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第二百五話 手札の公開

 半年ほど前までは、寂れた滑走路が1本あるだけの環礁地帯だった、

それがあっという間に・・・!


 環礁内部は全て埋め尽くされ、

一部大型船用に深く削り取られた航路が出来ていた。


 環礁内部を全て覆い尽くす開閉式ドームが設置され、

SF映画に出て来る要塞の様な外観だが、違うのは武装が全く見えない。


 長さ1kmほどの滑走路が3本、その内の1本が斜めに伸びている、

まるで航空母艦のアングルド・デッキの様にも見ていた。


 そして格納庫が多数綺麗に配置してあるのだが、

格納庫をカモフラージュする為なのか?

大きな木々が植えられているのだが、異様な大きさに却って目立っていた。


 ジョンストン島には、眷属200名と僕達500名、

そして人間が1万人生活出来る施設が完備してあり、

ちょっとした街の機能は全て整い、いつでも受け入れ体制は整っていた。


 環礁より東へ100km程離れた海域に、

大統領警護の為に待機している原子力空母とミサイル駆逐艦、

偵察機を飛ばして周囲を警戒しているのだが、レーダーに環礁が映らず、

目視でも20km以上離れるとなぜか確認出来ない現象に追われていた。


「10海里内に侵入、環礁を確認出来ます!」

 パイロットが母艦に報告すると直ぐに警告が!


「その空域は、環礁地帯10海里内です、

許可無く侵入する事は敵対行為と受け止め、

撃墜対象物となりますのでご注意ください。」


 警告音声に従い10海里外に離れると環礁が何故か目視出来なくなる。


「どうなっているんだ!」

「艦長! 如何いたしましょうか?」


 何度か繰り返し確認をした結果、機体や機器の故障ではない、

あの環礁が、なにか分からない影響を与えていると艦長は判断した。


「爆撃隊にいつでも出撃できる様待機を命じる!」

「は!」


 大統領命令で密かに、必要に応じて施設の破壊を命じられている艦長、

不安を感じながらも任務を遂行中だった。


 その内容がやっと大統領達の耳にも入っていた様で、

太平洋艦隊司令官が回り諄く優しい声調で問うて来た!


「この建物にはなにか秘密があるのかね?」

 「(笑)」


 流人が笑いを堪えられず声を出してしまった!

 「秘密のない建物がありましょうかね(笑)」

「・・・確かに、言い方が悪かった様だな・・・。」


「大将! 私が聞こう! 流人・・・」

 大統領が司令官の代わりに流人に直接聞き始める、

レーダーが阻害されている事や、目視が出来なくなる事、その他にも、

何も入っていない格納庫が多数ある事や、

立派な建物があるのに何故人が少ないのか?


 とても大統領とは思えない、子供の様な純粋な問いが来たので、

流人達は呆れていたが、黒天も紅丸も流人に回答を一任していた。


 「そうですね、企業秘密ですけど皆さんも開発しているでしょう?

 ステルスですか、それと同様の物とお考えいただいて構いませんよ♪」


「目視までごまかせるのか!」

「いったいどうやって!」

 「企業秘密です(笑)」


 「次の問いですが、格納庫が多いのは、将来的に配置する機体の数で、

 まだ開発が追いついていない為空になっているのと、

 機体整備やパイロットなどがいないので人も少ないとお考えいただきたい。」


「どう見ても、ここは軍事基地だ! どこと戦うつもりだ!」


 相変わらずの口調で問うCIA長官!に睨みを利かせるクロウだった!


 「クロウ♪ 」

「申し訳ございません。」

 「どこと? 我が国の敵とですけど? 当然でしょう(笑)」

「それは! どこだと聞いているのだ・・・聞きたい。」


 殺意を感じ言葉は丁寧に変わる長官に、流人が分かりやすと説いた。


 「同盟国を見捨ててC国を選ぶ様な薄情な国なんかは、

 敵国として相応しいですかね(笑)」


「「「・・・」」」

 

 冗談とも取れる流人の仕草だったが、明らかに言葉に棘があり、

そして何より、周囲から感じる重い圧力が、大統領に笑いを与えてはいなかった。


「我が合衆国の敵となるのなら、全力で叩き潰すだけだ!」

 「出来ますかね?」


 即答で返して来た流人に、少しだけ余裕を見せながら大統領が説く、

「この基地はまだ完成しておらんだろう!

今なら、容易に破壊出来るのではないのかね♪」


 「その様な場所に、態々大統領達をお呼びは致しませんよ(笑)」


「・・・」


 大統領の背中に汗が滲みはじめ、大統領を守る様に海兵隊が密を組む!

