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第百七十一話 震災2004、支援物資

 新潟県内で起こった大地震の為に、

支援物資を送りたいと言う流人に対して、トマト運輸の理事長は、

首を傾げながらも笑みを零していた。


「若いのぉ、お前さんがやろうとしている事は、国が行う事だ!」

 「そうですね・・・でも個人や企業が行っては駄目とは聞いておりません。」

「(笑) たしかにな♪」


 実際に過去の震災時、個人が物資を運び込み支援をした例は多々あるのだが、

理事長は、後ろに控えている紅丸が気になっていた。


「トマト運輸の力を借りたいって言うんだ! 

それなりの物資量なんだっろうね?」


 「紅丸!」

「はい、流人様。」


 紅丸が既に用意してある物資のリストを理事長に渡す

 「いかがでしょうか?」

「・・・如何って・・・ふざけているのか!」


 リストの中には消毒液などの医薬品や、

保存出来るカップ麺も記載されていたが、物資の大半が生鮮食品だった。


 そしてその量は、理事長が冷やかし混じりで言った国家レベルの量で、

大型の10tトラック100台以上必要だった!


「こんな量、自衛隊にでもなけりゃ無理だ!」

 「その自衛隊は、国からの物資を運ぶので忙しいのでしょう?」

「・・・」

 「出来ませんか?」

「我が社にそれ程の運搬力は無い!」

 「一度でなくて結構です、数度、十数回に分けて隈無く配給していただければ?」

「その為に、御社の配達員の知識と小型の宅配車が必要なのです。」

「うちの・・・小型車が?」


 避難所へは国が物資を送るだろうし、県や市町村で備えた物があるが、

地方特有の自宅から離れない民、特に老人や幼い子が居る家庭では、

迷惑がかかると勝手に思い、自宅で堪える人が多い。


 「役場にお願いして、町内放送を行なっていただき、

 物資を受け取ってもらいたいのです。」


 流人が、一人じゃ無い、誰かが見守っている、

安心を届けて欲しいと言霊を込めて理事長に説く。


「新◯県全域となると数百台は必要だ!」

 必死になにかを考える理事長に紅丸が一言物申す。


「トマトは我なり・・・でしたか、理事長?」

「・・・(笑) (大笑) そうだ♪♪」

「彩音ちゃん♪ 大至急役員を招集してくれないか?」

「承知しました理事長。」


 流人の前に車椅子を近づけ流人に伝える。

「その運搬、トマトが引き受けた!」

 「ありがとうございます。」


「2時間後だ! 2時間で解決する、どこへ荷物を受け取りに行けばいい?」

「群◯県桐生市にある当社の施設に全ての物資を集めてございます。」

「群◯かぁ〜関東からのルート以外も使えるなぁ♪いいぞ(笑)」


「当社の社員を3名ほど置いておきますのでお使いください。」

 紅丸の言葉と同時に会長室のドアが開き僕達3名が立っていた。


「あいわかった。」


 役員を招集して色々忙しくなるので、流人達は引き揚げ、僕達3名を残した。

「流人様!」

 念話で黒天が流人を呼ぶ!


 「どうしました?」

「群馬県内の震災被害で封鎖された道路の復旧工事を当社で引き受けました。」

 「ごくろうさま♪ 通れるって事だね♪♪」

「はい・・・それと・・・」

 「!!」


 流人が贔屓にしていた新◯県の蔵元が震災に遭っていた!


 「状況は!」

「けが人が少数出ております、また、酒蔵が倒壊し早期の復旧は不可能です。」

 「!!」


 師匠も大好きな銘柄の日本酒が倒壊したと聞いて心が乱れた!

