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第二百十六話 女王からの願い

 どんなに愛情があっても・・・、


 愛情が深ければ深いほど、相手を思えば思うほど、

別の道を歩む方が幸せなのではないかと・・・


 愛する者同士が結ばれ、子宝にも恵まれ、

然し、住む世界が近いほど、階級の、爵位の重みには耐えられなかった。


 どんなに努力しても、超えられない血筋、階級の違いから、

別れ別の道を歩む事を選んだ二人に、更なる悲劇が起こるとは、

誰も予想してなかった。


 辛い日々を過ごす中、支え癒してくれた異性に芽生える愛情、

周囲の反対があっても、今度は絶対に手放さない、

共に荊棘の道を歩もうと・・・

 

 そんな決意を持った男が来月、再婚を決意した、

王族である自分なら、大切な人を守る為にも、

二度とあの様な後悔をしない為に・・・。


 国民の批判も、家族からの批判も、

全てを自分が引き受けて、愛する人を公の冷たい洗礼から守る。



 「まさか、この様な形でお呼びいただくとは思いませんでした女王陛下、」

「あら、そぉかいね♪ 騎馬隊でも引き連れて出迎えた方がよかったかい(笑)」


 皇室経由で招待状が来るとは思ってもいなかった流人、

その上、あの時の様に参られる事を望みますと一筆も・・・。


 手土産を持参して深夜に女王陛下の書斎に出向いたのだが、

元気なご様子に、安堵と疑問が残っていた。


 「ご健在のご様子、安堵いたします。」

「頭痛の種は尽きないけどね、お前さんの顔を見たら嬉しく思えるよ流人(笑)」


 少し会話に違和感を感じた女王陛下!

「先に言っておくけど、皇室を愚弄したり軽んじているつもりはないよ、

後日正式に感謝の意は伝えるつもりだからね。」


 流人には敬意ある皇室を小間使いの様に扱った女王陛下に対し、

言葉に棘がある対話に行っていた為、先に女王が訂正していた。


「お前さんの事が少し気になってね、表に出ない流人を招く為に

皇室に願い頼んだんだよ、勿論、快く受けていただけた事には感謝しているよ。」

 

 経緯を知り、機嫌が晴れる流人に、女王がメイドを呼びお茶を用意させる。

「ミルクティーって私達は飲まないんだけどね、

用意させるから試してみなさい。」


 流人の情報をどこかで入手したのだろう、

然し、流人は断り、ストレートティーを求めた。


 「ミルクティーは大好きなのですが、味と香りに我儘ですので、

 王室の紅茶を・・・」


「そうかい、 ロイヤルミルクティーと言われてもね、

ウチではミルクは入れた事がないからね(笑)」


 「あれは、王国への敬意と憧れの想いが表記されているので

 あまり不快になられません様に願います。」


 流人が贔屓にしている、メーカーから発売されているロイヤルミルクティー

甘味が少ないので流人もあまり飲まないのだが、代わりに謝罪した。


 「我が国には、色々勝手に使用している料理などもございますが、

 決して悪意はございませんの寛大な判断を願いたく思います。」


 島国だから? 

異国料理に憧れ研鑽を重ねた結果、

別の料理と称してもいいほどのこだわりと情熱を感じる物へとなっている。


 

 メイドが運んで来た紅茶は、

ダージリン系の香り高い上質と直ぐ分かるほど、普段の紅茶とは違う。


 「いい匂いですね♪」

王室御用達(ロイヤル)だからね(笑)」

 

 機嫌のいい流人の様子を見て、女王が流人に尋ねる。


「太平洋の島は・・・何を求めているんだねプロジェクトRは?」

 「島?」

「環礁を埋めて・・・何に使うの気だい?」


 島と言われて一瞬慌てた流人!

然し次に環礁と言われ、どこの島か分かり安堵した。

 

 「大統領からはなんと?」

「環境観測だの、海洋調査だの、正直に言いたくないと言えばいいのにね(怒)」


 「間違ってませんよ女王陛下、ついでに、それらも行っておりますから(笑)」

「ついでね・・・っで、本当は?」

 「我が国の最終防衛の本拠とさせていただいてます。」

「我が国? 日◯のかい? 米国が居るのにかい?」

 「米国は我が国からC国へ乗り換える所存にございますから(笑)」

「同盟国を見捨てるのかい!」

 「利がなければ、見捨てましょう(笑)」

「・・・、っで代わりにプロジェクトRが守るってぇのかい(笑)」

 「日◯を守る気はございませんが、

 あの地と助けたい人達は守護いたすつもりです。」


「企業に出来る事かね?」

 「私には、ゴードンからも自由にと支持をいただいております(笑)」


「・・・不思議なんだよね、

我が国にゴードンなんて貴族は存在してない筈なんだがね?」


 「(笑) よくお調べで♪ 存在してなくても、

 事実にするのがアジア人ですよ(笑)」


「何者だい? ゴードンとは?」

 「聞かぬ事が大事、秘匿する事が務めと申せば、

 女王陛下もお分かりでしょう♪」


「ばかな・・・」


 「既に私どもの力は、軍事力ですがね♪

 米国と僅差まで追い付きましたので、後は追い付き、追い越すだけなんで(笑)」


「我が王国はどうなるのじゃ! 流人?」

 「お好に、私どもの敵になるもよし、共に歩むもよしにございます。」


「共に、歩む事が叶うのじゃな?」

 「ご自由に♪・・・ただ、無駄な計らいはお止めいただきたい。」


 女王陛下が指示を出している事は、さほど多くはないが、

この時期に出した指示は一つだった。


「伝統と規定(ルール)は守らないと・・・。」

 「お伺いいたしますが、そのルールを守って誰に利がございましょうか?」

「利?」

 