すると流人が無邪気に大統領達に問う!


 「この島で、余興を行おうと思っているのですが♪

 あそこに待機している艦艇を殲滅しても宜しいでしょうかね?♪♪」


 流人が指した方角には、

護衛任務を受けて近海に来ていた空母と駆逐艦が居た方角だった!


「流人様! 当初の予定では、安全海域での余興にございましたが?」

「殲滅となりますと数万人が消えますが宜しいでしょうか?」

「流人様が望まれるのでしたら我々に異はございません。」


 黒天達の回答に慌てる大統領達!

「なにをするつもりだ!」

「大統領!」

 盾として前に立っていた海兵隊を押し除け流人に近づき答える


「あそこにいる兵士は我が国の大切な者達であり、国民でもある、

私は彼らに死戦を命じる権利もあるが、守る義務もある!」

 

 「それでしたら北方よりの衝撃波と高波に対処する様命じてください、

 沈みますよ♪♪」


 そう告げると、流人が黒天達に指示を与える!


 「30分後に!サジタリウスの矢を、北方120kmに放て!」

「「「yes my lord!」」」


 「大統領急いでくださいね♪」


 なにがなんだか分からないが、全身から溢れ出す汗が恐怖を感じていた!

「太平洋司令官! 大至急、回避行動を命じろ! 早くだ!」

「は!」


 「我々はモニターで観察しましょうかね♪♪」


 島で一番大きい建物の地下へ降りて行くと、

複数のモニターが並んだ監視室の様な場所に案内され大統領達は動揺する。


「環礁地帯全てが監視出来るのか?」

「どおりで特殊部隊が・・・」

 思わず言葉を漏らした艦隊司令官に大統領が睨む!

 

 「(笑)」


「・・・」

 「ご安心ください、全員生きておりますから(笑)」

「「な!」」

 

 何度か潜入作戦を実行したが、全員音信不通となり消息が途絶えていた特殊部隊、

流人達が丁重に預かっていると聞かされ早くも敗北を感じていた。


 

 時刻が迫ると、僕から最終確認を流人に求める、

「サジタリウスの矢、着弾地点に不審船ございません。」

「300km四方に民間船もございません。」

「予定範囲内良好にございます。」

 「そうですか、 それでは射出してください!」


「「射出!」」


 僕の言葉の後に、モニター画面に一瞬だけど海面まで閃光が見えた!

そして・・・

半円状の真っ白い霧の様な雲が広がった様に見えたが一瞬で掻き消され、

衝撃波と高波が発生し波紋を描いて行く!


「第一派の高波が50m以上に成長!」

「流人様!」

 「50mなら大丈夫でしょう?♪♪」


 安易に思っている流人、しかし紅丸や特に米国海軍の関係者達が騒いでいた!


 「300m以上の空母がいるのだから大丈夫でしょう?」

「流人様! かの国の艦船を我々と同様と思うのはおやめください。」

 「え! そんなに脆いのたった50mだよ?」


 司令官や艦隊司令が慌てる!

「大統領! 大破の恐れがございます。」

「大至急、救助隊の編成を!」


 小型艦なら波に乗る事も出来るがそれでも50mはかなり危険な高さだ、

更に、大型艦だと波に乗る事が出来ない、

波に乗る途中で船体に歪みが乗じて折れてしまう為、

出来るだけ波を押し潰して航行するのが常識だった。


 「波を破砕して!」

「無理です! 船舶に近過ぎて波だけを狙えません!」

 「まだ同盟国ですよ! こちらから損害を出してどうするのですか!」

「しかし・・・」


 波が到達するまで時間がゆっくりと進んでいた・・・その時!


「流人♪ 波を破砕すればいいんだね♪」

 「キット!」


 高波と空母の間に真っ白い船体が飛ぶ!

空中に舞い上がった船体が高波の上から押し潰し着水した。


「な! なんだ!」


 空母に居た乗員達はなにが起きたのか分からないが、

大量の海水が水飛沫なって船に当たっていた!


 「白鯨・・・よかった♪」


「白鯨?」

大統領が流人の言葉を聞き漏らさなかったが、周りはそれどころではなかった!


「大統領! あれは核攻撃では?」

「大至急避難を!」


 司令官や海兵隊隊長が慌てるが、冷静な大統領が一喝する!


「どこへ避難すると言うのだ!

ここより安全な場所があるのか?」


「然しですね・・・」

「・・・」


 慌てる仲間達に冷静な対応を求める大統領、

前回の様な不祥事は絶対に起こさせない為にも気丈に振る舞っていた。


そして空母から知らせが・・・、

全員無事との報告に大統領達が歓喜の悲鳴を上げていた!




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