第三百九十五話 面倒い作業は丸投げしたい
新緑の葉色も落ち着き暑さが気になる皐月の下旬、
のんびり出来ずに機嫌が悪い流人がいた。
秋の発売に向けてスウェットなどのデザインや、
Tシャツのデザインを考えている流人、
自分が着たい商品なら集中して発想も浮かぶが、
興味のないスウェットだとイメージが全然思い浮かばない。
文字系のデザインを何種類か描き上げたが、
絵のデザイン発想が浮かばない(汗)
スウェットを愛用する人達をイメージすると、
龍や虎、仏像などが好まれると思うのだけど、
友里からNGを告げられているのでベストと思う柄が迷走中だった。
段々不機嫌になる流人、当然発想力も低下していた。
PCのモニターを見つめて思いつく!
「誰かいませんか?」
待機していた精霊の眷属を呼び、企業とのコラボの状況を確認すると、
認可が結ばれている企業が多数あった♪
米国のコミック漫画ピー◯ッツのキャラクターや、
サ◯リオのキャラクターなどをデザインとして使用出来た!
ガテン系とは真逆のイメージとあえて扱う事で、
癒しに繋がると思った流人、対照的な少女に喜ばれるデザインを次々と提案し、
黒や茶、グレー系の他に暖色系の色を基礎生地として採用する。
キャラクター使用料が掛かる為少々高額になってしまった!
「え! こんなに高いの?」
「はい、 上質な生地を使用しておりますので・・・」
「キャラクター使用料で高い訳じゃないんだ?」
「はい、使用料5%ですので・・・」
スウェット上下のセットアップが16万円と驚く値段!!
流石にこれでは流人が納得しないと思う眷属達が代案を提示した。
上下を別々に販売する、
フード付きやフード無しを選択出来る様にする。
パンツもロングやショートパンツと何種類か用意して、
顧客其々の選択肢で購入していただく事で
10万円〜24万円程度の選択肢が広がると眷属達が説く。
「それでも10万円ですか?」
「はい、 短パンとトレーナーのセットだとそのくらいかと・・・」
スウェットと言う大衆着は安価な商品が多数販売されている為、
価格で競争は出来ないしする気もない。
品質で評価を受けご愛用頂いているのだから、
スウェットと言っても品質には拘りたいと眷属達が説く、
「それは私も同意します。」
「ありがとうございます。」
次に眷属が海外有名ブランドのスウェットを幾つか紹介する、
どれも繊細なデザインと斬新なカラーで有名ブランドと一目で判断出来る!
「え! 28万円!!(汗)」
「こちらは46万円にございます。」
「アル◯ーニのスウェットってそんなにするの?」
「はい、ブランドのイメージを維持する意味合いでも、
この値段は妥当と思います。」
societyRでも価格が高騰している。
流人の強い願いがあるので、安価なベーシックタイプも販売しているが、
求められる人気商品は高価格帯の商品が3割を占めていた。
数千円で購入出来るベーシックタイプの人気もあるが、
連日行列を作ってまで旗艦店に求めて来る顧客は、
限定品や高額商品を求めてここまで足を運んでいた。
ベーシックな商品でも他社に比べれば圧倒的に違いが分かるレベル、
それでも高額品に比べれば更に違いが分かるので消費者達も納得して求めて来る。
シルクの様な超極細繊維にカシミヤの様な温かみのある感触、
それでいてスポンジの様な吸収力に何度も洗濯しても安心する丈夫さ、
流人は1年程度使用出来ればと考えているが、
実際には数年使っているユーザーも多い。
流石によれて来ているが使って実感出来る丈夫さに、
価格の高さなどコストパフォーマンスを考えれば納得していた。
説明を受けて眷属達に問う
「あなた達は、この商品の価値をいくらで売りたいのでしょうかね?」
「・・・」
「遠慮はいりませんよ?」
「恐れながら申し上げます・・・・」
他社に比較するなら40〜50万でも恥じない商品と思う
けど、大勢のお客様に使って頂きたいと思う気持ちが、
20万円前後と考えていると伝える。
「20万ですか・・・売れますかね?」
「おそらく・・・即完売かと・・・」
「20万ですよ?」
「我々も欲しいと思いますので・・・♪♪」
「珍しいですね(笑)」
僕達魔属からの要望で制作を始めたスウェットだったが、
完全に少女好みのデザインに変更した事で精霊達眷属も欲しいそうだ♪
流人は価格の全てを今後眷属達に任せ一任する事で、
自分の価値観と世間の価値観の隔たりを避ける事とした。
「ちなみに、もう直ぐ発売する甚平はいくらなんですか?」
「前回は5万円程度にございましたが、今回は14万円にございます。」
「14万!」
「はい♪ 生地を高級な繊維に変更いたしましたので、
軽く丈夫で吸水性と発汗性に優れ、
モニターのアンケートでもこの値段なら検討するとの意見が多かったので」
サロンの顧客を対象にランダムでアンケートを取り試作品を体験して頂き
その感想をアンケートで答えて頂き参考にしていた眷属達、
サロン内の移動着としてお客様に甚平を着て頂くのだが、
購入希望者が多い事と、
購入するならどの様な物が欲しいのか要望も受け付けていた。
精霊とは自己中心的我がままな気まぐれ者と認識していた流人、
大精霊女王の眷属だがこの世界で人と接し感情が変わったのか?
