第百八十四話 御隠居様からの忠告
クリスマスまで一週間、
希空達のプレゼントも確保して上機嫌の流人を渡邉が迎えに来た。
なんでも御隠居様自らの呼び出しとかで、渡邉は少し焦っていた。
「落ち着いた方がいいですよ♪」
「だってよぉ・・・流人なにやったんだ?」
「さぁ〜・・・色々あり過ぎて分かりません。(笑)」
「お前なぁ・・・。」
「でも、事故ったら御咎めは邉さんですよ(笑)」
「ふ〜・・・そうだな。」
「なにか先輩らしくないですね?」
「なんだ陣内まで!」
「どうしたんですか?」
「本当にね(笑)」
「電話の対応がさぁ・・・尖ってたんだよなぁ」
「御隠居様ですか?」
「あぁ〜・・・」
「考えても仕方ないでしょう(笑)」
「確かになぁ」
「それより流人君、それノート型のPCですよね?」
「そうですよ♪」
「大分古いタイプの様ですけど?」
「そうなんですか? 希空達の手作りですから♪♪」
「そうなんだぁ」
「えぇ〜そんなもんまで作る様になったんだ♪」
「中身は最新のPC以上のスペックだって言ってましたよ♪」
「・・・凄げぇ〜なぁ」
「僕もお願いしようかな・・・。」
「♪♪」
衛星通信を使いキットからネットに繋がっている為
光速通信より早く安定していた。
「それにしても最近コイツばかりテレビで見るなぁ」
「時の人ですからね。」
「あぁ・・・私その人苦手なので・・・。」
「そうなんですか?」
「俺も苦手だなぁ」
「先輩はお金持ちが嫌いなだけでしょう(笑)」
「阿保か! 流人は大好きだぞ♪」
「ありがとうございます、邉さん♪ でも私はお金持ちじゃないのでね(笑)」
「流人君以上の金持ちなんて数えるほどですよ?」
「陣内! 甘いぞ! 流人以上の金持ちなんていないぞ!」
「だから金持ちじゃないですって(怒)」
流人には持論があった、
金持ちか金持ちじゃないかの境界線は、持ち金を数えられるか?られないか?
金持ちは自分の資産を数えない、何故なら数えている内に増えるから、
数えられないのが金持ちだと思っていた。
「それだったら、流人だって分からねぇだろう?」
「そうですよね?」
「そう言う意味では金持ちに入りますが・・・」
流人にはもう一つの持論があった、
好きな事、好きな物が全て手に入るのが金持ちで、
手に出来ていない欲しい物があるのは金持ちじゃないと言う。
「お金があるなら欲しい物が買えるでしょう?」
「確かに・・・流人の欲しいものってなんだよ?」
「あ! 興味ありますそれ♪」
「私ですか・・・宇宙船と通信衛星と大きな島ですかね?」
「・・・」
「・・・」
「あれ? どうしました?」
「発想がな・・・飛び抜けててな・・・」
「そうですね・・・それは無理があるかなぁ」
「宇宙船が240兆で通信衛星が80兆で大きい島は・・・分かりません。」
「調べたのかよ!」
「当然です♪ 本当に欲しいんだもん(笑)」
「大きな島と、・・・320兆円ですか・・・」
「まだまだ足りません。」
「足りませんって、買うつもりか?」
「当然でしょう? 買わない物を調べたりしませんよ?」
「(笑) 確かにそうだけどね・・・。」
「320兆だぞ?」
「邉さん貸して?(笑)」
「給料を何年分前借りすればいいんだ?」
「先輩!本気ですか?」
「阿保か!」
「(笑)」
冗談と思っている二人と、早々に実現する為に行動している流人達だった。
鎌◯に到着、御隠居様の屋敷に向かうと大勢の黒服が御隠居の側にいた。
「御隠居♪ 流人を連れて来たよ!」
「来たかい?」
「お呼びと聞きましたので、参りましたがいかがなされました?」
「そうだね・・・ここからは他言無用だよ!」
「俺たちは庭に居ますので、陣内!」
「はい。」
渡邉達が庭に出ると黒服達も部屋から出て、御隠居様と二人だけになる。
「テレビ局が狙われている。」
「テレビ局ですか?」
「あぁ〜既に3割ほど株価が買われていてね、
子会社のテレビ局が狙いなんだろうね。」
「・・・それって、バブルドアですか?」
「! なんだい知っていたのかい?」
「はい、ファンドが2〜3社既に買い漁っていましたので、
資金源はバブルドアの社長と報告を受けておりますが?」
「・・・流石だね・・・。」
「確か狙っているのは・・・あ!御隠居様の贔屓の局でしたね?」
「別に贔屓ってほどでもないんだよ、付き合いでね。」
「付き合いですか・・・阻止しましょうか?」
「それは私の方でするから大丈夫だよ♪」
御隠居様が少しだけ流人に説く、
お金の運用は個々の自由、誰に咎められる筋合いもないけど、
