第四百六十二話 E3 受付相談所と化す
りんごマークでのプレゼンテーション後、
game projectのブースは長蛇の列になって賑わっている。
高画質だとフリーズしたり処理落ちしたり、
PCゲームユーザーなら一度は必ず経験した事があるが、
このgame Macはそれが一切ない!
実写の様な高画質でもヌルヌルに動くアバター、
そして何よりこの通信環境だ!
「どうなっているんだ?」
「抑々このPC電話線に繋がってないだろう?」
「俺は今まで何をして来たんだ? 時代はここまで進化していたのか?」
「俺だっれそうだ! 1万ドル以上かけてPCを組み立てたのに・・・」
game Macを試して嘆くユーザも少なくない(汗)
メディアや著名人からインタビューを求められるが、
既に流人も希空達も帰国している為対応出来ないと断り、
E3史上最もメディアに対して塩対応のブースとして伝説になった。
「あとは発売日なんですけどね・・・」
「私達は流人に一任するよ♪」
「CEOありがとうございます。
それだったら、7月4日では如何でしょうか?」
「独立記念日だね? 構わないけど量は揃えられるのかい?」
「アイアン・ブル300万台は用意出来てます。」
「w 流石プロジェクトRだね、それだけの量があるなら来月発売しよう」
「よろしくお願いします。」
流人達は帰国せずに3つの中継サーバー管理地区の一つ、
ニュー◯◯ージー州へ向かっていた。
3つの中で一番用地が広く、
様々な施設が建てられアイアン・ブル本部の移転も視野に入れ考慮し、
各建物にはヘリポートを完備し、様々な状況下で対応出来る様に設計されている。
この国の凄いところは自己防衛意識だ!
埋立地周辺の警備を警察から民間へ委託した時、
都や政府行政機関からとてつもない批判と圧力を掛けられたが、
この国では安全管理は個人で行う認識が根付いていた。
流人達がよく利用する横田の米軍基地と殆ど同じ大きさの用地に、
病院と蓄電式送電所、自社系列のスーパーに飲食店、
20階建のアパートメントなどが設置され、
警察署の代わりにアイアン・ブルの待機所が数カ所、全域の警戒に当たっていた。
エリア内は居住者と労働者以外は侵入禁止に出来、
治安の保全にも貢献しているので夜中でも安心してコンビニに買い物が出来た。
去年までは基準値越えの汚染物質や高濃度の土壌汚染で、
荒れ果てていた場所だったが数ヶ月で周囲も羨む環境となり変わり、
入居を求める申請が不動産部署に大量に送られて来ている。
「入居審査って・・・問題ないんですか?」
「この国では極当然事で、
誰でも隣の住人は安全な人に住んでいて欲しいですから(笑)」
「そうだけど・・・日◯では考えられないね?」
「そうでもないですよ(笑)」
「そうなの?」
「はい♪」
6区の区営アパートや区営マンションには入居審査があり、
年収や税金申告状態、犯罪歴、家族構成、
そして区民銀行のカードを所持しているか?が審査基準になり、
どんなに裕福な家庭でも、区民カードを所有していなければ審査には通らず、
どんなに貧しくても区民カードがあれば格安の区営アパートに入居出来、
生活の支援も受けられる。
「へぇ〜知らなかった♪」
「カード所持者は全員良民ですから、
手を差し伸べてチャンスを与えれば真面目な納税者になっております。」
生活保護などの支給はしない、代わりに仕事を斡旋したり紹介したり、
働く場所を提供する事で収入を得て規則正しい生活リズムに戻る事が出来る
病気も同様で、区民カードを所持していれば医療費は実質1割負担、
その上高額医療還付金制度を利用すれば月額10万円以上は返金される。
普通なら悪用する◯◯も現れるが、
この制度区民銀行のカードを所有していないと受けられない制度で、
当然不所持者達から批判の声が上がるが、行政が行っているのではなく、
区民銀行が口座所湯者に対してのサービスとして行っているのだから
文句も言えなくなる。
同様のシステムがどこまで他国で可能なのか?
手探りで少しずつ進展拡大を考えていた流人達だった・・・
一方、E3会場では・・・
game MACの評判も上々だがそれよりも新しい通信機器が注目を浴びていた!
