第三百七話 着物と格闘する女優
彼女の部屋で一夜を過ごした流人、
彼女を大切に思うからこそ一線を越えず順序を重じていた流人、
風呂上りの彼女は魅力的で反則級だった為、魔法で眠らせベットへ連れて行き、
朝まで午後ティーを飲みながら今後の事を考えていた・・・。
「流石に急展開ですよ?」
「まぁ流人の当初の予定よりは3年早いのぉ」
「然し結果的にはよかったのではないか?」
「そうだぞ! あと3年彼女が同じ思いとは限らんであろう?」
「そうですけど・・・」
「然し、今年は大変だと言うのにのぉ(笑)」
「まったく、選挙に改革に放送局に島の開発だぞ(笑)」
「まぁなんとかなるであろう(笑)」
「そうですね・・・」
歩き疲れていたのか?
朝方までぐっすり寝ていた彼女が目覚めてリビングに駆け寄って来た!
「おはよう♪ 朝から忙しない起き方ですね♪♪」
「流人・・・私?」
「疲れたんでしょう? 中々よい寝顔でしたけどね(笑)」
顔を真っ赤にしながらテーブルの上にある午後ティーを見つける!
「それ?」
「暇だったのでね、コンビニに行って来ました♪」
彼女が起きてから帰ろうと考えていたのでようやく帰れると思っていた流人
然し彼女が流人を返さなかった!
「じゃぁ〜携帯番号?」
「携帯・・・持ってません。」
「嘘!」
「本当ですって!」
流人が自分の身体を摩って何もない事を証明する
「じゃぁ〜自宅の番号は?」
「それだったら・・・」
「如何したの?」
「番号・・・知らないです。」
「え!」
「だって自分でかける事ないでしょう?」
「そうだけど」
少しキレ掛った流人、つい勢いで失言をしてしまった!
「分かりました、 じゃぁ〜一緒に行きましょう」
「一緒に? いいの?」
「かまいません、その覚悟があるのでしょう?」
「うん!」
「なら一緒に行きましょう♪♪」
三賢者が脳内で止めるが不眠で暴走していた流人だった。
彼女にシャワーを借り、お湯を浴びて頭を冷やす、
冷静に戻った流人は最大の失態を反省しながら凹んでいた・・・
「彼女は付いて行く気だぞ!」
「あそこまで追い込んだら彼女も付いてくるだろう?」
「如何するのじゃ! 皇室との謁見じゃぞ?」
「分かってます・・・」
浴槽から出るとチャイムが鳴る
「誰だろう?」
「あぁ〜 私の知り合いです。」
「知り合い?」
彼女がドアを開けるとクロウが服を持参して立っていた
「確かクロウさん?」
「これを流人様にお渡しください。」
服を渡しクロウが去って行く
「これ・・・」
「あ! 今日の衣装ですね、
もう一度聞きますけど本当に付いて来るんですか?」
「さっき・・・いいって言ったじゃん・・・」
「言いましたよ、付いて来るんですね?」
「はい。」
「それじゃ、私はこの格好なので、寄せた衣装を着てください。」
「寄せた衣装・・・」
羽織袴の流人の格好に芸能人とは言っても
19の小娘が寄せた衣装など持ち合わせている筈もなく・・・
洋服の数はあっても、とても礼服としては使えない、
使えそうな服と言うと・・・
「制服?」
「それ学校で着ていた制服(汗)」
「学生服って一応・・・」
「やだぁ!」
「自分で付いて来るって言ったんですよ?」
「・・・」
彼女の仕草が可愛く思え段々と意地悪な感情が芽生えている流人に、
クロウから念話で彼女の服を用意したと伝わって来た。
「まさみさん、服が届いた様ですよ(笑)」
「え!」
「ピンポ〜ン♪」
流人とお揃いの着物が一式揃っていた!
「それじゃぁそれに着替えてください。」
「・・・無理。」
「?」
「和服なんて自分で来た事ないよ」
「あぁ〜・・・」
「まずは足袋を履いてください。」
「足袋からなの?」
「着物を着ると動けなくなりますからね♪」
「そしてこの肌着を着てください。」
「下着は・・・はい。」
「やはり細いですね、タオルありますかね?」
「浴室に・・・」
「このタオルをウエストと胸回りに巻いて」
「流人って着付けの経験あるの?」
「何人かはありますよ♪」
「そうなんだ・・・」
「寒いですから長襦袢も着て置きましょうかね?」
「これ?」
「襟元は確りと折り込みましょう」
「伊達締めを締めてください」
「こう?」
「はい、そうしたら襟抜きをしますので・・・」
流人が長襦袢の襟を後ろに引っ張る!
