第百七十六話 ナンパ
別館に戻った流人達、
そこへ紅丸から知らせが来る。
どうやら今夜の紅葉の集まりだが、年末年始の番組収録で忙しく
参加者が少ないと報告をうけた。
「仕事が忙しい事はいい事でしょう♪」
「和っ子様とお松様は遅れて参加するとの事です。」
「承知いたしました。」
海外ロケなどで参加が出来ない子が多く、
少し残念な気分の流人だったが、
撮影の片隅でくすんでいた子達が頑張って、多忙になった事を喜んだ。
「参加者はアナウンサーの三人と・・・だけ?」
「はい・・・。」
開始時刻の20時と言うのも良くなかった様で、
殆どの番組収録は20時終わり(予定)がほとんどで、
収録状況では延長する事もよくある事だった。
「!!」
木霊の声を聞いた流人が外へ向かう。
「どうした流人! 出掛けるのか?」
「ナンパして来ようと思いまして♪ 邉さんどうします?」
「ナ・ナンパ? 流人がか?(笑)」
「酷いですね♪」
「分かった、俺が付いて行くから陣内は休んでろ!」
「先輩で大丈夫ですか?」
「!! どう言う意味だ!」
「行きますよ(笑)」
流人は邉さんと車で出発する!
「一応1時間前には帰って来ますので宜しくお願いしますね陣さん♪」
「気をつけてね流人君!」
「はい♪ それじゃぁ、邉さん麻布方面へお願いします。」
「麻布か? 了解♪」
表参道から裏道を通り麻布へ・・・
「ここら辺でのはずですが・・・」
「はず?」
十番方面へゆっくり進むとタクシーを待っている女性が二人!
「いました♪」
「いましたって・・・流人?」
「邉さん、あの二人に寄せてください。」
「寄せてって・・・大丈夫なのか?」
タクシーを求める為に道沿いに出ていた女性の前に車を止めると
「よぉ〜ねぇちゃん♪ 茶ぁ〜しばき倒しに行きませんか?♪♪」
「なんだ?」
「「(笑) 何しているんですか流人さん(笑)」」
「ナンパ♪♪(笑)」
「なんだ知り合いか?」
「以前知り合ったなっちゃんです♪ 」
「はじめまして♪」
どこ行くのか聞くと自宅に帰るそうで、友達が料理の材料を持っていた。
「何作るの??」
「(笑) 寒くなって来たので郷土料理のがめ煮です。」
「うん♪ 食べたい! ウチで作って!」
「「え!」」
「なっちゃん、美味しいお酒を提供するからね? がめ煮宜しく♪♪」
どうしたものか? 友達を相談し承諾した。
「いいですけど・・・どこで?」
「これからね、紅葉見ながら宴するから・・・。」
そう言いつつ流人が車を降りる。
「邉さん! なっちゃんとお友達を連れて先に帰ってください、
材料が足らなかった、下のスタッフに言っていただければ用意しますので。」
「お!おい流人、お前はどうするんだ?」
「もう一人・・・彼処の店で飲んでいる人を誘って帰ります♪」
「彼処って・・・」
隠れ家風のお店らしき建物はあるが、中の様子など分かるはずもなかった。
「それじゃ・・・なっちゃんさん?っとお友達さん、どうぞ」
渡邉が後部座席のドアを開け誘う。
「・・・はい、行くよ、里穂ちゃん♪」
「大丈夫なのなっちゃん?」
「(笑) 大丈夫だよ♪ あの人・・・はね(笑)」
「俺も一応大丈夫ですから・・・。」
「「(笑)」」
車を見送ると流人は店内に入る。
「すみません、知り合いが居るはずなんですが?」
「知り合いですか?」
困った様子の受付の店員さんがどう対応していいか悩んでいた時、
「あ! 運転手さん♪」
「!! これは流人さん!」
師匠の運転手さんがいつもの様にカウンターの隅でお茶を飲んでいた。
「お客様の知り合いですか?」
「私と申しますより主人の友人です。」
「あ! 失礼いたしました。」
納得したのか、流人を師匠が飲んでいる個室へ案内する。
「お連れ様が到着なされました。」
「連れ?」
「師匠♪」
「!! なんでぇ? ここが分かったの?」
「なんとなく♪」
流人が個室へ入って行くと店員がそっと扉を閉めた。
「へぇ〜・・・」
「なんだよ?」
「こう言うお店でイチャイチャしているんだぁ〜?(笑)」
「イチャイチャはしてないだろう?」
「今日はね? ・・・どうしました? フラれたのかな?」
「そうそうドタキャン・・・って! 違うわ!(笑)」
三味線の稽古の帰りだった師匠、
飲み仲間が仕事で遅くならないと集まらなかったから、
少し早めに食事をとって時間を潰していた。