その行動で、多くの人の人生が左右される様な行為は、慎重に繊細に行うこと、
成金丸出しのバブルドアの代表の様にはなって欲しくないと、
御隠居様が、流人に願う様にも聞こえた。
「私は、なにを?」
「今回の買収に関わらないで欲しいんだよ?」
「・・・承知しました。」
「ホッとしたよ♪」
「どうしてでしょうか?」
「私がね・・・本気を出しても、流人、アンタが相手じゃ勝てないからね」
「ご冗談を(笑)」
「本気だよ・・・だから頼むんだよ、この件には関わらないおくれ。」
「ただ御隠居様、放置しておりますと、第二、第三の禿鷹が群がって来ますよ?」
「そうだね、 少々甘やかし過ぎたね・・・、」
野球チームを買収しようと企んだり、
色々騒ぎを起こしては注目を浴びて人気を得る、
まるでどこぞの人気取りの総理大臣と同じ・・・っと流人は毛嫌いしていた。
「流人、 バブルドアの株は持っているのかい?」
「私、個人は持っていませんが、社内で20%は保有しているはずですよ?」
「そんなにかい?」
「そろそろ潰れそうですからあの会社(笑)」
「潰れそうなのに保有しているのかい?」
「現物を見せ玉にして、空売りを仕掛けるタイミング待ちなんです。」
「・・・怖いねプロジェクトRは・・・。」
「バブルドアの代表って誰だったかね?」
「すみません、興味の無い人の名前は覚えられないので・・・。」
時価総額1兆円に届くかと言うバブルドアの代表を、興味がないと切り捨てる
流人の恐ろしさ御隠居様は肌で感じ取っていた。
「これ以上はお互いに控えた方がよさそうだね。」
「承知いたしました(笑)」
「御隠居様、一つだけ宜しいでしょうか?」
「なんだい改まって?」
「バブルドアの後ろにはK国がおりますのでご注意を」
「・・・ありがとうよ。」
会談を終えて庭に出ると邉さんが声を掛けて来た!
「終わったのか?」
「はい♪」
「それじゃ御隠居、帰ります。」
「すまなかったね。」
「失礼します。」
「御隠居様またね♪」
「なぁ〜流人?」
「なんでしょうか?」
「飯、食っていかねぇか?」
「そうですねいいですけど・・・中央林間辺りで食べません?」
「林間?・・・美味いお店があるのか?」
「・・・あるんですか?」
「流人?」
「あぁ〜 会いたい子がいるんですよ(笑)」
「子?」
「はい 女の子です。」
「・・・分かった行こう♪」
「先輩?」
「流人が会いたいって言うんだぞ♪」
「そうですけど・・・」
「絶対美人に決まっているだろう♪」
「・・・先輩には無理ですよ?」
「分かり切った事を聞くんじゃない(怒) 見るだけだ♪」
大◯市中央林間の住宅街に向かった流人達、
「こんなところに凄い住宅街があるんだな」
「近代的な豪邸ばかりですね?」
「だから撮影とかでよく使われているらしいですよ♪」
「撮影?」
「あそこの定食屋さんにしませんか?」
「おぉ・・・なんか親しみを感じる店だな」
「そうですね、 普通ぽいお店ですね。」
中に入ると、大勢の人がご飯を食べていた。
「すみません。」
「あぁ〜、ここでいいですよ♪」
「え!」
店員の返事を待たずに、少女の座る席に向かう流人、
「夏歩さんだよね? 流人です♪」
「・・・流人さん?」
「はい、私が流人です♪ なに頼みました?」
「チャーハン。」
「すみません同じ物をください♪」
「よく分かりましたねここが?」
「当然です♪」
「なんだよ、知り合いか?」
「いえ、初めてですよね(笑)」
「はい、初対面です(笑)」
夏歩さんの笑顔が清楚で、美しかった♪
「大丈夫ですか邉さん?」
「おっおぅ」
すると店員が来て、
「え〜っと、残りのお二人はご注文は?」
「そうだな・・・とんかつ定食!」
「僕はハンバーグ定食をお願いします。」
「はい、チャーハン、とんかつ、ハンバーグですね?」
「「「はい」」」
「(笑)」
「どうでしょうかね?」
「なんですか?」
「私と遊んでもらえないでしょうかね?」
「私ですか?」
「はい、細野さんのお薦めらしいですから(笑)」
「社長の?」
「はい、一人生贄をくださいって頼んだらあなたでした(笑)」
「生贄ですか私・・・。」
「はいこれ、」
「忘年会ですか?」
「そう、大勢来るから、勉強になるよ色々とね♪」
「勉強?」
「おまたせしました、チャーハンの方!」
「「はい♪」」
「あとはマネージャさんにでも聞いてください♪」
「マネージャーさんにですか?」
「はい、怪しいでしょう(笑) いただきます♪♪」
マイペースの流人に警戒していた夏歩さん、
夏に吹く風の様に清々しい笑顔だった。