「落ち着け流人!」

「けが人はおるようだが死人はおらんのだ!」

「そうだ! 造り手がおれば酒は造れるであろう!」

 「・・・そうですね。」


 三賢者の言葉で少し落ち着いた流人、

 「一旦戻りましょう?」

「御意。」

「そうだな・・・」

「状況整理をしたいです。」

 「そうですね、戻りましょう。」


 ヘリで別館へ戻り、自宅へ向かいたいが、自宅ではヘリ移動が適わない為、

別館のゲストハウスで事態の状況を把握する事にした。

 

 「明日、◯◯酒造へ見舞いに行きますので!」

「承知いたしました。 何人か手伝いを連れて行きましょう。」

 「そうだね、邪魔にならないようにね」

「御意。」


「流人、俺達はどうしたらいい?」

「そうですね、なにか出来ませんかね?」


 流人についている事が仕事だと割り切っていた渡邉と陣内だったが、

ここまで何も出来ない自分達が、これ以上邪魔をしている様にしか思えなかった。

 

 流人が地図を取り出し眺める・・・

 

 「新◯県内に自衛隊基地ってありますかね?」

「あぁ〜あるぞ!」

 

 渡邉が、地図を見ながら基地の場所を指してゆく!


「ここに陸自の高◯駐屯地、そしてここが新◯田駐屯地、

他にもあるが、物資の輸送に使えそうなのはこの2箇所だな?」


 「いいですね、丁度内部からと遠い北部ですか♪ お願いできますか?」

「承知した! 陣内!留守頼むぞ!」

「はい!先輩頑張って!」

「あぁ〜」

 

 「それじゃぁ〜陣さんは、一休みして下さい」

「え!」

 「状況が分かりましたら移動します、移動しなくても徹夜ですよ!」

「・・・1時間ほど休みます。」

 「シャワーとか使ってかまいませんから、

 2時間後の食事時間までお休みください。」

「・・・そうさせていただきます流人君。」


 なんとなく空気を読んで従う陣内だった。


 陣内が部屋から出ると直ぐに紅丸が流人に伺う

「如何なされましたか?」

 「蔵元の見舞いに連れて行く僕だけど、酒造りの僕達にして欲しい。」

「無知より少しでも経験のある者の方が宜しいとお考えでしょうか?」

 「うん・・・不謹慎だけど、手伝う事でなにか学べるかもしれないしね。」

「承知いたしました。」


 「それと・・・」


 流人はどうしても気になる事があるので、

赤爺と山爺に遭って来ると告げて転移した!


 

 群馬県にあるimportant salonの施設裏にある桜の木々が植えられた場所、

そこに木霊達に供物を捧げる祠があるのだが、

その祠の中が緊急時の転移場所となっていた。


 「赤爺・・・そして木霊達よいましょうか?」

「・・・」

 気のせいか山の力が弱く感じた流人、酒に魔力を込めて大地に流すと!

「これ!やめぬか流人よ! もったいないであろう!」

 「赤爺様、お声が聞こえませんでしたので♪」

「う・・・む、 流石に少々疲れたのぉ・・・」

 「周辺の震災の影響が少なく、誠に感謝いたします。」

「儂はまだよい、流人達から力をいただいておったからな・・・。」

 

 酒を注ぎ盃を渡すと一気に飲み干し安堵の表情を見せた!

 

 「そう申されますと?」

「あの地には山々が多くあり、其々が力を持ってはおるのだが、

力が分散している為に守りも弱いのだ!」

 

 信仰の対象は山自体ではなく、冬のスキー場としての愛着や好意なので、

山神としての力が不安定だった。


「山神達も苦渋の決断したのであろう・・・、」

 「決断?」


 スキーシーズンになれば大勢の人間が楽しむ為にこの地に集まって来る

その時に、堪えられぬよりは、人手の少ない今の方が被害は少ないと・・・。


 「ありがたいですね。」

「しかしのぉ・・・」

 その様に察し理解する者は少なかった。


 多くの地元の声がスキーシーズンの来場者の減少を危惧していた。

「地震のせいで・・・」「風評被害が・・・」

 人為的被害より経済的損失しか・・・


 「情けないですね?」

「あれでは、第二波も三波も堪えられぬな・・・。」

 「!! 来るのですか?」

「揺れ戻しと言ってな、あれほどの大きい揺れだと歪みが出来るのだ!

