第二百七十五話 人見知りの原石
国内の証券取引が終わる15時に東京地検がバブルドアへ家宅捜査、
特別捜査部が立ち上げられてバブルドアの偽計取引と粉飾決算の容疑で、
証券取引法違反の疑いで強制捜査の手が入り代表など数名が連行された。
「ついに動きましたね♪」
「来年の選挙に邪魔だからの♪」
「六本木も港区内だからなぁ、仕方あるまい(笑)」
「まぁ数年で出てくるだろう(笑)」
三賢者や希空達は、去年から仕込みの済ませ実りを待っていた収穫期が
明日から始まると楽しみにしていた。
「三賢者は仕方ないですけど、希空達が・・・
汚れてゆくのはどうなんでしょうかね?」
「誰がしかたないじゃ!」
「合法的な取引を汚れるなどと!」
「この程度、稚技に等しいは!」
「三賢者はね・・・」
「馬鹿申せ! 希空達の方がえげつないぞ!」
「そうじゃぞ! 次の種蒔なんぞ! そう来るか?っと感心しておる」
「なだ負けぬがな(笑)」
「それで、どのくらいになりそうなんですか?」
「色々仕込んだからのぉ・・・」
「大体700円ってところであろう仕入れ値は?」
「そうじゃな、では売値は・・・70〜100円かのぉ(笑)」
空売りも含めて8,000万株の売り物をいくらで買い戻すか?
笑いが止まらない三賢者だったが、希空達の売り物はそれ以上あった!
「それでも両方で1,000億程度の利益ですか?」
「税金など引けば800億だな」
「まぁ〜あの小物の会社にしては、まあまあだな(笑)」
「次の収穫は・・・(笑)」
「怖いですよ!」
「希空達には負けられんのだ!」
「そうじゃ!」
「師としての意地がある!」
「大損こかないでくださいね(笑)」
「「「心配いらん!」」」
バブルドアの影響で他の優良企業まで下げていた為、
買い支え、プロジェクトRの影響力は広がっていった!
流人達の資金源は異世界の資源などもあるが、投資による運用利益が大きい、
その為、仕込み用の資金を潤沢にしているのだが、
選挙へ向けて区内の土地を買ったりして資金が減っていたので、
希空達や三賢者の活躍に強く苦言は言えなかった。
「なんせ100万人も転居させたのだからな」
「そのせいで、一時的だが賃貸相場も上昇したぞ!」
「6区の人口が160万人から240万人に増えたからなぁ」
「? 計算が合わないですよね?」
「賃貸価格が上昇して転居した者もいたからなぁ」
「区長達が何も知らずに喜んでおるぞ(笑)」
「暢気よのぉ(笑)」
6区以外の場所にも土地を購入して、
選挙後の不動産関係の追い出しの材料に当てる為都内の地価は上昇していた、
それでも、流人達は只管買いあさり、6区内の5%を保有するまでになっていた。
「今後の予定とか聞かせて欲しいのですがね?」
「予定?」
「流人のか? 好きにいたせ!」
「そうじゃ! 流人は自由にしてよい!」
自由と言われても、なにすることもない流人、ゲームを行い暇を潰していると!
「なんじゃ!」
「またSOSじゃな!」
「ちょうど良い! 流人は遊んで参れ!」
「助けを求めているのに酷い言い分ですね(怒)」
愚痴りながらも助けを求める場所へ向かって行った流人・・・。
多摩地区東部の長閑な場所、総武線と中央線が通っているので、
駅周辺は賑やかだった。
近隣に大きな公園があって流人好みの環境でもあったが、
助けを求めている人が見当たらなかった・・・。
「まさか、また生霊でしょうかね?」
周囲を注意深く確認していると子供がひとり・・・ゲームをしていた!
「あぁ〜! もぉ! やめて! あぁ〜 誰か助けて!」
「この子ですね?」
ゲームに夢中で私の存在に気が付かない少女、
どうやら遊んでいるゲームは私が薦めていたMHPだった!
