第百七十八話 society派ですから
日付が替わりそうな時刻になっても参加者のテンションが高い中、
和っ子さんがこそっと流人に告げる。
「どうしたんですか、トイレだったら・・・」
「違うわ! (大笑) そろそろ試飲いない?」
「!! 忘れてました(汗)」
「やっぱり(大笑)」
「未成年は・・・我慢してね♪」
「「は〜い♪」」
少し残念そうな表情の優ちゃんだったが我慢していた。
眷属達がグラスを運び込み、純白を何本か持って来ると、
「おぉ〜やっとか?♪」
「楽しみにしてたなら言ってくださいよ師匠(笑)」
「女の子の迫力に入れる訳ないだろう流人よぉ(笑)」
「確かに・・・」
「これ酒って銘柄なの?」
「見え辛いよね?」
「元々は供物様に造った商品ですから名前は無いです。」
「それじゃぁどうやって注文するのさぁ(大笑)」
「売り物ではないのでね、残念ですが(笑)」
「「「えぇ!」」」
一番最初に供物用のお酒を造りたかった事と、
処女作なので純白のラベルにした事、
一応区別出来る様に透かしで酒と表示してある事を告げる。
「神様用のお酒・・・」
「そんなの・・・飲んでいいの?」
「大丈夫ですよ♪ 」
「なんか神々しく見えて来たわ(大笑)」
「神◯川産ですけどね(笑)」
「本当、ごめんって(大笑)」
流人が一人一人に酒を注いで回る。
「匂いは・・・ごめんもう、酔っ払っているかな?」
「匂いは弱いんですよね・・・それが楽しいですけど(笑)」
「楽しい?」
「飲んでみてください♪♪」
「「「「「いただきます♪」」」」」
「「!!」」
「なにこれ!」
「凄い! 口一杯に味が広がるよ♪」
「鼻から抜ける香りもいいなぁ♪」
「えぇ〜 凄い♪」
「どうでしょう、最初の印象とかなり違うでしょう(笑)」
「本当・・・なんで最初は匂いが薄いんだろう?」
「飲むと凄い広がるのにね?」
「・・・流人よぉ、凄いなおまえ・・・」
「優秀な杜氏さんが助っ人に来てくださいましたのでね、
数年を覚悟していたのですが、年内に出来るとは思ってませんでした(笑)」
そんな中、岡部さんが一言感想を述べる。
「なんか・・・流人みたいだよね?」
「「!!」」
「「わかるう〜ぅ♪ 流人だよこのお酒(笑) 」
「??」
何を言われているのか? なんで例えられているのか分からない流人だった。
「最初は印象が薄いんだよね流人って♪」
「そうそう♪ 角に居たり、オーラを消していたりね♪」
「だけど流人を知っていくと、個性が強いんだよね(笑)」
「強いって言うか常識が・・・ね(笑)」
「常識が石油王なんだよね(笑)」
「「そうだね♪」」
「このお酒も、飲んでみると全然違うよね♪」
「楽しくなるよ♪」
「流人と同じなんだよね(笑)」
「「「言えてる」」」
少し酔っている為か、普段聞けない本音の様な意見が聞けて、
嬉しいと流人は思っていた。
「いいですね、素直な感想は大変参考になります♪♪」
「でもさぁ・・・一般に売らないんでしょう?(大笑)」
「もったいないよね。」
「そこまで流人と一緒にしなくてもね・・。」
「一緒?」
「表に出たくないって考え?」
「あぁ〜あ♪」
「そう言う意味ではないんですよ?」
勿論、販売するお酒も造っていく、
値段が手ごろに抑えられる様に考慮して販売も考えていた。
「ウチにはね大酒飲みが大勢いるから、販売の事を考えなくても、
消費していただけるので心配ないんですよね(笑)」
「(大笑) まかせなさ〜い(大笑)」
「和っ子!手伝うよ♪」
「観ちゃんと私だけで4〜5本は毎日いけるね(大笑)」
「流人よぉ、店では、ださねぇのか?」
師匠が美食倶楽部での提供を問う。
「勿論♪ お出ししますよ(笑) もっといいお酒もね♪♪」
「もっといい酒があるのか?」
「これ以上の♪」
「最高だね♪(大笑)」
「今、杜氏達が造っていますからお楽しみに♪♪」
「それは・・・楽しみだのぉ〜♪」
「よ!バカ殿♪」
「(大笑)」
気分がいい師匠が、優香の隣にいた二人に質問をし始める!
「お嬢さん達は、流人とどこで知り合ったの?」
「あ! それ私も知りたい♪」
「なんだ優香も知らないのか?」
「知らないよ、だって滅多に会わないもん♪」
「バラエティー班だもんな(笑)」
「こら!けん!(怒)」
「おい、俺を呼び捨て出来るのはお前だけだぞ優香♪(笑)」
賑わう中、綾ちゃんが口を開いた、
「私、仕事を辞めて実家へ帰ろうと思ってたんです。」
「え! もったいない!」
「なんで、順調そうに見えるけど?」
「最近は、流人さんの言う通り女優としてのお仕事が増えて来たんですけど、
少し前まで、グラビアの撮影とか水着とかばかりだったので不安で・・・」
「あぁ〜・・・わかる。」
「私も、最近水着がなくなったかな?」
「俺は、優香の水着楽しみなんだけどなぁ」
師匠が場を明るくしようと努めるが、優香が叱咤!
