第二百九十五話 女の本性
宴の為の準備をしながらテレビを見ている流人、
去年の失態を繰り返さない為にも明菜のニュースは目に入れている。
紅白初出場の新人達が揃って会見を行うと言うので、
テレビを見ながら、酒や肴の調達状況を確認していた・・・
大勢のアイドルが前列に並び、
明菜は後方隅で大人しくしている姿が映されたが、
二度目の経験なのだから、心配はないと思っている流人だった。
表面的には笑顔で受け答えをしているアイドルグループのメンバー
アイドルらしい笑顔で初々しい・・・
「みなさん、偽り笑顔が上手ですね、明菜も見習わないとね(笑)」
放送時間の大半をアイドルグループのインタビューが占めて、
終了間際の他の新人達に一言ずつコメントを求め終了した。
「背水の陣ですか(笑) 楽しみですね♪」
司会者もキョトンとして明菜の発言の意味を理解出来ていない様子、
時間も限られて深く問う事も出来ずに番組は終了した。
「あの子、 本当は凄い子なんではないでしょうかね?」
「なんじゃ気がつかんのか?」
「凄いどころか、とんでもないぞ! 流石は流人の眷属じゃな(笑)」
「そうよなぁ、 たった1年で人の域を軽く超えておるからのぉ(笑)」
初選出の新人達の中とは言え、ずば抜けた雰囲気を感じる明菜に
気付かぬ飼い犬達の群と言った雰囲気だった。
プロとしての姿勢と、
お遊び感覚のアイドルでは当然な事と思いながらテレビを消して、
クリスマスに向けてお願いしていた物の状況を確認に職人組のエリアへ向かう。
今年からクリスマスツリーを、
societyR本館と、プロジェクトRの別館に飾る為に、
ツリーの飾りを職人組の切り子職人や、彫金師などにお願いしていた。
一般用の飾りと匠ブランドの刻印をある最高級品、
本館には一般用の装飾品で飾り付けを行い、
別館に設置するツリーは、
プロジェクトRとして誇りと基点の象徴として大きいツリーを考えていた。
カラフルなクリスタルを様々な形に加工して、
一つ一つにカットなどの模様を施し美しい輝きを発している・・・
「・・・これって、付与付きですか?」
「はい♪」
加工する職人のほとんどは人間だったり僕達魔属が多いが、
検品を担当する眷属は光属で、
一つ一つ出来を確認して合格した物に、安らぎと祝福の付与を施していた!
「霊力! 保たないでしょう?」
「ご心配いりません、数ヶ月で消える程度の極少量の付与にございますから」
「それにしても・・・」
匠ブランドの商品全てに付与を施している眷属、
ただ、楽しそうに自然と付与を与えていた
「極美品のみに付与を与えておりますので(笑) 眷属も楽しんでおります。」
「残念♪ ここに傷があるから匠ブランドとしては不合格(笑)」
「美しい♪ あなたは合格♪♪ はい付与を与えましょう(笑)♪♪」
「はい♪ あなたも合格ですね♪♪ 付与を与えましょう♪♪」
精霊達は基本美しい物が好きなので、
ツリーの装飾品に囲まれて幸せそうに検品の作業をこなしていた。
「・・・。」
「(笑)」
匠ブランドの装飾品は大体一つが3〜10万円程度と、
高級クリスタルブランドとしては普通の価格なのだが、付与付きと言う事で
流人も価格には納得していた。
手頃の価格帯で提供するsocietyRの方は、
庶民用のツリーを考慮している為、装飾品の大きさも匠より小さく、
価格も1,000〜5,000円っと低価格だったのだが・・・
「一つ1,000円ですよね?」
「はい・・・」
「ツリーの飾り付けに何個使うのでしょうかね?」
「それは・・・お好みで・・・」
本館用のツリーの大きさは3mと少々一般用より大きい、
その為小さく見えている装飾品を多数用意する必要があった。
「全部で100は必要ですかね?」
「一般の家庭でしたら、ツリーも小さく、
飾りも裏側は省くと思いますが・・・」
「なるほど・・・それでも30個は欲しいですよね?」
「そうですね(汗)」
「一番安価で30,000円ですか?」
「年々、装飾品を買い増すのが伝統と聞いておりますので・・・」
「今年は寂しいけど我慢しろと?」
「・・・」
流石に1,000円以下は原価割れする為下げられない、
上質のクリスタルを使っている以上、1,000円でもかなりの安価で、
これ以上の値下げは信用に関わる行為になり得る。
「ぼん、 りぼんや電飾で補うのは如何でしょうか?」
「りぼん?」
着物などを織る時に試し織りを行う、
その時の端切れを使い装飾しては如何かと言う。
「こんな感じでりぼんにすれば飾りとして使えましょう♪」
「なるほど♪♪」
「なんでしたら、クリスマス用に織りましょう♪♪」
「クリスマス用に?」
「はい♪♪」
商品を購入いただいたお客様へ商品の包装時に巻く紐を
特別に製作して見てはと職人が提案して来た。
「なるほど・・・時間、間に合いますかね?」
「複雑な物は出来ませぬが、クリスマスカラーや、
装飾用に何種か織るぐらいなら可能にございます。」
「直ぐにお願いします。」
「承知いたしました♪」
3mの人工の木にチューブ状のLEDの照明を巻き付け葉でチューブを隠す
無色透明の明かりがついてツリー全体を照らしていた!
