第二百八話 小売店って難しいんですよ
すっかりゲームにハマった流人、
暇があればゲームをしているので周囲も少々心配になる。
「流人! またゲームしているのか?」
「流人君、長時間のプレーは目によくないですよ!」
「調べ物をしているだけですよ(怒)
ゲームは帰ってからしますのでね、その為に調べ物をしているんです。」
八王子まで車で向かっている最中、
会話も少なく流人は只管にネットで調べ物をしていた。
「そんなに何調べているんだ?」
「少し気になりますね?」
「戦国時代の武器の名称なんですが、武器によってスキルが違うのですよ!
何故なのかなぁ〜っと思い調べているのですが分からなくて・・・。」
「ゲーム内はあくまで架空だからな、現物とは違うだろう?」
「そうですね、妖刀村正とか言うけど実際はどうだったのでしょうかね?」
「あった♪あった♪」
流人が調べていた一つはその村正でもあったのだが、
妖刀と恐れられるほどの理由が分からず、そして何故妖刀だと強いのか?
調べても分からない流人だった。
「おぉ〜着いたぞ!」
「ほぉ〜い♪」
去年末に伺う時間がなかったので早めに来たいと思っていた場所、
年々雰囲気が変わり、地域住民とも交流があるのか?
人の往来も増えている様な気がした。
「これは流人様、ようこそお越しくださいました。」
「こんにちは♪ 順調の様ですが、人が増えましたかね?」
応対に出て来た僕に話を聞くと、
完全室内飼育の噂を聞いて、全国から見学者が訪れてくるそうで、
抑々、畜産の神様的重鎮3人が育てているだけでも十分話題になっていた。
衛生面や、家畜達にストレスがない様気を配りながら、
見学会も行なっているそうで、
来年度の就職希望の参加者なども混ざっているそうだ。
「あ! 長谷川さん! 黒田さん! 西川さん! 」
「「「! おぉ♪」」」
「こんにちは♪」
「流人君、久しぶりだね♪」
「今日はどうしました?」
「なにかありましたかね?(笑)」
去年末に来れなかった事を詫びて、畜産の状況などを伺っていた。
「皆、頑張っているからね♪」
「俺たちのする事なんかほとんどねぇ〜(笑)」
「来年はもう少し頑張れるだろうよ(笑)」
「「そうだなぁ 御給金くらいは働きてぇなぁ〜(笑)」」
地域の地主から新たに土地を譲っていただき、ドームを6つ追加する
その為、3人には一つずつドームの飼育管理を受け持っていただく事になり
其々が更に上質の飼育を目指していた!
「今度はなぁ、各々で違いが大きく現れると思うぞ!」
「そうだんなぁ、楽しみだんなぁ(笑)」
「おおぉ♪ 流人さんに美味しい肉、たくさん食べてもらおうよぉ(笑)」
「楽しみにしています♪♪」
三人の知恵と経験でこの場所にはBSEは完全排除され、僕達の評判も上々で、
順調に生産率を上げていたのだが、少々問題もあった。
「やはり買い物ですか・・・。」
「貧乏性と言うかなぁ、どうしても運転手付きで買い物ってのはよぉ・・・」
「慣れねぇみてぇだな?」
「俺らは任せっきりだしなぁ・・・」
ただ良い知らせもあった、
いくつかのスーパーが店舗を出してもいいと申し出があったのだが、
条件が、生肉を卸して欲しいと言う。
「駄目なんでしょうか?」
「購入価格が折り合いません(怒)」
僕が珍しく激怒していた!
現地生産で安く買い上げたいスーパー側と、ただでさえ他所より高額なのだから
折り合いが付くはずもない
「ハッキリ言って、俺たちも卸すのは反対だ!」
「うんだなぁ、畜産家をなめてるからよぉ」
「だな、買ってやるって上から目線だもんなぁ」
「そんな所には卸さなくて結構です(怒)」
「「やっば!」」
「流人様!」
「落ち着けって流人!」
「流人君!」
「紅丸を呼んで! 早く!」
「は! はい。」
「無いなら、いいです! 作りましょうスーパーを♪」
「「「え!」」」
「流人?」
「流人君?」
1時間もかからず紅丸がやって来た!