無線で繋がる為何処へでも運べる上電波法に抵触せず安全、安定的に利用出来る、
そして利用料が月額49ドル95セント!!
流人達は高額と心配していたが、
米国のゲームユーザー達にとってこの程度の月々の出費は苦にならないらしい。
ただ問題があった、訴訟大国のこの国、
その為一人一人に説明する内容が多く時間がかかるので、
ブースには相談の為の長蛇の列が他のブースの邪魔になていた。
説明での問い合わせの上位に当たるのが審査基準だった。
年収や社会的地位など見た目や経歴で判断出来ればユーザーも納得するが、
人間性と言われてもピンと来ないユーザーが多く困惑していた。
純粋に楽しむ為に申し込む人もいれば、
機器を分解して構造を研究し流用する為に並んでいる人も少なくなかった。
アイアン・ブルの警備員が数名、
並んでいる人達の中からリストに入っている人物に退去をお願いする・・・
「どうしてだ! 私が何をした?」
「ミスター、 あなた◯◯◯にお勤めですよね?」
「!!・・・」
「申し訳ございませんが、
国家機関に所属している方の申し込みは現段階では不可能です。」
「そんな! 私はただゲームを楽しみたいだけだ!」
「そう申されましても・・・◯◯◯◯◯◯?」
「? 何を言っているんだ!」
「「「(笑)」」」
警備員が何やわ呪文の様な言葉を唱えるが男は知らない様子、
その姿を見ていた列に並んでいた人達は笑い出す♪
「(笑) ゲームがお好きなんですよね?」
「そうだ! 何度も言っただろ!」
「「「(大笑)」」」
「なにがおかしい!(怒)」
男が周囲の笑いにブチ切れ当たり散らすと警備員の態度も一気に変わる!
「こら! ド◯クエの呪文も知らね奴がゲームを語るな!」
「な! ド◯クエ?」
流石情報局、人気ゲームのタイトルは知っていた様で、
その中で使われている呪文までは知らなかった事を
周囲が笑っていると認識して逃げる様に引き上げていった。
また、
その光景を見ていた数名がそっと列から退散して行った様子も
監視カメラが捉えていて、キットから警備員達に情報が渡っていた。
同様に敵国のスパイやブラックリストに載っている要注意人物達も排除され、
中には暴れる者も少なくなかったが、
民間警備会社と言ってもアイアン・ブルも傭兵部隊に所属しているので、
怪我人は出ても大事にはならなかった。
列に並んでいる人達に無記名でのアンケートに協力を願い、
応じて頂いた人達には特製ノベルティーグッズをプレゼントしていたら、
グッズ欲しさにこちらも応募者が殺到!!(汗)
アンケートには当初の予定と変わり、
日本製のgame Macに変更となったがどうなのか?と言う質問だけで、
殆どのユーザーは、故障がなければどこの国でもOKと回答、
アイアン・ブルの認知度が低いのかと心配したが、
アイアン・ブル自体が、日◯と米国の共同会社との認識が強く、
国産に固執するユーザーは少なく、流人達の心配は無用だった。
3日間の間に通信機器のレンタル契約申し込み書に、
応募出来た人数は2,000名と少なかったが、
超高速通信網の管理運営を行うサテライトシステムズには
500万件を超える問い合わせが既にあり、
200万件以上の応募用紙が届いていた。
応募者の大半は自分でPCが組み立てられる程の知識を持っているので、
サポートセンターの対応に対しても理解が早く、
他社のPCでは通信負荷が掛かり過ぎて、
故障の原因になると言う説明も直ぐに理解して頂けるので、
電話対応のサポートセンターも円滑に対応出来て評判も上々、
流石日本企業と称され流人も嬉しかった。
応募用紙を頂き記入して応募した書類は、
眷属達が真偽の目で鑑定しながら合否を決め、
合格者には一件一件僕達が訪問して対面で説明し互いが納得したら契約を結ぶ。
米国では信じられない程の不効率な行為だけど、
このスタイルがどの国でも変えずに行っているのがプロジェクトRだ!
最終日にCEOからgame Macの発売日は発表され、
その速さにライバル企業も愛好家達も驚きを隠せなかった。
クレイジー・・・♪♪




