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第三十一話 賃金対価と報酬

 設備の確認と説明を一通り受け、今までに得た経験を元に、

足りない物や改良した方がいい物などを、対話する事で時間が過ぎて行く。


 特に飼い葉や飼料については、互いに真があり熱が籠もっていた。

 「少し休憩しませんか?」

「!そうだな、少し熱くなってたか?」

「確かにな、餌は肉質の基本だからな」

「其々の秘伝みたいな物があるからなぁ」


 「如何でしょう、先に住居を見に行きませんか?」

「近いのか?」

「構わんが?」

「俺は此処に住んでも構わんぞ!」

「確かに、此処でもいいな」

 「奥さん達は困りますよ?」


 着替えて一旦外へ出る、

ドームに夢中になっていて、

隣接していた10階建の住居施設に気が付かなかった3家族、

周囲に馴染む艶消しモスグリーンの煉瓦調の外装に、

黒の補強材が重厚さと安心感を漂わせていた。

「彼処に住むのか?」

「ホテルみたいだな?」

「マンションだよな?」


「流石に一戸建てを提供するのは難しいので、ご了承下さい。」

 黒天が陳謝していた。

 「まぁ〜中を見てから判断しませんか?」

「流石、東◯都だよな。」

「マンション生活か、生まれて初めてだな。」

「俺だって同じだ、平屋生まれの二階屋育ちだからな。」


 両サイドに店舗用のフロアが空室になっていて、

中央を進むと居住者専用の入り口があり、

中にはフロントが有り、コンシェルジュが待機していた。


「ホテルだよな?」

「・・・。」

「最近のマンションはこうなのか?」


 配達物を預かったり、多種の予約や手配も代行してくれると説明を受けると、

「儂等には・・・。」

「儂等で・・・。」

「いいのか?本当に・・・いいのか?」


 エレベーターで8階へ上がる、8階は5部屋有り、

802号室、長谷川。 803号室、黒田。 804号室、西川。

其々の名前が表札に入っていた。

「お隣さんになるんだな。」

「その様だな。」

「宜しくな」

 同業だしこれから一緒に協力をして行く為にも、

家族での交友も必要と考慮した答えと説明を受け納得していた。


 間取りは同じになっておりますので此方へどうぞ、

ガイドの僕が、カードキーで801号室の扉お開け中へ招き入れる。

「「「えぇ!」」」 中へ入るなり悲鳴が聞こえた!


 4LLDK、180㎡の部屋で、

広めで、大理石床暖冷房完備のメインリビングと、

落ち着く畳部屋に、掘り炬燵が常設してあるセカンドリビング、

 