「黙ってて! お座り!」
「くぅ〜ん・・・」
「それで?」
「1年頑張ってそれでも嫌だったら辞めればいいって、
流人さんが言ってくださって、気が楽になったら、
女優のお仕事もいただける様になって・・・。」
「なるほど・・・よかったね♪」
「はい♪」
「市原さんは?」
優香ちゃんが市原さんの話を聞きたいと話を振る!
「私は、初めてのドラマ出演で・・・その・・・キスシーンがあって・・・」
「キスシーン?」
「それで・・・経験が無かったので・・・流人さんに朝まで・・・」
「!!」
「ちょっと待って! 朝まで?」
「どうしたの?」
「公園で朝までキスの練習してたんだよ♪」
「はい・・・。」
「「「「「えぇ〜!!」」」」」
「市原さん・・・流人とキスしたの?」
「・・・はい・・・」
「練習だよ(笑)」
「練習でも・・・ねぇ・・・」
「・・・しました。」
「??」
不思議そうな流人に問い詰める女性陣だが、
流人は女優としての覚悟と割り切っていた。
「覚悟?」
「女優さんだけじゃないだろう? モデルだって覚悟があるだろう?」
「どんな?」
「たとえばさぁ・・・」
ファッションショーのランウェイでは華々しく振る舞っているモデルでも
ステージ裏では裸で次のステージの衣装やメイクを受けている。
勿論女性陣だけの空間じゃなく男性もいる中だけど、
仕事と割り切って裸になっているのではないのかとモデル達に聞く。
「確かに・・・」
「そんな事考えている時間ないもんね?」
「別にやらしい目で見ないしね、男性のほとんどが、あっちだよね?」
「うん(笑)だから気にした事なかった」
「私も何度か居ましたよね?」
「「あぁあ〜流人は別に・・・ね?」」
「なんだそれ! それと同じでしょう?」
「私も・・・裸になりました。」
「え! 綾ちゃん?」
「流人さんに言われて・・・裸になって・・・
でも全然やらしいって感じしませんでした。」
「流人!」
「・・・うん綾ちゃんは・・・天然かな(汗)」
それからしばらく女優論やモデル論を話し合う、
キスシーンやそれ以上の事をする覚悟を持つ女優にとって
糧としての行為は別だと、それはモデルも同じだと論じた。
「でもさぁ・・・」
「・・・言いたいことわかる。」
「なんだ、 あぁ枕とか言う都市伝説ね?」
「うん・・・。」
「どうなのけんちゃん?」
「ぶっほぉ! ゲホ ゲホ なんだよ優香急に!」
「けんちゃんクラスならあるのかなって思って」
溢したお酒を拭きながら、師匠が芸能界の一部を説く、
「あるか、ないか?で言ったらあるだろう、
俺も何度か似た様な接待を受けたしな♪」
「えぇ〜 けんちゃん最低!」
「いやぁ〜さぁ、これもさっきまでの話と同じだろう、覚悟の問題だよ優香、
チャンスを掴む為に、新しい世界に飛び込む為の覚悟だよ」
「最低〜」
「岡部さんの気持ちも分かるけどね、それは大手に所属している傲慢だよ」
「え!」
大手なら、定期的に番組などに出演するタレントの枠をいただけるが、
小さい事務所や他所のセクシー系の事務所などにはそのチャンスがない。
それでも、メディアで露出する事で人気を得る事が出来ると信じて、
承諾する女性もいると説明する。
「そうなんだよなぁ・・・セクシー系は大変なんだよなぁ」
「そうなの?」
「あぁ、 俺はさぁ 何度か共演して分かり合えてる子がいいんだけど、
新しい・・・若い子の方がってなぁ・・・」
「けんちゃんだって若い子好きでしょう?」
「そうだけどさぁ・・・テンポとか場慣れしてないと分からないじゃんかよ!」
「そうだね」
「だから優香を指名しているだけどな(笑)」
「私は東村さんに枕しないよ!」
「しなくていいよ!(笑)」
「何人か、本当に少数だけど、それでチャンスを掴んだ子も居ると思う、
だけどそんな子が世間に公表する筈が無いでしょう?」
「私だったらしない。」
「そうだね・・・いまの場所を失いそうだし」
「ようは、
覚悟を決めて乗ったのにチャンスを掴めなかった子が言いふらしている、
そして、チャンスも与えられない様な小者が餌食を狙っているってこと。」
「・・・」
「・・・」
「気をつけないとね・・・」
「そうだね・・・」
「いやいや、みんなは無いでしょう、もう?」
「そうでも無いよね?」
「うん」
「事務所からって言うのは無いけど 誘われるよね?」
「うん・・・あるね」
「そんなのは全部断りなさい! 私が責任を取りますから(怒)」
流人の発言に誰もが安心した。




