第四十二話 別れ、そして再会を約束
最後の仕事、アリスが主宰したパーティーに参加、
政財界やアーティストにスポーツ選手など多くの参加者が出席していた。
その中には、流人も何度か同席した顔見知りもいて、
この国の社交界にも多少は交友が出来ていた。
そんな中、色々お世話になっていたので、
アリスの親に、今回の礼を直接告げ感謝を述べる流人、
その行動に周りの参加者達は少々戸惑っていた。
「何か間違ってた?」
「いえ、完璧過ぎるのよ流人は、」
「完璧ではないと思うよ?」
「最初の印象は、甚平でしょう、ラフでライトな感じの印象、
次がスラング的印象で野性的でワイルドな感じが続き、
最後に、シンプルだけどクールなスーツに確りとしたコメント、
巨大グルームのトップだけあるわ」
「ありがとう、でもトップじゃないんだけどね。」
「嘘!便宜上二人が代表を務めているけど、貴方がトップよ、
二人を見ていれば分かるわよ。」
「確かにね、内緒でお願いしますね♪。」
「如何してリーダシップを示さないの?」
「面倒くさいから」
アリスは、流人の面倒くさいの言葉でなんとなく全てが見えて来た、
「必要な時以外はやらないって事ね?」
「必要な時が来ない事を願っているんだけどね。」
「じゃぁ、流人が動く時は私も協力してあげる♪。」
「それはありがたいね、頼りにしてます♪。」
ワインを一気に飲み干し流人が叫ぶ!
「皆さん! 私!流人が、見世物を致します。」
何が始まるのか?興味津々の参加者達が流人を取り囲む様に集まる、
そして少し落ち着いたところで流人が歌い出す!
Oh, say can you see, ・・・
この国の国歌を歌う流人、
言葉に魂を出来るだけ込め、言霊として歌い続ける。
「我々は、誇り高く声高に叫ぶ!・・・」
この国への流人の思いを言霊に込めて歌い続けていく。
「ああ、星条旗はまだたなびいているか?
自由の地 勇者の故郷の上に!・・・」
参加者達の様子が一変する、
涙を流し小声で呟く。
「On the shore dimly seen ・・・」
次第に小声が揃い一つとなって唱え聞こえる国歌、
忘れていた大事な物を、そして守るべくこの国の威信を、
参加者達は流人の言霊に当てられていた。
翌朝、
帰国の準備をする流人達、
「おはよう流人、」
「おはようアリス。」
「なんて言うか、昨日の流人は凄かったわ」
「?あれ一緒にベットを共にしたっけ?」
「馬鹿!」
「小さな島国だからね、頼りにしてますよ。」
アリスに見送られながら空港へ向かい手続きを済ませ帰国する。
「帰ったら、早々にする事がありますので、寝ましょうかね。」
「御意。」
不評だった機内食を断り、14時間の睡眠を取った流人でした。
帰国後、数日経過・・・。
流人は、保養所としていた桜爺の場所で温泉に浸かっている、
帰国して早々、色々事情の変化に流人達は疲れていた。
ゲストハウスや研究所などを確保すべく用地を探させていたが、
直ぐに条件に合う物件が多数見つかった! そう多数、その数20もだ!
都内に売り出されている物件は無数にあるが、
私達が求める用地は大規模で、売りに出される事はほとんど無い、
有っても条件が多かったり、使い勝手に癖がありそうな物件なのだが、
妥協しないで20件も! 少し妥協すれば更に多くの物件が売りに出されていた。
原因は、行政にあった!
金融機関が保有している不良債権となっていた土地、
それを吐き出させる為にルールを変えたのであった。
健全な企業としての基準値を下回る事を恐れた金融機関が、
挙って負の遺産を売り出した為地価が下がり更に負債が増えて行く、
負のスパイラル現象と言うらしい。
流人達は当初、全ての購入を考えていたが、流石に多過ぎて断念、
使用目的を絞って厳選する事にしたのだが、
その為に新しい部門や子会社を設立する事となり忙しく日々を送っていた。
新しく設立した子会社は、会員制の倶楽部を運営する会社で、
美食倶楽部と美容倶楽部の二つの倶楽部の運営を基軸に、
料亭とエステ、フィットネス倶楽部を纏めて管理運営するのが目的。
松濤と神楽坂に料亭を構える為の用地を、
赤坂や代官山にエステサロンやフィットネスジムの用地をそれぞれ購入、
此処の保養所も、料亭の別館として管理される事になっていた。
幽玄倶楽部と名付けた会員制の集いの場、
厳格審査と基準が設けてあり部外者が入会する事は不可能に近い審査基準、
「会員メンバーの推薦が3名以上必要って無理でしょう?」
「流人様のお認めに成られた方なら、我々も推薦致しますので問題ないかと。」
「全ての運営が、三賢者達の運用利益で補うって大丈夫なの?」
「まだ、大丈夫じゃな」「心配いらんぞ」「その内利益も出て来るであろう。」
将来的には、生産した家畜や野菜などを消費する場所だし、
社員達にも食べて頂きたいが、一般の人間の感想も聞きたいので、
会員以外の人間をゲストとして会員が招く事を可能にした。
「これで問題無いだろう」「そうじゃな」「流人は女子を呼べるしな」
「普通の食事でいいのでは?」
「食事ではない。」「エステの方じゃ!」「美容じゃ!」
「其方は分からないですから私には、」
「心配要らんぞ!」「精霊樹の滴を薄めた化粧水だぞ!」「軽く若返るぞ!」
「そんな物使ったら駄目でしょう!」
「心配要らん、」「会員制じゃからな」「流人が連れ込む女子だけじゃからな」
「連れ込むって人聞き悪いですよ!」
土産のバックをあげた女子達に、
評判が良かった事を三賢者達は暫く弄っていた。
「まぁ、アリス達が来日した時は使わせて頂きましょう。」
「そうじゃな、」「その為にゲストハウスを整備せんとな」「どこが良いかのぉ」
多数の候補地をひとつずつ確認していたので、疲れ果てていた。




