第四十七話 招待状
最近、特に海外からの訪問者が増えている為
黒天と紅丸は毎日忙しい様です。
「会談の予約が沢山来ているって紅丸が困惑してましたよ?」
「まぁ・・・」「そうなるであろうな」「気にするな流人までは及ばぬはずじゃ」
「・・・何かしましたね?」
「儂等は普段と変わらぬぞ!」「そうだぞ!」「キットの影響だな」
「キットの影響?」
キットのシミュレーションの精度は非常に高く正確、
その為、予測投資が可能になり利益も膨大になっていた。
「それが原因ですか?」
「そうだろうな、」「多分な」「ほぼ100%だからな」
三賢者主導の投資の成功率は非常に高い、
然しそれは上昇余地で利益を上げる方法が殆どだった。
キットのシミュレーションで、これから起こるある程度の予測が可能、
それに伴って先行投資を行える様になった事が大きいと三賢者は説いた。
「簡単に言うとな」「チートじゃな」「反則級のえげつなさじゃな。」
「チートって違法でしょう?」
「違法ではないぞ」「モラルだな」「常識と共有の自覚じゃ!」
「それなら、尚更駄目でしょう?」
「考え方じゃな」「そうだな」「流人には向かん世界じゃな」
合法の範囲内なら何をしてもいい、なんとしても勝ちたい、
相手を騙しても、蹴落としても、どんな手段でもいいから勝つ事が全て、
そんな世界では、情報が全て、スピードが全て、先手必勝を掲げて、
多くの企業が投資して利益を上げている、それが資本主義の概念だからだ。
白でも大量の資金を投入して黒にする、
そして世間が黒と思う頃には利益を回収して次へと移って行く。
「詐欺でしょう?」
「立証出来ればな。」「難しいぞ!」「不可能に近いだろうな。」
元々白を黒と言い張っても違法ではない、
言論の自由と市場の開放の理念があるから詐欺とは、違法とは言い切れない。
鉱脈の無い鉱山を売っても買っても詐欺では無い、
ちゃんと調べない、情報が不足している方が悪いからだ。
「なるほど・・・汚れてますね。」
「流人にはな」「だから儂等が行っている」「流人が汚れる必要はない」
「でも、そんな人達が何故? うちの会社に来るんですか?」
「それは興味があるからだろう」「大損をさせた張本人だからな」「(笑)」
「大損させたんですか?」
「流人よ、」「我等が利益を上げていると言う事は」「つまりは・・・」
「「「損失を出している企業があると言う事じゃ」」」
「大変じゃないですか?」
「そうでもない」「そうだな」「変動相場だからな」
「変動相場?」
欲しいと言う者達にとって、実際の価値などに興味はない。
高くても欲しいと思う者達がいれば、その者達が付けた価値が適正となる。
「分かり易く言うとな」「流人にとっての肉じゃ!」「家畜じゃな」
安い物なら数百円の牛肉もあるが、流人は安心して美味しい牛肉が食べたい
その為に、何万何十万出しても構わないと思う気持ちそのものが、
自由市場と変動相場の資本主義なのだと説いた。
「美味しい肉が高くても詐欺とは言わんだろう?」
「確かに」
「反対に、どんなに安価でも不安なら買わんだろう?」
「確かに」
「人其々に価値観がある、そして其れは個々で違うのじゃ」
「なるほど」
「その違いで利益を上げる事を詐欺とか違法とは言えないぞ」
「故意に偽装すれば違法じゃがな」
「牛肉の偽装ですね。」
「「「そうじゃ、違法は罰せられるのじゃぞ。」」」
「その心理をキットが予測しているんですか?」
「人そのものでは無いがな」「環境だったり」「気分の変化を予測するのじゃ」
「そんな事が出来るのですか?」
「他では出来ぬ」「だから我々に興味を持つ」「キットの情報が欲しいのじゃ」
「なるほど」
この世界を知る為に、得る為に培って来た我々が、
他の企業にとっては、重要な情報となっていた事に流人は自覚した。
「心配致すな」「流人には手は出させぬ」「その為の対策だからな」
黒天と紅丸が盾となって流人お守る、
そして、黒天と紅丸が剣となって流人の敵を排除する。
夏の暑さが厳しくなった頃、
流人宛に一通の封筒が届いた。
「なんでしょうね?」
「流人に直接と言うのが気になるのぉ」「誰か女子かのぉ?」「開けてみよ!」
封を開けると二枚の手紙が入っていた。
一枚目には、
おめでとうございます。
オンラインゲーム「ザ・ワールド」への参加招待状です。
我々が選んだ100名、その最後の選択者に流人様が選ばれました。
流人様にとって、楽しい経験となるお時間を過ごせる事でしょう。
もう一枚には、
アドレスとパスワードらしき物が書かれており最後に差出人の名前、
ゴードンより。っと書かれていた。
「なんでしょうか?」
「分からん」「直ぐに調べるぞ!」「誰じゃゴードンとは?」
一見、悪戯の様な手紙だが、何故か流人には懐かしい、暖かく感じていた。
「分からん」「キットで分からんのだからな」「偽名じゃな」
「そのアドレスは本物です。」
「キット大丈夫なの?」
「私には多重結界と共有プログラムの間に多重障壁が設定されていますので、
どんな、ウィルス攻撃やサイバー攻撃にも対応出来ますのでご安心を」
「凄いんだね。」
「はい♪」
「如何します?パスワード打ち込んでみましょうか?」
「備えてからにいたそう」「そうじゃな」「取り敢えずは二人を呼び戻そう」
緊急事態として、黒天と紅丸は全ての予定をキャンセルした。
「ごめんね黒天、紅丸。」
「流人様の意のままに」
「左様にございます。」
封筒の手紙を見せてみんなの意見を聞く、
「パスワードの入力に反対が5で入力に賛成が2だね。」
「「流人様がお望みなら我々は賛同致します。」」
「これで3対4で逆転だね♪」
「流人よ!」「それはずるいのだぞ!」「そうだぞ!」
「入力した時のリスクはなんでしょうか?」
「そうじゃな」「キットの感染かのぉ」「情報流失だな」
「それはキットが無いって言ってますよね?」
「予測を超えるの事態が緊急事態なのじゃ」「そうだ!」「自覚致せ!」
「それじゃぁ、キットを隔離して入力すればいいのでしょうか?」
「それなら・・・」「問題ないが・・・」「不安はあるなぁ」
「残念ながら無理の様です。」
キットの回答に全員が注視する!
このアドレスに入力する事は出来ますが、
入力後パスワードのページへ向かう事が出来るのは、
ハイスペックのPCのみと言う。
「ハイスペックってどのくらい?」
「スパコン以上です。」
「「「なんじゃと!」」」
「大変なんですか?」
「当たり前じゃ!」「トップ企業か国レベルだぞ!」「以上とな?」
「100人って言うんだから当然なんじゃないですか?」
「・・・」「確かに」「世界中でそんなもんじゃろ?」
「って事は、国家レベルからの招待状でしょうか?」
「・・・」「そうじゃな」「大体予測は出来てきたなぁ」
「相手が分かったって事でしょうか?」
「大体な」「儂等も賛成じゃ」「キットで入力致せ!」
「え!宜しいのですか?」
「構わん」「黒天、後は頼むぞ!」「紅丸、必ず連れ帰るからな」
「「御意」」
キットの端末で流人がパスワードを入力すると意識が飛んで行く!
「「流人様〜!」」
ゲームの内容を今は、書きません省略する事を予めご報告させていただきます。
どんな内容だったのかは、個々の想像にお任せいたします。