その歪みが元に戻ろうと何度か繰り返し揺れる。」


 「赤爺は?」

「儂は大丈夫じゃ! 鎮魂祭でも力をもらったばかりだしな、

この程度なら願う民に申し訳ないであろう(笑)」


 「いっぱい飲んで、鋭気を養ってください♪」

「おぉ〜♪♪」


 「先ほどから、木霊達の声が聞こえないのですが?」

「あれだけの地脈に当てられたのだ、消し飛んだのであろう!」

 「そんなぁ!」

「心配いらぬ♪ 木々が無事なら、山々が無事なら直ぐに湧こう(笑)」


 周りの桜の木々を見ると微かだが光点が見えた!

 「早く戻ります様に・・・。」


 流人は願いつづ供物を捧げた!


 赤爺と別れて今度は山爺に逢いに行くと、木霊達が出迎えてくれた!

「流人だ!」

「人の子流人だ!」

「代理様流人、なにようだ?」

「供物をくれる流人だ♪」

 「はい♪ 供物をどうぞ♪」


 持参した食べ物と飲み物を岩場に備える!


「これ! 流人! 儂の分は? 残っておるであろうな?」

 「山爺!」

「儂もおるぞ!」

「「儂らもなぁ♪」」


 山爺と沢爺、そして桜爺と椎爺が集まって来た!


 「ご無事で何よりにございます♪」

「(笑)  此度は地脈の揺れでは無い地層のズレだからのぉ」

「儂らには影響はなかったのぉ」

 「違うのですか?」


「地脈の揺れな長く続き、その影響は大きく広いが、

地層のズレは強いが一瞬の事よ♪」

 

「山爺様、人間にとっては一瞬の事では済まされませんぞ!」

「・・・どうであったのぉ(笑)」

 

 地殻変動が続いているのだから、断層のズレはいつ起きても不思議では無い

その事を流人に諭す山爺達だった。


「それにしても、蔵元が心配だのぉ?」

 「明日見舞いに行ってきます。」

「そうか、流人の蔵元の様子はどうじゃな?」

 「発酵で難儀しているようにございます。」

「・・・今年は無理かのぉ・・・?」

「楽しみにしておったのだがなぁ・・・」

 「申し訳ございません。」

「なに♪ 気長に待つとしよう♪」

「そうだな♪ 相手は流人じゃ焦る必要もなかろう♪」

 「そこまで待たせませんよ! 僕達も頑張っていますから♪」

「「「「ほぉ・・・楽しみだのぉ♪」」」」


 酒を酌み交わし山爺達の安全を確認した流人、

転移でゲストハウスに戻ると、遅い夕食の準備が整っていた。


 「陣さんは?」

「まだお休みにございます。」

 「そう・・・邉さんは?」

「そろそろ戻るのではございませんか?」

 「♪♪」


「流人様!」

 黒天が流人に状況を説明する・・・。


 「菓子パン?」

「はい。」

 国内最大の飯島パンが、プロジェクトRに支援物資として、

自社で製パンした商品を提供すると打診が来ていた。


 「嬉しいではありませんか? 菓子パンなら子供達も喜ぶでしょう?」

「それでは受け入れ態勢を整えます。」

 「おねがいします。」


 しかしニュースなどから流れて来る情報は、前回の大地震に比べ小さいとか、

前回の大地震に比べて被害が少なかっただとか、

まるで大災害を願っていたかの様な報道しかなかった。


 「なんなんでしょうかね(怒) 死人が出ているのに(怒)」

「対岸の火事としか思っていないのでしょう。」

 「情けないね・・・。」


 疲れていたのか陣内が目覚めて起きて来た!

 「大丈夫ですか?」

「・・・疲れていたんですね、助かりました。」

 仮眠が取れて調子が戻ったのか、まだ寝ぼけているのか?

少々おかしい行動をする陣内を楽しみながら夕食にすることにした。


 「今夜の料理は・・・かわってますね?」

「炊き出しや差し入れに提供出来そうな料理を作ってみました。」

 「なるほど・・・。」


 トマトの配達員や自衛隊員への差し入れを考えながら試食の様な夕食でした。



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