 調理も清掃も簡単楽ちんな対面キッチンに、

ダイニングテーブルとの調和が取れていた。


 4つの部屋は、メインベットルームと、2つのフリールーム、

来客用の客室が有り、家具が整っていない為に広さを感じる。


 「家具が無いですね?」

「はい住居者と相談致しまして、要望に添いたいと考えております。」


「ちょっと待て!こんなに広いのか?」

「儂等、牛を育てるんだよな?」

「待遇が良過ぎだろう?」


 3家族は其々同じ条件を求めたので待遇条件も同じ、

10年契約の年収1,000万円税抜きを基本として、

 オプションから、

現金は年500万円、その他に住宅待遇が月々15万円の年180万円、

その他に光熱費やケーブルテレビや通信費など月々5万円の年60万円、

その他のサポートサービス費用が年額500万円程度を会社が負担する。

サーポートサービスとは医療施設や税務処理、法律相談なども利用出来る。


「15万で住めるのか?」

「東◯都だよな?」

「都心からは離れているみたいだが・・・。」


 自社所有の社宅なのでこの負担額で適正である事を説明したが、

中々納得してくれなかった。


「研修生達も同じ待遇なのか?」

「所得契約が違いますので同じでは御座いませんが、

 環境的には同じと考えております。」


 隣に建っている独身寮には、ワンルームタイプだが、300室設置して有り

朝と夕の2食と、光熱費、通信費などの待遇、

サポートサービスにも対応していると説明し納得していた。


「飯付きかぁ」

「そうかぁ」

「恵まれているなぁ」

 基本、生産した家畜は全て自社で買い上げる為、

研修生達が肉を購入するには壁がある為、

寮の食堂で、自分達の生産物を味わって確認をして欲しいと説明した。


「研究生は今何人居るんだ?」

「人に教えなどした事ないからなぁ」

「儂等3人で対応出来る人数だといいんだが?」


 来年飼育を開始する予定だが、初年度なので手探りも多いと予想して

研修生は60名と考えているが、将来的には300名を迎えたい。

「ひとり20名かぁ〜」

「そう考えると大変だな?」

「それに見合う以上の待遇を受けちまってるかなぁ、頑張らんとなぁ」


 授業や講習を行うのではなく、あくまで畜産する姿勢を見せて頂き、

質疑に出来るだけ答えて頂き、互いが慣れるまでは、

信頼を積み重ねる事を重視したい考えを黒天や紅丸が丁寧に説明していた。


 「奥様方、何か問題でも御座いましたか?」

 3人の奥方が揃って何やら相談している事に気にした流人が問う。


「買い物は、何処に行くと良いのでしょうか?」

 代表して問うてきたのは長谷川奥さん、初枝さんだった。


 「うん?どうなの?」

 近隣の大型スーパーや量販店には徒歩だと30分以上、

一番近い商店街でも徒歩で10分以上は掛かるので、送迎車を手配している。


「買い物に一々送り迎えして頂くんですか?」


 サポートサービスの一端で費用は当社が負担するので、

気兼ね無く利用して欲しいと説明した上で、

必要なら代理人が、代わりに買い物を引き受ける事も出来ると説明した。


 「テナントは何が入るの?」

「コンビニと診療所ですが、

開業は来年の3月を目標にして調整中にございます。」

 「大手スーパーは無理だった?」

「はい、利用者が少ないのでコンビニが限界でした。」

 「独身寮の食料などは?」

「はい、毎日送迎車を使います。」

 「車の支給は無理かな?」

「事故が発生した場合の責任問題が御座いますので、

支給は大変難しいとの事に御座います。」

 「持ち込みは問題ない?」

「はい、それは自己の管理と責任でございますので、

運転や車、バイクが趣味と言う単身者も御座いますので、

本人の了承を頂ければ問題はございません。」


 「初めての場所、道ですから、暫くは送迎者を使って頂けませんか?

 落ち着いたらご自分で運転なされても宜しいと思います。」


「その様ですね。」

「知らない道は大変ですしね。」

「交通量も多そうですしね。」


 コンシェルジュに相談すると、

希望の商品を取り寄せる事も可能だし、近所のお店なども紹介出来るので、

気軽に声かけて頂きたいと僕が奥方達に説明した。


 その他にも、この棟には獣医師家族が2組、診療所勤務の家族が3組、

コンビニ従業員家庭が2組など全部で20組の家庭が入っている事も説明した。


 「兎に角、挑戦は大歓迎ですが、事故は出来るだけ避けて下さい、

 貴重な人材を失う事が一番の大損失だと理解して欲しい。」


 流人の言葉にこの待遇の意味を少し理解した3家族だった。



 部屋の内装や家具の好みを相談している奥方勢、

飼料の事で再熱し出した男達を楽しそうに静観している流人、

「流人様、そろそろお時間でございます。」

 「私だけ?」


 今夜はゲスト用の宿泊所に泊まり、明日からは個別の要望や改善を進める為、

僕達で十分なので、紅丸だけを残して流人達は、都内に戻る事になっていた。


 「邉さん達も帰るの?」

「あぁ、俺達は流人専属だからな、明日の運転は他の者が代わりに担当する。」

 「私が居なくても昼飯くらい奢りますよ。」

「ありがとうよ、美味かったもんなぁ〜。」


「で、流人は今夜も何処かに出掛けるのか?」

 「暫く夜の交流は行わないので、休んで下さって大丈夫ですよ。」

「そうなのか?」

 「はい、必要な情報は、得る事が出来ましたので、十分です。」

「情報かぁ・・・なるほどなぁ」

 「師走迄に欲しい情報があったので、皆さんにお願いしていました。」


「流人様、師走と申しますと・・・。」

 「うん、今年は3倍の量を調達して下さい、

 それと公安の方にも差し入れお願いね。」

「承知致しました。」


「おい!おい!差し入れって、不味いだろ?」

 「個人なら問題になりそうだけど、担当者全員なら問題にしないでしょう?」


「金品は止めてくれ!」

 「年末ですから・・・鰻重とか?(笑)」

「鰻重かぁ・・・喜ぶだろうなぁ」

「先輩、他の部署から反感買いますよ!」

「だよなぁ〜・・・身内を敵にすると怖いからなぁ」

「御隠居様の御意向で、注目浴びてますからね、うちらは・・・。」


 「其れだったら、保存食とかは?日保ちしますし、

 お裾分けも出来るから宜しいのではないでしょうか?」


「保存食かぁ・・・カップ麺とか嬉しいなぁ」

 「じゃぁカップ麺を差し入れしましょう。」

「最初に言うけど、俺が望んだ事だと問題になるんだよ。」

 「分かってます、あくまで個人の意見を参考にしただけです。」


「流人様、如何程差し入れましょうか?」

 「確か、出資した企業に何社かカップ麺作ってたよね?」

「はい、2社ほど御座います。」

 「其処に試作協力と言う形でカップ麺を送って貰って、

 費用はウチが出すからってね。♪」

「なるほど、後はお任せ下さい。」

 「お願いね黒天。」


 大手企業から労をねぎらうとして、大量のカップ麺が公安警察に贈られた。

勿論、流人達の事は一部しか知られていない。



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