第二百五十話 知らぬ事が大罪に
少し遅めの昼食をいただいて、会場に戻ると設営準備の人達が、
鎮魂祭も県との合同になって、準備などは迅速に出来る事は嬉しいが、
屋台などの出店が多く少し残念に思えていた流人だった。
「仕方ないだろう、」
「そうじゃな、観光収入は財政が潤うからのぉ」
「山神も不快とは、思わぬと思うぞ♪」
「そうですけどね・・・」
御霊の慰霊祭と考えている流人、
墓場に出店が並んでいたら、常識ある人はどう思うのか?
然しこの考えは流人の誤りであると本人も最近知っているので、
不快だけど、無知故の感情の誤りと自己を修正しようと努めていた。
「大河や桜花の話では、昔から花火は賑わい楽しむ物として
慎ましやかより勢いと歓声で賑わう風物だったと教えられてビックリです。」
県との合同といっても、運営費用と開催費用はプロジェクトRが負担、
県は、告知や周辺住民への説明、場所の提供と県警の警備など、
裏方に近い作業を受け持っている為に、飴としての出店の収益は容認していた。
「出店からどうやって県に金が流れるのでしょうかね?」
「簡単じゃ、毎年場所を決めるクジを行うのじゃ!」
「そのくじに参加する為に参加費用が必要でな」
「その費用が、県政を潤しておる。」
「潤すって・・・怖いんですけど(汗)」
1店舗あたりの参加費は2万円、売り上げから考えると微妙なのだが、
場所によっては百万円の売り上げも可能、
宝くじ的感覚で出店者も参加しているので、
抽選会が地元のテレビで中継されるほど賑わってもいた。
「2万円ですか、5百円で40個以上ですよね?」
「よほどの物でない限り売り上げはあるであろう(笑)」
「そうじゃな、祭りだぞ♪♪」
「出店者も承知であろう。」
「でも・・・どのくらい参加しているんでしょうね?」
「情報によると今年は2,000店だそうだぞ(笑)」
「この前ニュースで抽選会を放送してたからな(笑)」
「一番くじを引いた男が泣いて喜んでおったのぉ(笑)」
「宝くじの方が嬉しいと思うのですがね?」
「自分の力で稼ぐ! 男のロマンじゃ!」
「そうだ! 技量次第だからなぁ(笑)」
「あそこの、おっちゃんだ!流人(笑)」
テレビ中継の特設会場の入り口、いかにも人通りの良さそうな場所で、
玉蒟蒻の田楽を売っていた!
「マニアックですね・・・」
「地元の名産なのだろう、蒟蒻は・・・」
「昼食で食した物は四角く串に刺してあったがなぁ」
「たこ焼きの様に工夫をしたのであろう(笑)」
「売れると・・・いいですね・・・。」
「「「頑張れ!」」」
大鍋の中に玉蒟蒻が沢山入っていて、
その大鍋が屋台の奥に何個も見えていた・・・。
「「流人♪」」
「今年はちゃんと来たねぇ(大笑)」
「そんじゃ俺は、関係者席に行っているから、なにかあったら呼んでくれ!」
「は〜い♪♪」
警備の渡邉と分かれてメンバー達の特別席に向かう流人、
いつものメンバーと合流したが、今回は東村は参加していなかった。
「そうか、東村さん居ないんですね・・・」
「師匠に用があったの(大笑)」
「けんちゃん、舞台の打ち合わせで忙しそうだったよね」
「舞台ですか・・・邪魔しちゃいけませんね(笑)」
彼女の中からなんとなく東村の雰囲気が感じられる、
それは、ここに居る岡部さんと同じ雰囲気なので、
番組か舞台を一緒に共演していたのか?尋ねてみたいと思ってた。
「焦る必要はないか・・・。」
「流人が来たなら、ちょっと出掛けてもいいかな(大笑)」
「トイレですか?」
「違う、入り口にさぁ♪ 美味しいそうな田楽が売ってるのよ♪♪」
「あぁ〜来る時おっ味噌の匂いが凄かったですよね(笑)」
「あれ! 絶対お酒に合うから♪♪ 売り切れる前に買って来る(大笑)」
「和っ子! 多めにね(笑)」
「分かってる(大笑)」
「だれかぁ〜トイレ付き合ってくださ〜い!」
「小学生か!(笑)」
「私でよければ・・・?」
「大丈夫です!」
「「「(笑)」」」
「しょうがないなぁ、付き合ってあげよう(笑)」
「ありがとございます、迷子になりそうで(笑)」
「・・・ちょっと待って! 誰か?」
「観ちゃん?」
「私・・・無理、方向音痴だし(汗)」
「私も行くよ(笑)」
「ありがとう潤♪」
「いい大人が、(笑)」
「「「(笑)」」」
既に大勢の人が建物の周りに集まって来ている、
当然トイレなどの設備は限られているので混雑前に済ます必要もあった。
「流人! 今年は歌わないの?」
「私? 見物だけですよ(笑)」
「そうなんだ・・・」
少し残念そうな友里、そして歌のキーワードに反応した!
