カフェshion物語 (7年目の休暇編)
やっと連載の最終話を書き上げた。詩織が心からほっとする時である。今回は特別な思いがあった。と言うのも、この仕事を仕上げたら少し纏まった休みを取ろうと考えていたのだ。作家になって7年、始めの3年はゴーストライターとして、その後の4年は【詩織】として作家活動をしてきた。その間、休日はほんの僅かしか取らずに頑張った。だからここで思い切って、1,2か月自分のための時間をとろうと思っていた。そこへ調度良いタイミングで、昨日編集者から電話があり『次の作品を是非書下ろしで』と依頼され、それが詩織の決心を後押しする事となった。何処かを旅行して、先ずはリフレッシュする。そしてじっくりと次作の構想を練り、作品に取り掛かりたい。
午後3時、いつもよりかなり遅くにカフェshionにやって来た。
早速亜美ちゃんが、
「詩織さん~どうしたんですか?今日はもう来ないかと思っちゃった!」
「徹夜明けで、ちょっとひと休みしてたから。」
「じゃ、オーレですね!」
徹夜明けにいつも頼むカフェオレを覚えていてくれる。こんなさり気ない事が嬉しくて、詩織はここカフェshionに自分の居場所を感じるのだ。
「暫く飲めなくなるから~今日は特に味わって飲まないとね!」
「えっ?どうしてですか?」
「実は、、ちょっと長い休暇を取ろうと思って。2か月位。それでね、ちょっと旅行に行こうと思ってるの。」
「え~~~っ、2か月も?」
「ひと月半位の予定よ。」
「何処行くんですか?」
「これから決めるの。」
「いいなぁ~私も連れてってくださいよ~!」
2人の会話を聞いていたマスターが、
「おいおい、亜美ちゃん、お店どうするんだよ。僕一人じゃ開けられないよ。」
そう言って、笑いながら奥から出てきた。それに連られて詩織もつい笑ってしまう。
「詩織ちゃん、今まで頑張ってきたんだもんなぁ~、いいんじゃないか、この辺でゆっくり休むのもさ。」
「有難うございます。」
「詩織さん~お土産忘れないでね!」
「勿論~、分かってるって。じゃ、マスター、亜美ちゃん、暫くはカフェshionお休みしま~す。そしてまた元気に顔だしますね!」
そう言って詩織は旅立っていった。