第三百八十四話 バレンタイン商戦
如月に入るとテレビCMや情報番組は、
14日のバレンタインに向けての情報宣伝活動が盛んになる。
今年は平日木曜日、会社などでの義理チョコなども期待出来、
菓子メーカーも奮闘していた・・・
まさみを降板した企業は、他事務所の若手と奈々ちゃんを起用し、
あくまでイメージの見解の違いであって、societyへの敵対行為では無い事を
奈々ちゃんを採用する事で姿勢を見せていたが流人には伝わっていない。
市場調査では本命チョコの1個辺りの平均価格は1,000〜1,500円と、
大手メーカーならその範囲内で勝負するのだけど、
流人が◯◯にお願いした本命用チョコは2,000円!
5粒なので1粒辺り400円と◯◯製菓としてはかなりの高額商品なのだ!
◯◯製菓がバレンタイン限定商品として特別に製造した本当の限定品、
今回の商品に関しては全てを流人が仕切っている為従うしか無い◯◯製菓、
流人からの指示は品質と量、
流人が納得した品質で出来るだけ増産して欲しいとの願いに、
◯◯製菓は過去最多の量を用意した。
「頑張って頂いた様でありがとうございます。」
「あのぉ・・・大丈夫でしょうか?」
「(笑) 残ったら全部買い取りますからご安心ください♪」
「そう言う問題では・・・(汗)」
30万個の商品が搬入される予定、それをどの様に販売するのか?
気になる◯◯の担当者、自社の商品の行方が気になり不安だった。
全部買い取ると言われても、
各部門の社員が一丸となって作った自社最高級の商品、
出来るだけ大勢の人達に美味しさを伝えたい思いが流人の行動に戸惑う。
「連絡出来ましたか?」
モデルや女優に協力を求めるより、
実際の対象者に協力を求めた方が反応が正確で対応しやすい。
十代後半から二十代後半までの一般女性、
societyRのサロン登録者から発信力のあるメンバーに連絡し協力を願っていた。
◯◯製菓の企業アーカイブを視聴して頂き、
CMのオフ映像や、限定のチョコレートの製造過程などを視聴して頂き、
世代別の感想や購買欲を尋ねて販売に応用したい。
「◯◯って、あの◯◯チョコレートよね?」
「子供の頃から食べてたメーカーだよね? そこの?」
「自社製品市場最高級品だって♪ 彼氏にもったいなくない?(笑)」
「でも2,000円だよ♪ 海外ブランドに比べれば安いよね♪」
「・・・自分へのご褒美チョコってありでしょうかね?」
「「「ご褒美チョコ?」」」
一年で一番活気があるチョコレート商戦のこの時期、
各社が色々なチョコを販売している、
見た目も味も一年で一番種類があるこの時期に自分用のチョコは買わないのか?
流人が尋ねると少数だがチョコレート好きの女子の間では、
この時期に自分用に買い貯めする女子もいると言う。
「どうでしょうか? 今回の限定チョコは?」
試食用に外側のブラウンチョコを試して貰うと反応が変わる!!
「美味しい♪♪」
「え! ◯◯だよね? なにこれ凄い♪♪」
「もはや私達が知っている◯◯じゃない(笑)」
「期間限定で、年に一度の感謝の日ですからね(笑)」
「「「◯◯から感謝の気持ち♪ (笑)」」」
その日の内にもう一度撮影を願いスタッフを集める!
深夜3時過ぎ、まさみが連ドラの撮影から到着した。
◯◯製菓の担当も参加しているので緊張しているまさみに流人が説明する、
「もう1本、CMを作りたいと思いました。それとポスターね♪♪」
「作りたいって・・・あと2週間だよ?」
「正確には13日です、 みなさん宜しくお願いします。」
「「「お願いします。」」」
一人だけ取り残されている感じのまさみ、
相変わらず説明をしてくれない流人に戸惑うが素直に従っている。
「まさみ、取り敢えずそこら辺を走って疲れて来て♪」
「走って? 十分疲れているんですけど(怒)」
「お願いします(笑)」
前回と同じセットを組むスタッフ、準備が整うと流人がまさみに指示を出す!
その通りに従い演じるまさみ・・・
「OK♪♪」
「もういいの?」
「完璧でしょう(笑)」
疲れた様子で部屋に帰って来たまさみが、
そのままリビングに置いてあるチョコを1つ頬張る♪♪
「今日も1日ご苦労様♪♪」
「自分へのご褒美に◯◯チョコレート♪♪」
「どうでしょうか?」
「・・・はい! 最高です♪」
担当の社員も驚いていた、
前回のCM撮影も短かったが今回は始まって1時間も経っていない!