「ぐぅ!」
「(笑) 笑わさないでください(笑)」
「真剣です(怒)」
「そしたらいよいよ着物を着るのですが、色々作法や着付けの仕方が違うので
あまり参考にはしないでください。」
「大丈夫なんだよね?」
「安心して大丈夫です♪」
「着物を着て後ろから羽織ってください」
「後ろから・・・」
「そして着付ける前に、こことここを抑えて動かない様にしてから
中の伊達締めを解いて抜き取ります。」
「あ!」
「緩んでませんよね?」
「大丈夫です。」
「そしたら襟を合わせて裾線を決めて、ここで摘んで調節して・・・」
「長さの決まりってあるの?」
「個人の趣向? 流行りとかもあるみたいですけどね♪」
「そうなんだ」
「摘んだ着物を整えて、中心線を作って織り込む」
「大丈夫かな?」
「ここで仮止めします、先ほどの伊達締めをもう一度ここでね♪」
「あ!そう言う事」
「ここで帯を結ぶのですが普通に結んではつまらないので、
下品にならずに艶やかに、蝶文庫をちょっとだけアレンジして・・・」
花結びの様に上にもボリュームを持たせて
まさみの身体のバランスに合わせ大きく見せた
「あとは伊達締めの紐をここから抜く・・・完成♪」
鏡で確認しに行く姿は中々の優美な姿だった。
「如何でしょうか?」
「凄い♪ 可愛い♪♪」
「自画自賛ですか(笑)」
「違う! 着物がです!」
「よかったら成人式の時も着付けましょうか(笑)」
「本当?♪♪」
「・・・お望みであれば(笑)」
冗談で言ったつもりが本気にされてしまいました。
流人も着替えて着物の色は違うがお揃いの亥模様が目立っていた!
「それじゃ、出掛けましょうかね」
「タクシー呼ぶの?」
「下で待っていると思いますよ(笑)」
「え!」
準備を整え鍵を締めて部屋を出てマンションの入り口へ向かうと
邉さんが迎えに来ていた。
「流人? その子は?」
「一緒に連れて行きます」
「一緒にって・・・」
「何処までも付いて行くそうです。」
「付いて行きます」
呆れている渡邉を放って置いてさっさと車内に乗り込む流人、
助手席には陣さんが座っていた!
「おはよう流人君」
「おはようございます。」
「これ、預かり物だよ」
「ありがとう♪」
中を確認すると、新作の反物と風呂敷、そしてお酒が入っていた。
「新酒のは分かりますが、無礼ではないんですかね?」
「大丈夫だと思うぞ、御隠居も確認している様だし」
「それなら大丈夫ですね♪ 出してください」
車が走り出し、御隠居様が滞在しているホテルへ向かう
「それより流人・・・その子?」
「問題でも?」
「いや・・・」
聞きたい事は多々あるのだと思う、
だけど流人の機嫌がそれほどよろしくないので深入りは避けていた・・・
いつもの様にホテルの貴賓室で御隠居様に挨拶をする流人だが、
御隠居様の視線は彼女に行ったきりで質問も何もない。
「御隠居様?」
「なんだい?」
「こちら、新作の反物と風呂敷です。」
「反物、この子の柄と同じかい?」
「いえ、雪化粧に蕗の薹にございますので、落ち着いた柄になっております。」
「そうかい、この子の干支も中々いいけどね?」
「御所望でしたら取り寄せますが?」
「いやいいよ・・・それじゃぁ行こうかね。」
車に乗り込むと何故か御隠居様も乗り込んで来た!
「御隠居様」
「もう一人くらい乗れるだろ?」
「それは・・・」
「渡邉、早くお出し!」
「はい」
流人達の車の後を御隠居様の車が追って皇居へ向かう
車内でようやく御隠居様が口を開いた、
「よく分からない子だね」
「そうでしょうか?」
「あ! 失礼しました私・・・」
「永沢まさみさんだろ? 知っているよ!」
「やっぱり!」
「運転に集中しな!」
「すみません。」
「(笑)」
「この子は何者だい?」
「未成年の女優さんですが?」
「そうじゃなくて・・・まぁいいよ」
「?」
彼女からなにか感じ取っていた様子だけど、
それは彼女も承知していない事だと思い流人は言葉を濁していた。
「え!ここって・・・」
「なんだい皇居は初めてかい?」
「皇居! やぱり?」
「付いて来ますって言ったのはあなたですからね(笑)」
「・・・」
「やっぱり流人、揶揄ってたね?」
「揶揄っていませんよ、
付き合うなら最高の立会人の前で宣言しようと思いましてね♪♪」
「この子は承知しているのかい?」
「何度も問いました、決意は変わらないそうですよ(笑)」
「本当に・・・怖い子だね」
「流人って皇族なの?」
「違いますよ(笑) 如何考えればそうなるんですか?」
「だって・・・(汗)」