「流人様、遅くなって申し訳ございません。」
「構いません、紅丸、会員制のスーパーを作りましょう♪」
「スーパーにございますか?」
「大規模店舗でなくて結構ですから、ウチで生産している肉、魚、野菜を
置いて、その他必要な物は、お取り寄せで対応してください。」
「承知いたしました、では、ここだけでなく農地にも、設置いたしましょう。」
「そうだね、早急にお願いね♪」
「御意」
直ぐに紅丸が連絡して色々手配を行っている、・・・1時間後、
「流人様、ここにコンビニ程度の大きさですが、店を設置いたします。」
「どのくらいで出来るの?」
「はい、今週中に建物は完成させます、
来週には保健所の審査を受け、認可がおりましたら、
月末迄には開店させたいと考えておりますが、いかがでしょうか?」
「どうでしょうかね? 奥方達は待っていただけそうでしょうかね?」
「「「・・・」」」
「?」
あまりの行動力とスピードに、真っ白になっていた・・・。
農家から野菜、養殖場から魚、そして肉、
専用の流通網を作って荷物を搬送させて、小売業を始める事になったのだが、
問題もあった。
「なるほど、ウチで扱っていない商品はどうしましょうかね?」
「しばらくは直接取り寄せをいたしますので、品数が少々少なくなります。」
「廃棄は出来るだけ控えたいのでね、そこは・・・ねぇ?」
流人が念話で紅丸に、転移で希望の商品を届ける様準備をさせていた。
「流人さん・・・、」
「おら達の為にそこまでしなくてもよぉ」
「そうだぁ、それこそ贅沢だぁよぉ」
「どうしても畜産の流れが年単位なので遅れがちなのですが、
農家や養殖場では毎日出荷しますので、それをここに回すだけですから♪♪」
「そうだけどよぉ・・・」
「何から何まで、世話になりぱなしだなぁ」
「これじゃぁおら達の代だけじゃ返せねぇぞ(笑)」
農場の方の直売所も、もう少し手入れが必要と思っていたので
いい機会だと一気に話を進めた流人達だったが、
畜産の3人には変な重圧を掛けてしまった様だ。
帰りの道筋で邉さんが話す!
大型店舗が地方に進出して、地元の小売店が次々と閉めてしまい、
商店街は賑わいをなくし、シャッター通りなどと揶揄されている。
「共働きが多くなったからな、週に1度車で大量に買いに行くのが、
若者夫婦の主流になりつつあるんだよ。」
「ぼくも、毎日は買い物に行きませんからね」
「俺なんか、流人のところで飯を済ませるから全くだぞ(笑)」
「流人なんか自分で買い物しないだろ?」
「そうですね・・・食べ物は買いませんね」
「だよなぁ(笑)」
「流人君、牛乳とか卵の値段は知っておいた方がいいですよ♪」
「そうだぞ♪ そこまで東村の真似はしないほうがいいぞ(笑)」
「常識クイズですか(笑)」
常識クイズで、たまに出演する東村けんが、卵の値段や、
切符の買い方など、世間一般では当然出来る事が、
有名人、人気アイドル達は出来ないと視聴者が驚き、話題になっていた。
「師匠が?」
「あぁ、切符の買い方を知らなくてなぁ(笑)」
「・・・流人君は大丈夫ですよね?」
「鉄道のカード持ってますよ♪」
「あぁ〜♪ って事は自販機では買えないな♪♪」
「大丈夫ですよね?」
「買えるわけないでしょう(怒)」
「逆ギレかよ♪(笑)」
「(笑)」
少し不機嫌になりながら、再びPCで調べ物をする、
「邉さん、日本刀ってどこへ行けば拝見できるのでしょうかね?」
「日本刀かぁ、難しいなぁ・・・」
「そうですね、名刀は殆んど秘蔵ですし、
特に村正なんか国立博物館でしか見れませんよ!」
「虎徹が見たいのですが?」
「お! 新選組かぁ♪」
「先輩新選組好きですもんね(笑)」
日本刀の虎徹は、新撰組局長の愛刀としても有名だった。
「なんだ♪ 流人も新選組に興味があるのか?」
「新選組には興味がないですが虎徹の刀工に興味があるんですよね♪」
「刀工?」
「刀鍛冶の事ですよ先輩」
「刀の方かぁ」
残念そうな表情をしながら運転を続ける渡邉、
「現代の刀工は、残念ですが実戦には向いていないのでね♪」
「いや流人、日本刀なんか持ち歩いたら即逮捕だぞ!」
「そうですよ! 銃刀法違反には刀、かたなも入っているんですよ!」
「所持はしませんよ、ただ・・・」
後世に残すのなら、現存の刀工の技術なのか?
実戦で使える刀の技術なのかを考えたらどっちかな?っと流人が尋ねる。
「そりゃぁ・・・」
「そうですね・・・」
「でもよぉ、今の時代に残っていないんだろう?使える刀工はよ?」
「ですから、育てるんですよ、この国の伝統文化をね♪」
「育てるって言ってもなぁ・・・」
「そうですよ流人君、畜産の様に師匠が居れば教えをいただけるけど、
独学だと大変ですよ。」
「それによぉ、あの世界の職人って閉鎖的だしなぁ」
「そうですよね・・・。」
「そこは、私がなんとかしますよ♪」
「流人が?」
「流人君が?」
「切符は買えなくても、私なら出来る事もありますからね(笑)」
江戸時代に五十過ぎてから刀工として刀を打ち始めた虎徹、
評判は良いが、打った数が少なく、流行りも合ってか脇差が多かった。
この男がもし、刀工だけに集中して精進したら・・・