 年齢的にも子が生まれる恐れも少なく、

産まれたからと言って問題になる事もない。


 国民の大半が、次期国王に孫の兄を待望し、

継承順位1位だが、本人も息子へ譲渡も考えている実の息子を・・・


 「如何でしょうかね、置き石として遠方で要となっていただくのは?」

「追放しろと?」

 「その必要はございません、本人も恐らく公務を辞退し、

 前線から身を引く御所存とお考えかと?」


「認めて、身を引かせてどうする?」

 「マスコミの目や風当たりの盾にでもお使いなさいませ♪」


「随分酷い事を言うねぇ流人、あれでも私が産んだ子なんだよ?」


 「だからにございます、優秀で、正義感が強い・・・強過ぎる程ですね♪

 失わない為に自らが平民に近づき、共に歩もうとなさるのですから、」


 王位継承も放棄しても構わない、愛する人と共に居られるなら

全てを捨てても構わない、そう思っていても、王族だから愛する者が守れる、

王族だから・・・その想いが離脱という行為に踏み切れなかった。


 「もう一度お伺いいたします、再婚を認めてなにか問題がございましょうか?」


 自分より、子供達の内情を知っているかの様子と素振りに、

流人の、知らぬ、秘匿が務めの意味を理解している女王は従うしかなかった。


「一つだけ聞きたい!」

 「なんなりと?」

「孫に継承させたら、流人(あんた)とは、友好的な関係が継続出来るのかい?」

 「王子次第にございますが、私としては、是非お願いいたしたいですね♪♪」


「前も、孫をベタ褒めしてたよね?」

 「はい、王子の父も大変優秀にございますが、王子はそれ以上ですからね(笑)」

「我が子も、やんちゃだったけど、政に関してはかなり出来る子だったよ。」

 「そうですね♪」


 やんちゃには二種類存在する、

 一つは、自分の意思で行動を行うタイプ!

このタイプは、自ら意思で行う為、成長と共に良し悪しを理解出来る為、

成長すれば自然と大人しくなるタイプだが、もう一つのタイプは違う、


 周りに唆され、自分の意思とは別に、その場の勢いでやんちゃをする、

このタイプは、成長しても、善悪の認識が出来ない、

周りの声に流され自らの意思を養っていない為決断ができないのだ。


「確かに、そういう意味では、まさしく親子って感じだったね。」

 「弟様は・・・」

「後者だね(怒)」


 「争いは無いと思いますが、その為にも父親が必要と考えます。」

「・・・確かにそうだね。」


 複雑な思いを発しながらも、流人の助言に耳を傾け、

再婚を認め、孫達の盾とする事を決意した。


「実子なんだから、面倒見るのも当然って言や当然だね」

 「それは女王陛下も同様に思いますが(笑)」

「(笑) 確かに、この歳まで子供の心配をするとはね(笑)」


 再びメイドを呼び、孫のウィリアムに使いを入れる。


 「こんな時間に、お休みではございませんか?」

「あの子もまだまだ、やんちゃだからね♪ 寝てるわけないだろう(笑)」

 「それは・・・大人しくお部屋に居られますかね(笑)」

「!! どうだろうね?」


 10分も経たずにウィリアム王子が駆けつける!

「おばぁさま!」

「おや♪ 大人しく部屋に居たのかい(笑)」

 「流石はお孫様、大事には必ず駆けつけましょう♪♪」


 何事かわからないまま、女王陛下と流人に笑われていたが、

女王から正式に紹介を受け、

初めて言葉を交え良い関係が築けたと流人は思っていた。


「おばあさま、」

「私の一番若い友人だよ」

「友人にございますか?」


「諭されてね、再婚を認める。」

「本当にございますか♪」


「だから、ウィリアム!あなたもがんばりなさい♪」

「はい♪」


 「そう言えば王子は、珊瑚礁について卒論を書いたとか?」

「流人! 王子はやめてくれ、ウィリアムで構わないよ♪」

 「それでは、これからはウィリアムと呼ばせていただきます。」

「うん♪ よく知っているね、僕の卒論の事まで?」

 「それは、大学でも評判の様ですから♪」


「あらそうなのかい流人♪」

 「父以上の・・・これ以上は卒業式までお楽しみに(笑)」

「?」

「(笑)」

 

 父以上の成績で卒業する事を伝えなかった流人だが、女王は察し喜んでいた。





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