「こんな場所で遊んでいるって・・・」
「!!」
ゲームが終わって私の存在に気が付いたのか! 慌てる少女に流人が説く!
「え〜っと、取り敢えず、怪しいけど危害加えるつもりはありません。」
そう言いながらゲーム機を見せると安心したのか、
少女が慣れない敬語で話してくれた。
「お兄さんも遊んでいるんだ、MHP?」
「はい♪ さっきね、助けてぇ〜っとか騒いでたので、
何事と思って来たらねゲームでしたか(笑)」
急に恥ずかしそうにする少女に、なにか言ってしまったのかと反省し、
流人も同じタイプだと告げると嬉しそうな笑みを浮かべて流人が驚く!
「ほぉ〜!」
「これはまた驚いたのぉ!」
「魅了並みの笑みを浮かべるとは(笑)」
感心している三賢者を無視して流人が話しかける、
「誰かと待ち合わせでしょうかね?」
「友達・・・」
「ひょっとして・・・人見知り?」
「うん・・・。」
「(笑) なるほど♪ あなた面白いですね♪♪」
先ほどの笑みを浮かべれば、高感を持つ者が殆どであろうに、
人見知りでその特技を使わないでいる、そしてぎこちない敬語を使っている姿が、
流人には滑稽だがこの子の精一杯の努力なのだろうと感じた。
「友達が来るまで、一狩いきませんか?」
「うん♪」
独りでは中々倒せない飛竜種を討伐する・・・
「わぁ〜 火球!」
「回復薬飲んで!」
「わぁ〜こっち来ないでぇ〜!」
「尾っぽ切れました!」
「はい♪」
「爪に気をつけてください!」
「うぉおお! あぶない(笑)」
「やったぁ倒せたぁ♪♪」
「おめでとう(笑)」
ハイタッチして喜ぶ少女と流人の前にもう一人、同年代と思う少女が!
「!!」
「ばっさー?」
「ばっさー?」
「私です。」
「って事はお友達か?」
「はい。」
「それじゃぁ、遊んでくれてありがとう♪」
「こちらこそ(笑)」
少女2人に見送られながら流人が立ち去る。
「よいのか?」
「あの子のステータス、中々魅力的であったぞ!」
「既に所属している様だが・・・どうするのだ?」
「そのままでいいんじゃないでしょうか?」
中々の逸材だった少女に手を差し伸べないのかと三賢者に問われた流人、
13歳では下手な動きは取れないし、なんとなくだけどまた会えると感じていた。
「世の中、これだから楽しいんですよね♪♪」
「あの希と言う女子並みの少女がこんな場所におるとはなぁ(笑)」
「どう言う環境なのか分からぬが、まだまだ大勢いるのだろうな(笑)」
「どうなのじゃ流人?」
「その為にも、早く居場所を、安らぎの場所を確保したいですね♪」
「「「そうであるのぉ」」」
首都には23の特別区があるがそれ以上に市町村があるらしい、
八王子の畜産ドーム周辺しか認識していなかった流人だったが、
首都の大きさを改めて実感していた。
「流人! 東村師匠の地元も東京だぞ(笑)」
「岡部さんもな(笑)」
「知らんかったであろう(笑)」
「東京出身と名乗っていいのでしょうかね?」
「「「(笑)」」」
「その論争は度々あるそうじゃな(笑)」
「23区以外は名乗ってはいけない派と、東京都には変わりがない派だな(笑)」
「全く環境が違うからのぉ」
「私は長閑なこの環境が好きですけどね♪」
「それを田舎と嘲笑う者もおると言う事だ」
「木霊や神々の暮らす地の近くの方が安らぐと言うのにのぉ」
「人間とは難しい生き物だからのぉ」
都会の中心で豊かなカリスマと言われる代表が捕まり、
嘲笑う田舎に笑みを浮かべる少女が育っている現実をどう受け止めていいのか?
流人自身は、どちらに近いのか? 考えながら自宅へと戻って行った。




