


 「あれ? 膳の数が・・・これでいいって事かな?」

 並べた膳の数が減っている!

 左右に50ずつ並べたはずなのに8個ずつに減っていた。


 そして流人の前に空の膳が一つ現れる!

 「これが私のなのね・・・って何も無いじゃん!」


 すると懐かしい気配と多くの異様な気配が集まって来た!

「来た様じゃな」「気を抜くな流人」「桜爺達もいる様じゃな」

 「大丈夫ですよ」


 上座の右側に山爺が座す、 

 「左に座ったお方は誰だろうね?」

「分からん、」「山神様であろうな」「山爺に近い霊力じゃな」

 次々と座して行く中、赤◯の山神様が左2席目に座った。

「ほぉ〜」「赤◯殿は、4番目なのか?」「霊力的にそんな感じじゃな」

 

 8名の山神様と思われる神々が座した後、

一席ずつ空けてお婆が座る!

 「欠席?遅刻?」

「隔たりだろう」「おそらくな」「身分の差だな」

お婆の霊力はかなり強いと思うのだが、山神と土地神の違いなのだろう。


 その次に座った土地神様も相当な霊力を持っていた、

次は誰かと待ち望んでいたらまた一隻ずつ空いた!

そして、椎爺が座し、桜爺が座って満席となった。


 「私の近くに知り合いがいると安心しますね。」

「確かにな」「全員に見られているからなぁ」「緊張するのぉ」


 流人の方から眺める視線は、まるで山の頂きの様子に似ていた。


 全員が座して暫しの沈黙が流れる・・・が、

外から野次の声が聞こえてくる。


「人の招きに参加するとはなぁ・・・。」

「神々も落ちたものよなぁ・・・。」

「汚らわしいモノよなぁ・・・。」


 「酷い言われ様ですね。」

「流人、我慢致せ、」「そうじゃ、我慢じゃぞ」「忍耐も必要じゃぞ」


 罵声や野次が飛び交い雰囲気が乱れ始めるが!

一瞬の風が周囲で野次を浴びせていたモノ達を消し去った!

 「え!」

「気配が消えたのぉ」「何が起こったのだ?」「まって!」

 三賢者が上座に意識を集中すると光の球が漂っていた!


 『『『『大主様』』』』


 山爺達山神様が一斉に声を揃えて発した!


 我を招く場にしては、騒々しいぞ!


「申し訳ございませぬ、久しく集いが御座いませんでしたので」

「分を知らぬモノも増えていた様に御座います。」


 して、そのモノが、我の代理か?◯◯◯よぉ〜?

「は、流人と申すモノに御座います。」


 ◯◯◯よぉ〜、我は人に与えよと申したはずだが?

「は、一応は人に御座います。」

 流人と申したなぁ、発する事をゆるすぞ!

 「はい、流人と申します。」


 人の子成れば、我が力も必要であろうが、其方に必要か?

 「分かりませぬ」

 素直じゃなぁ まぁよい、

 我は人が愛おしい・・・。

 流人の脳裏に古来のこの国の風景が伝わってくる、

作物の収穫時に感謝を喜びを伝えて来る人、病や汚れを払い願う人々、

そして、この地の安泰と繁栄と民の祝福を願う◯◯の姿が伝わって来た。

 「◯◯!」

 ほぉ・・・、会った事があるのか?

 「はい、今年初めにお会いさせて頂きました。」

 我はあの一族が愛おしいのじゃ、健気でなぁ美しいっと思う。

 

 「私も、お会いした時、人と思ぬ清らかさを感じました。」


 そうか、そうであろう、あのモノ達に我は見えぬが、

あのモノ達の声は我に伝わっておる。


 「それは、◯◯もお喜びになられる事と思います。」


 そうか、あのモノ達とまた会う事ができるのか?

 「はい、繋がりが御座いますのでお任せ下さい。」


 あのモノ達には見えぬであろうが、我は見守っておる。

 「その様にお伝え致しましょう。」


 我はもう一度眠りに入る、目覚めては人に害がある故な、

我の留守の間は、◯◯◯と流人に託す。 


 流人とやら、無用となるまで預けて置くゆえ自由に使うが良い。


 「ありがとうございます。」

 懐にしまっていた短刀が一瞬光に満ちた!


 上座に座していた光の球が消えていた。


「流人よ、此方へ参れ!」

 山爺が流人を上座へ招く。

 「いやいや、山爺、それは駄目でしょう?」

「駄目も無い! 其方が代理様なのだ!」

「左様、上座に座して頂けなければ、我等は酒が飲めぬ(笑)」

「そうだな、」

「左様だな。」

「大主様の御意志である。」

「左様、従うまでのこと。」


 上座に座ると山神達が一人ずつ、酌をして来る。

「箱◯山の山神と申す。」

 「知ってますよ山爺?」

「静かにしておれ、儀式じゃからな」


「秩父◯山の長神(おさがみ)と申す。」

 「長神?」

「古来より一帯の山神を纏めておったのでな、長神と呼ばれておる」

 

「儂は、浅◯山の山神としておる。」

 「浅◯山と言うと地脈が活発な動きのある?」

「よくご存じじゃな、その一帯を治めておる。」


「赤◯山で山神をしておる赤爺じゃ!」

 「(笑) 赤爺ですか?」

「山爺がおるでなぁ〜、儂は赤爺じゃ呼び易かろう。」

 「はい。」


「男◯山で山神しております。」

 「男◯山って確か、い◯は坂の?」

「左様、山岳信仰どもの聖地と崇められておった。」

 「凄いですね。」

「昔の話じゃ、今は形式だけの見世物だけじゃ」


「丹◯山の山神をしておる。」

 「丹◯? 宴の近くですね?」

「毎年見ておったぞ、」

 「来てくだされば宜しいのに?」

「戯け!山神が酒や肴に釣られて参っては示しがつかん!」

 「お酒が大好きなところは山爺に似てますね。」

「・・・うん、我等は皆酒好きじゃからな・・・。」

 「よろしくおねがいいたします。」

「・・・我の事も・・・沢爺と・・・呼ぶがよい。」

 「(笑)宜しくね沢爺。」


「儂は、伊豆◯島の山神をしておる、三◯山とも呼ばれておるが、

島そのものが儂で山そのものなのだ。」

 「確か一番近い島でしたよね?」

「そうじゃ、そこの椎爺とも付き合いが長い、宜しくのぉ」

 「こちらこそ宜しくおねがいします。」


「儂は、東北に位置する八◯山の山神をしておる、

古来より豊作、豊穣の神とも崇められておる。」

 「宜しくおねがいします。」


「以上が8神、山神衆じゃ!流人よ」

 数多いる山神の中でも古来より名高い山神達だと山爺が説いた。

「まぁ、関東◯◯周辺の勢力じゃがな」

 

 流人と申します、改めて宜しくおねがいいたします。



あくまで、日本に似た異世界のお話です。

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