「そう言えば、明菜ちゃん引退ですって!」
「「嘘!」」
「木村さん?」
「ニュースになってました。」
木村さんが流人が見たテレビを木村さんも見ていたのだろう、
◯◯明菜の引退が話題になっているとメンバー内に広がる!
「え〜! 私、憧れていたのになぁ」
「一度も会えなかったぁ〜」
「本物見てみたかったなぁ」
「ちょっと待ってください、 みなさん明菜さんを知っているんですか?」
「「「「「・・・」」」」」
「流人!・・・明菜ちゃん知らないの? もしかして? 嘘だよね?」
「流石の流人でも、明菜ちゃんは知っているでしょう(笑)・・・まじで?」
「流人、総理大臣の名前を知らなくても、◯◯明菜は全員知っているよ!」
「そんなに・・・有名な方だったの?」
「「「「「・・・」」」」」
まだ9月、屋上に冷たい風が吹いていた・・・。
「ただいまぁ・・・どうしたの?」
「観さん、流人明菜ちゃん知らないって!」
「(笑) またぁ〜♪♪」
「明菜ちゃんが・・・どうかしたんですか?」
「引退だって!」
「うっそ!」
周りから完全に取り残されている流人、
ここでも憶測や願望が飛び交いゴシップ状態だった。
「ただいまぁ 4つ買って来たよ足りるよね(大笑)」
「和っ子! 明菜ちゃん引退だって!」
「えぇ〜! ショック!」
「話中ごめん、 この中で◯◯明菜に会った事ある人いるの?」
「は〜い♪」
「いいなぁ〜観ちゃん!」
「いいでしょう♪♪ 音楽番組で一緒だったんだ(笑)」
「そっか、観ちゃん歌も歌ってたもんね♪」
「そうだよ、伝説の少女だもん♪♪」
「「(笑)」」
「他はいないんですね?」
「・・・会いたかったけどね」
「そうだよね、私達とは住む世界が違うから・・・」
「そうだよね、ザ・歌姫だもんね」
「「「「うん♪」」」」
モデルや女優と違い音楽に関わっているメンバーが少なく、
彼女に会った人は1人しかいなかったが、
彼女達の中では尊敬の対象だったようだ。
「流人、
わかりやすく説明する、流人にとっての東村さんや北大地さんだよぉ!」
「・・・冗談でしょう?」
「御意見番とか大御所って呼ばれてないけど、身近な大先輩だよね」
「「「うん」」」
「私達、聖子ちゃん明菜ちゃん世代だし」
「私は少し後だけど、雲の上の存在だよね聖子ちゃん、明菜ちゃんは♪♪」
「「「うん」」」
「私なんか、2人に憧れてオーディション受けたんだから(大笑)」
「和っ子さん!私も♪♪」
「和っ子さんが?」
「なによぉ!流人(怒) 私だって昔はアイドルだったんだからね!」
「「(笑)」」
「私たちの世代は、全員だよ! 全員、どちらかに憧れてたよ!」
「お芝居がしたくてこの世界に入ったけど、子供の頃によく歌ってました。」
「私も歌った♪♪」
彼女の印象が一気に変わり、戸惑う流人、
これほど愛されていた子が・・・どうして・・・と思う。
あくまで架空のお話なので、寛大な心でご了承ください。