「この木は販売しないのでしょうか?」
「ぼん! 流石にこれは・・・1本100万を超えるので(汗)」
一般家庭では、シーズン以外は収納する為、
折り畳めたりコンパクトに収納出来る物が好まれる為、
ツリーは他社で用意していただく考えと流人に説明していた。
「でもね、 卓上の大きさでいいので、出来ませんかね?」
「卓上・・・ですか?」
「50cmほどで、ケースに入った完成品でいいのですがね?」
「なるほど、 コレクションアイテムですかね?」
「集めなくてもいいのですけどね(笑)」
職人達が集まり緊急の会議を開いて、
流人の意見が可能か確認する・・・
「ぼん、 どうでしょうかね、匠ブランドとして限定で生産したいのですが?」
限定100セット、
宝飾を施し贅を尽くした記念モデルをケースに入れて販売し、
スイッチでLEDの電飾も点いて楽しめる様にしたいと申し出る。
「装飾ではなく宝飾ですか?」
「はい、ダイヤやエメラルドなどを使いたいと考えております。」
「かなり高額ですよね?」
「はい・・・」
「societyR用に、同様のクリスタルモデルを作っていただけませんかね?」
「それは・・・構いませんが?」
「本物を求める人は本物を、庶民でも夢を見たい人向けに・・・ね?」
「承知いたしました、500で如何でしょうか?」
「値段は?」
「・・・10万円では?」
「高くないですか?」
「クリスマスプレゼントに、自分へのご褒美としてなら如何でしょうか?」
「自分へのご褒美ですか・・・。」
子供向けの商品では無い、
独り立ちして中々クリスマスを自宅で祝う事の少ない独身向けの商品としてなら
10万円は適当だと説かれ流人も納得した。
金や白金を使いダイヤモンドやエメラルドなど、宝石を贅沢に使った匠モデル、
ステンレス製の木にクリスタルを使ったsocietyRモデル、
見た目は同じだけど輝きと付与の違いで品格と値段が段違いとななっていた。
家族向けの物と個人用の物、両方のタイプを毎年生産し、
徐々に装飾品を増やし飾りを豪華にして欲しいと願い流人に職人の一人が、
熊手の様に毎年少しずつ大きくしていく縁起物っと例え流人も納得した・・・。
「それで別館の飾り付けは誰がするのでしょうか?」
「「「・・・」」」
「私?」
「他におりますか?」
「抑々の言い出しっぺですから(笑)」
5mの人工樹に飾るイメージを一生懸命考えている流人、
最初は戸惑っていたけど次第に楽しいと思う、
更に、
クリスマスイベント限定の商品などもあると喜ばれると思い、
クリスマス用のデザインも思いつくが過去の教訓を思い出した!
「25日迄なんですよね(汗)」
「そうじゃな・・・」
「もう少し早く思いつけばなぁ・・・」
「来年のクリスマスまで待てるのかのぉ?」
流石に今から洋服などを生産したら、
出来上がりは早くてクリスマス直前か当日、とても間に合わないので諦め、
冬物としていくつか商品を増やす事にした・・・。
楽しい事を思いついた流人、
直ぐに別館用のツリーのイメージを考え僕達に伝える・・・
「沢山の色がありますが、今回はシンプルに飾り付けをいたします。」
「「「御意」」」
人工樹に大量の電飾を付けて、装飾品は赤系統のみ、
雪をイメージした白い綿と赤い装飾品がこの国の国旗、イメージに似ていた。
「これなら、色違いとか、イメージしやすいですよね?」
「確かに・・・」
「恐れながら・・・申し上げますが・・・
夜は・・・燃えている様に見えませんか?」
「確かに、言われてみれば・・・・」
「如何でしょうか、葉の色と同系の装飾品も飾って見ては?」
夜のライトアップでは人工樹の葉の色は暗く映えないので、
緑色の装飾品を混ぜて赤を引き立てて見ると先程より美しい色合いに変わっていた。
「いいですね♪♪」
「では、これを1日〜25日迄展示したします。」
「お願いしますね♪」
僕達二人で亜空間へ収納して当日に備える・・・
流人は直ぐに衣服を生産しているエリアへ向かい、
同様に赤と白のボーダーの寝間着やルームウェアを作る様に指示を出す!
「その他にもニットの帽子とかも作って欲しいですが、
全身ボーダーは絶対に止めてくださいね?」
「下をボーダーにいたしますと、目の錯覚で足が短く見えますが・・・」
「なるほど、細かいボーダーは止めましょう。」
パーカーとショートパンツの組み合わせには
もこもこのレギンスをコーディネートしたり、
同色の単色パーカーやショートパンツを用意したり、各々で選択出来る様にした。
その他にも、ソックスやブランケットも同色を生産して、
冬のボーダーシリーズとして売り出す事にした。
「寝る時の衣装ですから、
ゆったりしたサイズと同様にゆったりとした柄にしたいですね」
「そうしますと、濃い色より薄い色合いの方が宜しいかと?」
「淡い色合いならボーダーのロングパンツでも錯覚は抑えられると思います。」
「そうだね、だったらロングパンツも作りましょう♪」
「「御意」」
「クリスマス商品での出費が嵩みますね?」
「心配いらんであろう、」
「彼氏に貢がせればいいのじゃ(笑)」
「彼氏が好む衣装じゃからな、
クリスマスじゃ!銭を惜しまんだろう(笑)」
三賢者の言う通り、着心地もいいが見た目も可愛いこの衣服で、
彼氏に強請れば拒否る男はいないだろう・・・。
「彼氏って大変ですね(笑)」
「「「当然じゃ(笑)」」」