接客や開発にここまで興味を抱いているとは予想外で嬉しい流人。
年々規模が大きくなって扱う品種も増え、
流人を中心として動くには大き過ぎると流人自身も自覚していたが、
メイク用化粧品類は大手に任せて監修と言う立ち位置になり、
その他の雑貨類も大手を模索している中、
眷属の意欲を知りこれまで以上に任せる事が出来ると安堵していた。
ティナを筆頭として、各部門に分けて各々を眷属に委ねる、
そうする事で眷属達に活躍の場を与えて、
さらに興味を持って接して頂きたいと流人は考えた。
初心に戻り流人自身が欲する物だけに関わり、
それ以外は眷属達に任せて存続と拡大を委ねる事とした。
代表のティナは面倒事が増えると心配していたが、
眷属達の様子が直接伝わって来るので、
最終確認として流人が見極める事で容認、人事を変えていた。
決定してからの眷属達の動きは早かった、
色々やりたい事があったのだろう、スポーツメーカーとのコラボ、
流人はN◯◯Eが好みだが、
若者達の中ではもう少し安価なメーカーに人気がある。
街中を歩くだけなので高機能より安定感と使い回し度、
2〜3万するコラボシューズより、
2万円以下のシューズの方が履き回しがしやすい。
勿論企業としての体質は流人以上に気にする、
そこは流石精霊だけあって人を見極める感覚は鋭い!
今まで通り、societyRのブランドは流人の希望を中心とし、
眷属達の発案や試作商品などはぐんまっこ と言うマークがタグに付与された!
同じブランドだけど、更に若者向けの商品として認識して頂ける様に
追加付与しただけなのだがこれが高評価を受ける!
旗艦店での販売の他に群◯県内でも販売している為、
若者達が分散して求めやすくなった。
神◯川県内のショップにもと強い要望があり、
ぐんまっこ マークが一気に浸透し受け入れられ、
Tシャツの模様にまでなっていた!
「かながわっことか要望はないのでしょうかね?」
「あの県の若者は地元名にそれ程関心は無い様です。」
「そうなんだ・・・」
音楽祭の件を思えば地元愛が強いと思うがこの県民は少し違う様だ、
余裕があると言うか? 平和的?と言うか、
他県の良いモノは直ぐに受け入れる県民性なので、
首都で無くても構わない、
有名テーマパークが東京だろうが千葉だろうが関係ない。
いいモノ、お洒落なモノはそれが第一で、
それがどこに発祥だとか気にしないらしい・・・けんちん汁もね(汗)
ただ、他県から馬鹿にされたり揶揄されれば、
県民全員で相手になる団結力がある・・・横◯◯民は別かな(汗)
なので、都内の企業プロジェクトRが鎌倉や湘南を贔屓にしていても
歓迎する余裕があり、好意的に協力して頂いていた。
Salon of sister'sの運営でも変化があった!
既にエステ料金が1万ドルを超える、高額サービスを行なっているが、
それでも客足が鈍らず予約が埋まっている。
その原因として、Salon of sister's独自の社交場が設けられて、
その社交場に入会する事がステータスと変わっている。
お陰で、
総合学園のプロスポーツ選手との交流などのサポートも、人脈も
会員の中から、もしくは会員の身内などから協力を願っている。
米国内に品位のある社交界は幾つか存在しているが、
富裕層の女性達にとって、神の影響下で行われる社交界は、
歴史の浅い、王族のいない米国では憧れの最上位societyと位置付けられていた。
ゴードングループの関与もあるが、
流人を中心として巨大な力が集結し始めている、
あの時の流人の悲しい感情を埋める為に、二度と・・・。