「師匠は、年末年始の撮影無いんですか?」
「俺かぁ〜、俺くらいの大御所になると終わっているよ♪」
「まだ1カ月あるんですよ?」
「あぁ〜収録は終わったよ、あとは生があるだけだな(笑)」
「へぇ・・・」
「流人はどうしたんだ、こんなところで?」
「今日はね、紅葉を見ながら宴を開くんですが、
集まりが悪いのでナンパをしに(笑)」
「ナンパかぁ・・・だったらこんな場所にいないで・・・って俺か?」
「はい♪」
「普通女だろう?」
「女性はさっきふたり成功しましたので(笑)」
「ほぉ〜・・・そちも中々やるものだのぉ(笑)」
「で、どうでしょうか?」
「・・・紅葉かぁ〜・・・いいなぁ♪」
「よかったぁ〜♪」
「おいまだ決まってないぞ!」
「そんなぁ〜 困るんですよ!」
「なんでだよ!?」
「だって師匠の車で帰るつもりだったから、
女の子乗せて先に車を返しちゃったんだもん!」
「(笑) 俺が断ったら歩きか?(笑)」
「そうですけど、断らないですよね?師匠♪♪」
「しかたねぇ〜なぁ(笑)」
食事を済ませ会計を払い流人を乗せて神宮方面に向かう。
「結構な時間になりましたね?」
「19時を過ぎたな?」
「運転手さん20時までにはお願いします。」
「(笑) 承知いたしました。」
「なぁ〜流人、こんな場所で・・・。」
「ご心配なく・・・あれ? 師匠ウチに来た事なかった?」
「なんだ、流人の家に行くのか? 初めてだぞ!」
「ちょっと変わっていますが、落ち着きますよ(笑)」
「あのぉ・・このまま中へ入っても宜しいのでしょうか?」
運転手さんが門の中へ入っていいのか伺うので、地下の駐車場に止めていただき、
運転手さんには、
シャワールームと仮眠用の部屋を用意していただくのでゆっくりしていただく。
「食事も出来ますので気軽に申し出てください。」
「あ・・・ありがとうございます。」
「ここが自宅なのか?」
「ここは私専用の担当者が駐在しているスペースです。」
「専用?」
「はい、仮眠室も食堂も風呂もありますので、ご安心ください。」
「・・・。」
そう言いながら、運転手さんをスタッフの眷属に託して、
師匠と共に3階へ・・・!!
「なんだここは!」
「日本風庭園の温室です♪」
「室内なのか? ここが?」
「春は桜、秋は紅葉を愛でる為の空間です。」
「神宮前だぞ・・・ここは?」
「そうですよ♪♪」
都内でも地価の高い神宮前にこれだけの空間を贅沢に使っている流人に、
芸能界で大御所とまで言われている師匠が呆れていた。
「流人! 遅い!!」
「なんで友里がいるのさぁ?」
友里だけじゃなく、海外へ仕事へ行っていた筈のメンバーが流人の帰りを待っていた!
「なんでって、参加するに決まっているじゃん!」
「そうですよね?」
「仕事は?」
「終わったよ♪」
プロデューサーやスポンサーの方々に一泊出来ると勧められたが、
予定があると直行で帰国してそのまま参加していた。
「も〜遅い・・・!! 東村けん!」
「だから、また、呼び捨てかよ!(笑)」
「ごめんなさぁ〜い!」
「えぇ〜っと、参加者が少ないと思って、
なっちゃんとなっちゃんのお友達と師匠をナンパして来ました。」
「なっちゃんです。」
「里穂です。」
「けんちゃんです。♪♪」
「可愛くない!」
「おい!」
「「「「「(笑)」」」」」
「なっちゃん! がめ煮は?」
「あ!作ってます、あとは煮込むだけです♪」
「ありがとう♪」
「・・・流人! 里穂さん知らないでしょう?」
「?? 里穂さん? お友達だよね?」
「お友達って言うより先輩です。」
「先輩?」
「女優さんだよ里穂さんって有名な!」
「そうなの?」
「最近、テレビとかの仕事をしてませんので、◯◯里穂と申します。」
「はじめまして、流人と言います、なっちゃんの先輩なら大歓迎です♪」
「・・・はい(笑)」
「えぇ〜っと、ごめ〜ん! 内さん師匠をお願いします。」
「あ! はぁ〜い、東村さんこちらにどうぞ♪」
「おぉ〜・・・いいのか♪♪」
「っで、優! 同郷の先輩だろ仲良くな♪」
「あ!どうも初めまして、優と申します。」
「こちらこそ初めまして、里穂です。」
「なっちゃんです。」
ぎこちない挨拶を交わす同郷の3人だった。
「それじゃぁ・・・はじめましょうか♪」
「「「賛成」」」
「「「「「(笑)」」」」」
紅葉の彩りが映える様に照明が照らされ宴がはじまった・・・。




