第百五話 帰還
ペルシャ湾沖に待機している米海軍航空機動部隊、
流人達は大佐達と一緒に空母の司令室にいた。
反政府軍の部隊とテロ集団を追い払った流人達、
然し大佐達を全員帰還させる手段がなかった為、
ティナに頼んで米軍を動かして頂いた。
「将軍、 納得出来ないんだがいいのか?」
「構いませんと、みなさん帰れるんですから♪」
全ての戦果を米軍が得る代わりに大佐達を帰還させる事を許可した大統領、
流人にとっては大佐達さえ無事ならどうでもよかった。
重要施設、石油プラントの奪還と、反政府軍への大打撃、
そしてテロ組織への壊滅的打撃を与えた米軍特殊作戦が、
早速ニュースとなって世界中を回っていた。
そのニュースを見ている大佐の部下達は複雑だった、
見捨てられた自分達が英雄扱いを受けて本国へ帰還すると言う。
「大佐! 自分達は納得出来ません。」
「仕方なかろう! 将軍が納得しているのだから!」
「然し・・・。」
本来評価を受けるのは流人達だ!
だが一切ニュースに流人達の事が流れて来ない。
隊員達は不満に思っていた。
「みなさん、どうしましたか?」
「「「将軍」」」
残った43名の内、キャンプに参加していた30名は全員軽症で無事だった。
「みなさん、よく考えてくださいね?」
流人が大佐も含めた部下達に伝える、
「抑々、米軍ですら困難だった敵を民間企業が壊滅させては問題でしょう?
世界中に新たな脅威が誕生してしまいますよ?」
極一部の国が知っているゴードンファミリーの力、
それを世界中に公表する事は、国家の安全保障上最重要機密であった。
「いいじゃないですか、こうしてみんなで・・・亡くなった者達もいますが、
それでも全員で帰れるんですから♪」
「そうだ! 全員で帰るんだ!」
「「「・・・はい!」」」
亡くなった仲間の為にも帰る事を選択した大佐達だった。
数時間後!
「え! なんでそんなに掛かるんですか?」
「なんでって、船なんだから仕方ないでしょう。」
流人が艦長と揉めていた!
「来る時は4時間でしたよ! なんで帰りに10日も掛かるんですか(怒)」
「4時間!! 何処から来たんだ!?」
「◯縄の空軍基地ですけど?」
戦闘機ですら10時間以上掛かる移動距離を4時間と言う流人の言葉
信じられないが、流人達の行動が真実だと認めていた艦長、
驚愕と放心の複雑な感情が沸き起こっていた。
「黒天なんとかして!」
「そう申されましても、この空母ではAV-22は着陸出来ませんので」
立場的に魔法で転移が出来ない流人達は、我慢を余儀なくしていた。
「だったら先に帰るとよいぞ!」
「え!?」
「艦長! この艦には複座式のF/A-18が何機ある?」
「複座式! 20機はございますが?」
「流人達を乗せてあげなさい!」
「はぁ〜?」
ティナの命令に戸惑う艦長だったが、直ぐに上から許可が降りた!
「なんだぁ♪ティナさん達も乗るんだね(笑)」
「当たり前であろう、10日も耐えられん!」
大佐達と挨拶し流人達は戦闘機で先に帰る事となった!
「信じられない行動力ですね大佐!」
「あぁ〜そのお陰で俺達は帰れるんだ!」
複雑な思いが大佐達を押し潰そうとしていた。
戦闘機でも◯縄まで10時間は掛かった!
全速力で飛行する為、途中空中で給油を3回手配して◯縄に向かう!
「遅いですね、もっとスピード出ないんですか?」
「これが限界です、将軍」
普通の民間人なら音速の重圧に音を上げるのだが、
流人達は全員景色を楽しんでいた。
「少し南に行ってませんか?」
「イ◯ンとイ◯ドの領空を避けて飛んでます。」
突っ切ちゃえばいいのにと言い掛けた流人を止める三賢者!
「流人、国際問題になるから控えろ!」
「そうだぞ! いくら米国でもそれは出来ぬのだ!」
「要らぬ敵を作ってしまうからな」
「なんの為のステルス機能なんでしょうか?」
流人はステルスで発見されないと思っていた。
「この機体はステルスではないぞ!」
「レーダーに確り映っておるからな!」
「ステルス機は希少なのだ!」
「そうなんですか・・・」
我が儘放題の流人に良い知らせが入って来た。
戦闘機のパイロットに目的地を沖縄から
イギリス領の軍事基地に変更するように伝えられた!
