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第二十話 宴 来客。

 神々に酒を注ぎ、肴を味わって頂く

「美味いな」山爺が酒を呑んで真っ先に口にした。

「誠に美味じゃな」お婆も山爺に誘われる様に酒を口にする。


「海の幸が多いようだが?」椎爺が肴を見渡し流人に告げた。

 「はい、四方を海に囲まれた環境ですので宜しいかと。」っと問いに答えた。


「そうであるなぁ」お婆も魚の方が好みの様だった。

「儂は酒が旨ければ良いぞ!美味い。」山爺はお酒が大好きの様子。

「この様な美味い酒は久いのぉ」桜爺も山爺に沿って酒を褒める。


 「喜んで頂き、嬉しく思います。」好みの酒が好評で嬉しい流人。


「何度も足を運んでおったからのぉ?」お婆が告げる。

「うむ?そうなのかのぉ?」山爺も関心を持つ。


 「何度も足を運んだのは、店の人が良いからであって・・・」


「花見の時も頼んだぞ!」桜爺が助け舟を出す。

 「お任せ下さい、保養所も出来ましたので来年こそは」


「それには儂らは参加出来るのか?」山爺が流人に問う

 「お呼び致しますよ。賑やかな方が宜しいでしょう。」

「楽しみよのぉ」酒を呑みながら楽しげな山爺。


「楽しみにせんでも、今も楽しいぞ!」椎爺が山爺を諭す。

「誠にそうじゃぞ山の」お婆も山爺を戒める。


「酒が飲めるのじゃ、楽しいに決まっておろう、わっはっはぁ」

少し弁えを外した事に気が付き、慌てる誤魔化す山爺。


 豪快な山爺の笑い声が山に響き渡る!

勿論、人には聞こえない声だが、木々や風が揺れていた。


 周囲で微かだが気配を感じる、

その気配が徐々に大きくなって、微かに声も聞き取れる様になってゆく

「美味しそうだなぁ」

「山神様だ!」

「あれは御婆様では無いか?」  「人の子と楽しげであるなぁ」

「人の子と宴とは異様じゃなぁ」 「あの人の子!山神様が見えるのか?」

「本当に人の子か?」

「どちらでも良い、楽しそうだな」

「旨そうだなぁ」

 

 土地神にしては霊力が弱く、覇気が薄い。

黒天と紅丸が構えた時、山爺が強い言霊を発する!

「汝等は餓鬼魂かぁ〜!(怒)」楽しい宴を邪魔され憤慨する山爺。

「ひえぇ〜!」

「御許し下さいませ!山神様。」   「おゆるしぉ〜」


「流人よ、酒と肴はまだあるかのぉ?」少し哀れに思うた山爺が問う、

 「はい沢山御座います。 誰でしょう?」

「木霊じゃ!」とお婆が説いた。

 「木霊?」


 霊木ほど強力な霊力を持たない弱い樹木に宿った精霊や霊体を木霊と言う

普段は表に出ず、普通の木々と同様の暮らしをしているが、

偶に悪戯をしたり、人助けをしたりと気分屋である。


「この地を有する流人じゃ、挨拶致せ!」 

 山爺が腰を上げて周囲の木霊達に説いた。


「人の子に挨拶?」

「我等が挨拶?何故?」  「人の子に、何故挨拶?」

 木霊達の不埒は素行に苛立つ山爺が一喝!

「嫌なら失せるがいい!(怒)」 強い言霊が周囲を切り裂く!


「山神様がお怒りじゃ」

「我等が何をした?」  「人の子に挨拶せないいだぞ!」

 慌て慄く木霊達。


「人の子では無いわ〜!流人じゃ!(怒)」と、激昂する山爺、

「礼儀もならぬなら消えて無くなるがよいぞ!(怒)」お婆様まで憤慨した。


「確かに消え失せるがよい(怒)」 「楽しい宴を邪魔しおって!(怒)」

椎爺も桜爺も、木霊達の素行に激怒していた。


「ひえぇ〜」

「おゆるしおぉ〜」  「流人、許してください」


「なんじゃ挨拶できるではないか。」と、落ち着く山爺、

「まったくだよ、」 お婆が酒を呑み出す。


「流人、こんにちは。」

「流人、よろしく。」 「流人、邪魔してごめんね。」

 木霊達が流人に謝罪する。


 「木霊達、こんにちは。」

「挨拶出来た。」

「言葉が通じた。」 「楽しい♪」

 人と会話が出来た事を素直に喜ぶ木霊達。


 「山爺、木霊は姿を?」

「うむ、無理じゃな、力が足りぬのじゃ」

「じゃが供物は頂けよう?」と、お婆が説いた。


「くれるの?」

「美味しそうな料理?」  「食べたい、料理。」

 「どうすれば良いのでしょうか?」

 

 困る流人に、供物の作法を伝授するお婆、

 切り株の上に料理と酒を置いて、大きく柏手一つ打つ、

すると料理と酒が光の粒子に変わって四方へと飛んで行く。


「美味しい♪」

「美味しいお酒、ありがとう流人♪」

「美味しい料理、流人ありがとう♪」


 「あれだけの量で全員に行き渡ったのでしょうか?」

「全員には無理じゃな、木霊は多いゆえな、」山爺が酒を口にしながら説いた。


「然し、木霊同士で意思疎通と共有が出来るから、

   味や香り、感情や食感などは分かち合えるから心配要らんじゃろう。」

 お婆が親切に補足して頂いた。


 「今まで知らずに木々を切り倒していましたが、これからは注意しないと」

「気遣い無用じゃ、奴らは無限に存在して全てで一つなのじゃ」

「流人にはまだ難しいと思うぞ山のよ」

「そうかのぉ」

 木々一つ一つに木霊は宿るが実態は無い、

山や森の発する霊力に同調して生まれるので力が弱く、

木々の助力が無くては直ぐに消滅してしますからだ、


 然し、山や森から発した霊力が全て一つの木霊とも言えるのだ、

空気の無くなる事を心配するのと同様で、足りない分は他所から流れ込む、

山や森が無くならない限りは。



「さぁ、儂らも飲み直しましょう。」 椎爺が音頭を取る。

「そうじゃ、さぁさぁ飲みましょう。」桜爺が従う

「おぉ飲むぞぉ〜」山爺が一気に飲み干し答える!


「山の〜其方が餓鬼に思えるぞ!」 お婆が山爺を煽るが、

「餓鬼でも良い、美味いし楽しいのだからのぉ」開き直った山爺


「確かにのぉ〜」半分呆れながら楽しむお婆。


 木霊達も喜んでいる、

それを山々の雰囲気から感じ取れる気がした流人でした。

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