ぶっつけ本番で完璧な演技をするまさみも凄いが、
こんな撮影を要求する流人に呆れ驚いていたが確信していた。
「これは受け入れられる!」と・・・
「流人! 広告用のポスターの撮影は?」
「さっき撮ったでしょう(笑)」
撮影中にポスター用の撮影も同時進行で行っていたので、
まさみがスタジオ入りして僅か2時間程度で終了した。
「お疲れ様♪ 早く帰って明日のドラマ撮影に向けて
とっとと帰って寝てください(笑)」
「・・・酷い(笑)」
「お疲れさん(笑)」
疲れて怒る気力も無くなり流人の塩対応が面白くさえ思えて来たまさみ、
明日も朝から撮影があるので早々に自宅へと戻る・・・
数時間後、再びマネージャーに起こされてドラマの撮影現場へ向かう、
途中societyRの旗艦店の前を通るとマネージャーの声が!
「まさみ! 窓!」
何事かと車の窓から外を見るまさみ!!
「え!」
数時間前に撮影した・・・そのポスターが旗艦店の壁に大きく貼られている!
あの後自分は直ぐに帰宅したが残ったスタッフ達は徹夜で作業を続け、
その結果が目の前に!
開店前でも人の列が出来ている旗艦店、
列に並ぶ人達が◯◯製菓のポスターを見ている!
「頑張った自分へのご褒美に・・・◯◯チョコレート♪」と、
書かれた自分のポスター、縦5m横3mの巨大なポスターを
開店を待つ人達の頭上に貼られていた。
自分が休んでいる間も休まず結果を出している人がいる、
そう思うと気が引き締まる感じがしたまさみだった。
バレンタイン商戦に、
新しい購買層を見出した事で大至急上部へ報告したい担当者、
重役達が本社に出社すると早々に報告をするべく会議室へ
熱い思いを伝える担当に、少し冷静な役員達、
「まさか数時間前とはね・・・
私も出社する時にハイヤーの窓から巨大なポスターを見たんだけどね」
「societyRの旗艦店ですか、 私もあそこの前を通ったんですがね、
開店前の行列客が全員、あのポスターを見上げてましたよ(笑)」
「頑張った自分へのご褒美に、◯◯チョコレート♪
ナイスな広告だと思うよ(笑)」
「例年の8倍の量だからね、 少し心配してたんだけど大丈夫そうだね(笑)」
「「「(笑)」」」
役員達が今年のバレンタイン商戦の勝算を目論んでいたが担当から苦言が・・・
「恐れながら申し上げます。」
「なんだね?」
「まさか、プロジェクトRの至宝に粗相でもしたんじゃないだろうね?」
「あの男には重々注意する様にって言ったよね君?」
機嫌を損ねる様な事は無かったと思うと伝えた担当、
然し流人から満足という感情や表現、言葉が無かった事を伝える。
「どういう事だ?」
「これ以上何が不満なのだ?」
「恐れながら・・・」 再び担当が説く、
憶測の域でしかないが、流人からは再三生産量を聞かれていた事、
そして、社を掛けて対応すると応えた結果が30万個という数だった事。
「例年の8倍だぞ! 何が不満なのだ?」
「至宝様はご存知になられないかと・・・」
「「「・・・(汗)」」」
国内大手の菓子メーカー、その会社の生産力が早急とは言え、
この程度なのかと思われている気配を感じたと担当が重役達に説いた。
「8倍だぞ?(汗)」
「ですが、現状それ以上でも完売する気が致します。」
「・・・」
「確かに、量を求めていたな・・・」
「余剰を出した時は責任を持って買い取るとまで申し出てたな・・・」
「その結果が・・・30万個かぁ」
「我が社の実力とはその程度だったのか?」
「「「・・・(汗)」」」
社員の中に、役員の中に、どこか不安と流人への信用が欠けていた気が
各々の心に反省と後悔の念を爆ぜさせる。
「儂は・・・社運を掛けても期待に添うと申し出たのになぁ・・・」
「もう少し・・・」
「対応策は何かないのか?」
今からどう頑張っても生産量は増えない、
それなら別の方法と頭を各自が必死に使うが妙案は浮かんでこなかった。
そして・・・役員会議で出た最終案が14日の早朝、
全国紙全ての新聞で・・・
「誠心誠意、生産に努めましたが、みなさまのご期待に添う数がご用意出来ません
日頃ご愛用いただいておりますみなさまにお詫びを申し上げます。
◯◯製菓一同。」
バレンタイン商戦当日に、当日の朝に全国紙の一面で謝罪した◯◯製菓、
その記事は朝の番組で取り上げられ、◯◯の限定チョコレートは希少性を増し、
求める人達が膨れ上がった!
「当日の朝に火に油を注ぎますかね♪♪(笑)」
「全て流人の思惑通りなのだろう?」
「計算尽くで◯◯製菓の担当に接しておったもんなぁ」
「まぁ〜これで来年も勝算は続くであろうの(笑)」
「当然ですよ♪♪」
チョコレートが大好きですが、
例年この時期は、なんとなく買いに行けないのは私だけでしょうか?