「了解しました、ディ◯ゴ・ガー◯ア空港へ向かいます。」
「何かありましたか?」
「お迎えのAV-22が近くの空港で待機中だそうです。」
「よかった♪♪」
コースを変更して一直線上に飛行を続ける、
3回必要だった給油も1回で足りるので時間も短縮出来た。
3時間後に空港に着陸してして流人達は機体から降りた。
「コンパクトで良い飛行機ですが・・・」
「流人様専用機はもう少し高出力の機体を探しましょう。」
パイロットに感謝してAV-22に乗り込む、
「やっぱり寛げるっていいですね♪」
「その様に設計致しておりますから」
紅丸がミルクティーを出し、流人がゆっくりの飲んでいた。
都内の基地まで3時間、流人達は次の考えを進めていた。
「世界中を動きまくると大変ですね。」
「御意、乗り継ぎや給油など、想像以上に大変と見ました。」
「我々は一応民間企業でございますから、協力して頂ける国家も限定的です。」
「そう考えるとア◯◯カ合衆国には感謝ですね。」
「御意、然しそれはあくまでゴードンと言う協力があるからです。」
「左様、我々だけでは今回の様な、協力は望めません。」
どの世界でも他国との関係を気にするのが国のトップ達の務め、
友好を強めるも敵対するもトップの意思が強い影響力を持つ。
「今回の件、大佐達は複雑な思いでございましょう。」
黒天が大佐達を気遣う。
「愛国心が強いから、多少の事では大丈夫と思いますけど?」
「想いが強いからこそ、裏切られた時の反動が抑えられないのです。」
黒天達は何度も理解して見て来ていた、
裏切られて絶望からの悲しい流人の姿を重ねていた。
「反旗を掲げると? 大佐達が?」
「それはございません、あの者達は単純ですが忠臣ですから。」
「しばらく休養が出来れば問題ないと思います。」
「そうだよね・・・休んで欲しいね。」
都内に戻った後も流人達は色々話が進んでいた。
「直ぐに欲しいのは、移動用の船と航空機だけど・・・無理なんだね?」
「御意、カスタムなら可能です、然し造るとなると時が必要です。」
「抑々流人様が求める様な機体や船体がございません。」
流人は移動用の船、航空母艦が欲しいと強請るが、バッサリと断られた!
「抑々あの様な物を民間で所有しても何処も受け入れてくれませんよ!」
「左様、寄稿出来なければ、食糧や燃料が途絶えてしまいましょう?」
「ア◯◯カの船舶でも?」
「「無理です!」」
「ではヘリコプターは?」
「それは前々から調査しておりますが・・・」
「求める機体が中々出回りません。」
UH-60通称ブラックホーク、
20年以上昔から運用され続けている多用途ヘリ、
多くに国でも使われているし民生品としても販売されているのだが、
規制が強く、民生品のカスタマイズが出来ないのだ。
「勝手にする訳にはいかないのでしょうか?」
「多額の賠償金を求められます。」
「それどころか、技術の押収もあり得ましょう。」
「民間企業だよね?」
「それでも軍事産業ですから、国との繋がりは強力です。」
「なるほど、ウチへの対応策みたいだね(笑)」
「正にその通りと認識しております。」
「本当にそうなんだ(笑)」
「ジャンク品を買う事は出来ないの?」
「AV-22以降は規制が厳しく、目ぼしい物は無いです。」
「本当にウチに対しての規制だったんだね(笑)♪♪」
協力すると表面上は交わしていても、内情は流人達を潰しに来ていた。
「一つ聞いていい?」
「なんなりと?」
「世界中で使われているUH-60なら、
世界中にジャンク品があるんじゃないの?」
「・・・確かに」
「その国では、それ程の規制は、掛かっていないよね?」
「それでも売買認可は必要かと?」
「売り物ならね♪」
「売り物でなければっと申されますか?」
「そう、例えば敵に落とされた残骸だとか、色々ね♪♪」
「(笑) なるほど♪ 落とされておりましたなあの場所に♪」
大佐達を退避させる為に向かった
UH-60が4機の内3機が瓦礫となっていた。
周囲を確認して、機体を回収して戻る!
「おかえりなさい! 如何でしたか?」
「最高に破壊された状態でした(笑)」
アメリカ本土へ運び、メーカに修理の為の人員と部品を申請するが、
ファックスで送った残骸を見たメーカー側が、修復不可能と言って来た!
「いいね♪」
「未だですぞ!流人様、所有権は米国軍にございますから、
一応確認を取りませんと!」
軍の上層部に機体と運び込んだ為の費用を請求すると、
「戦地で大破し若しくは放棄した時点で所有権も破棄しているので、
請求を拒否する。」
「やったね♪♪」
「お見事にございました。」
スクラップになっているが、正式な登録証の認可を受けている機体が3機
流人達の手中に渡った。
「これでカスタマイズ出来るね♪」
「御意、事前にメーカーには確認を頂いていますから」
「修復不可能だって?」
「御意」
「なら♪私達で直しましょう♪♪」
「仰せのとおりに(笑)」
短期間で周到に計画して見事欲しかったUH-60を3機も♪
審査や手続きを迅速に対応させるべく、黒天と紅丸の両名の准将の地位を使い
軍上層部に確認を取らせ放棄させる。
破壊されていればいる程、カスタムが可能なので、
撃墜され墜落した機体は流人達には願ったりの品物だった。
スクラップ状態のヘリを軍の施設から持ち帰り、
同じ米国内にあるカスタム工場へ運び込み、機体の改造が始まった。
「流人様! 改修工事は始まったそうです。」
「そう、よかったですね、早く出来て・・・。」
流人が朝方のニュースを見ていた。
「大佐達帰国できた様ですなぁ」
「うん・・・元気ないね?」
「そうですね・・・どうなされたのでしょうか?」
多くの報道陣と今回の作戦に向かった緑の帽子を被った特殊部隊の兵士達、
そして帰国した英雄と称された大佐達が映っていた。




