第二百五十一話 鎮魂祭の演出
鎮魂祭の準備が順調に進んでいる、
行政やテレビ局の参加によって趣は変わり、
大勢の見物人が一か所に集中しない様、
赤城山の打ち上げ場を起点に何か所か分かれて
放送用のステージが組まれていた。
運営の司会も放送局のアナウンサーが、
ステージ上で打ち合わせを行なっていた。
3か所にステージを組んで、ゲストの演奏に合わせて花火が上がる為、
回転効率を考慮して3か所に決まったそうだが、
ゲスト目当てに来場して来た観客達はあからさまで、
混雑しているステージと隙間が見えるステージと分かれていた。
「ここのステージって誰が演奏するのでしょうね?」
「ここのステージは紫電や雷鳴達、プロジェクトR専用ステージだよ♪」
相変わらずの情報収集力を誇る友里に、他のステージの出演者も聞いてみた!
「詳しくは分からないけど、第二ステージは湘南◯◯がレゲエを2曲、
第三ステージが、Kaelaちゃんでロックな曲を2曲♪」
「随分、そのKaelaさんを贔屓していますね?
湘南◯◯はお嫌いですか?」
「そんな事ないよぉ・・・ちょっと怖いけど、 音楽は好きだよぉ♪♪」
「怖いんんですか?」
「どうせ流人は知らないんでしょう!」
「すみません・・・」
「しょうがないよ友里、明菜さん知らないんだよ(大笑)」
「でもさぁ、昔の曲も今の曲も知らないのに・・・ムカつく!」
好きでも叶う事のない夢、
その才能があるのに気紛れでしか披露しない流人に、
友里は少しだけ不愉快に思っていた。
「はい!流人!」
京子さんがパンフレットを渡してくれた!
「こんな物まで配られているんですね♪」
「フェスとかだと当然だけど、無料なのは流人のところだけだと思うよ(笑)」
第二ステージは、バンド中心の編成で、
第三ステージは、年配者向けの編成で、あの!北大地三郎の名前も!
「さぶちゃん出るのですか?」
「そうだよぉ♪ 私達さっき挨拶に行って来たよ!」
「「「当然(笑)」」」
「私も! 行って来ないと!」
「流人は駄目!」
「そう、そう、さぶちゃんも言ってたよ!」
「いろんな人が居るから、近づかない様にって!」
「そんなぁ〜 みんなは良くて、私だけ駄目なんですか?」
「しょうがないじゃん!(笑)」
「そんなぁ〜・・・」
「「「(笑)」」」
テレビ関係者に明日の朝刊に載せる為新聞記者も大勢来ている。
勿論、芸能記者も少なくない数が・・・
その為、流人達が居る場所は、他より一段高くなっていて、
周囲から様子は見えない・・・勿論魔法で結界を張っている♪
「これだけのゲスト、よく揃いましたね?」
「凄いよね♪」
「噂だと全員ノーギャラだって!」
「嘘!」
「なんでも、北大地さんが、寄付するって言い出してね、
他の人も右に倣えだったみたいよ(笑)」
「さぶちゃん・・・やらかしましたね(笑)」
「でも、良いと思うよ!」
「そうだよね、募金箱置いておけばいいのに(大笑)」
「それは先月テレビでやってたでしょう(笑)」
「「「(笑)」」」
念話で紅丸に話し掛け、
出演者の皆様になにが現物を差し上げる様指示した!
「ひゅ〜ぅぅうう!」
白煙を上げながら花火が登って行き、
煙が風に流されないままその場所に止まっていた。
「無風で花火日和ですね♪♪」
紅丸と黒天が、お酒と料理の差し入れを持って屋上へ
「みなさん、お召し上がりください♪」
「「「わぁ〜♪ ありがとうございます。♪♪」」」
料理に注目を集めている間に、黒天が流人に近づき打ち合わせを願う!
「マスコミから、取材許可の申請が来ておりまして」
「取材許可?」
「どうやら、彼女の移籍先が我々と情報を掴んだ局がある様です。」
「彼女は?」
「来月早々に、こちらに移っていただきたいと申し出ましたら・・・」
体調不良で入院生活が長い為、
衣装や雑貨の物置の様な自宅を処分して欲しいと、黒天に告げて来たそうだ。
「何人かは、当社に付いて来たいと申し出があると思っていたのですがね?」
「はい、我々もそのつもりでございましたので、入院中の世話を誰にするか?
思案中にございます。」
事務所関係者は10人以上、彼女の周りに居たが、
退職金と臨時報酬を提示したら、誰も残ると言い出さず、黒天も驚いていた。
「処分するのってなに?」
「部屋を確認いたしましたが、
衣装と靴、アクセサリーなど商売道具がほとんどでした。」
「ウチで管理して保管していただきたいのですが?」
「本人は好きにしていいと仰せにございます。」
思い出の品だと思う、だけど全てを処分していいっと言う言葉、
何か決意を感じていたのか、そう言う性格なのか流人には分からなかった。
彼女にはある程度の話はしている、
引退という言葉は我々は使っていない、
自社のメディカルセンターに入院していただく為に、治療費を免除する為に、
当社の契約者になっていただく必要があったので今回の内容になった。
「病室の準備は完了しているのですか?」
「はい、特別室の準備は完成しております、
あとは時が来るのを待つだけにございます。」
「その一瞬に、一瞬を逃さない為にも、邪魔されたくないので、
マスコミは出来るだけ排除していただけたら・・・」
「承知しております。」
サラ様が待てとおっしゃったのだから、信じる流人、
一瞬だけなにが起こるのか分からないが、最善の対応を決意したいた!
「放送5分前です!」
「スタッフ、はけてください!」
会場が慌ただしくなり、司会者の発声と共に番組が始まる。
そしてゲストを紹介されて演奏が始まる・・・
友里の言う事も分かる、強面だけど歌がいい♪
絆を大切に知る想いが伝わって来るっと間奏中に花火が盛大に打ち上げられる!
しかし大音量の中でボーカルの巨漢男が大声で懇願して来た!
「自分ら! 湘南◯◯といいます! 地元の音楽祭にも呼んでください!」
「「「お願いします!」」」
「うおぉ〜♪♪」
「だって、どうするの流人?」
「呼んであげれば?」
「友里が怖いって言うからね・・・(笑)」
「怖いけど、いい人だよ!」
流人が紅丸に何か指示して紅丸が屋上から降りていった!
第一ステージ上で司会者からマイクを借りている紅丸が、
歌が終わり深く一礼していた湘南◯◯のメンバーに向けて語りかける。
「運営の代表をさせていただいてます、湘南◯◯のみなさん、
来年の地元の音楽祭に歌いに来てくれるかな?」
「「「「「いいともぉ〜♪♪」」」」」
「「「(笑)」」」「「「♪♪」」」
マイクを司会者に返すと直ぐに次のゲストへ話を進めて、
ロストを補う様に慌てていた。
「少々のトラブルも対応出来ないのですかね?」
「流人がそう言うこと言うかな(笑)」
「あれ流人の指図でしょう(大笑)」
「誰か、知り合いじゃないのですかね?」
「・・・観ちゃん?」
「私? ない、ない、あった事もないよ!」
「有名な人達だよね?」
「去年じゃない? 聞く様になったの?」
「そうですか・・・残念ですね。」
Kaelaの曲が流れると一気に第三ステージが賑わう!
「友里、あの子は?」
「同じだよ、去年デビューだけど今年話題になった子だよぉ♪」
「いい人選ですけど・・・誰の選択でしょうね?」
「そんなの・・・分からないよぉ!」
鑑定のスキルを使い相手やバンドの能力を査定すれば、
ある程度は予測出来るが、流人が好む人選は、スキルでは判断出来ない、
流人の好み、性格を理解して、その上音楽業界の視野が広い人物となる、
黒天や紅丸には無理なはず、流人の好みは理解していても、
無名に近いバンドや歌手を知っているはずがない。
テレビ局からの助言なのか?県の関係者なのか?
自分に必要な担当だと思って気になっていた・・・
湘南◯◯の時とは違って、打ち上げられる花火は小さく音は小さいが、
繊細な光の糸が美しく、
上空に細かい絵が描かれている様な花火が舞っていた!
「綺麗♪」
「初めてだよね、こんな細い光」
「でも・・・綺麗だね♪」
ゲストに合わせて、細やかな気配りが取られていて、
見ていて苦にならず、花火との融合が幻想的な世界を描いていた。
最後に北大地三郎が取りを努める。
「え〜みなさま、 歌う前に、御霊に敬意を表する為に、
1分の黙祷を行いたく、ご協力お願いしたく宜しくお願いします。」
「黙祷!」
賑わいの中行われた黙祷、国民性を現すかの様に一気に静寂へと変わった。
「・・・」
「ありがとうございました、
取りとしてこの歌を務め上げたいと思います! よぉ!」
「せぃや! せぃや!」
さぶちゃんの煽りで一気に盛り上がっていく!
北大地三郎のまつりの音が!
プロジェクトRの僕達が数十台の大太鼓と叩き、
それに合わせて花火が打ち上がる!
夜空に、大漁旗の花が舞い! 船が浮かぶ!
幻術的な光景に魅了され歓喜の声がさぶちゃんを沸き立たせていた!
「凄い!」
「花火って・・・こんな事も出来るんですね」
「船が浮かんでいるよ♪♪」
夜空の海を大漁旗が、美しい花が舞っていた!
「これは・・・」
流石の流人も驚いた! 花火に混ぜた付与効果に、
こんな使い方が出来るとは、驚き、幻想的で魔術の進化を感じていた。
「力、威力だけが評価の対象だった世界から、
想像と独創性の表現力・・・素晴らしいですね。」
こうして今年の鎮魂祭は終了した・・・。




