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自己理論
キリキリキリ、すっ、ぷつん、すーっ、つー……。
あぁ……痛い。痛いよぉ……。ふふっ、ふひひっ、痛いなぁ……。
自傷行為なんて馬鹿らしい。いくら私でもそれは分かっている。
けれど、どうしてもやってしまう。
1人で寂しくなった時、カッターを握ってしまえば後はもう止められない。
痛みは人間が一番簡単に味わえる感覚だ。
誰かに頼ることなく、軽くでもいいのなら道具すら必要無い。
私はべつに、自分を傷付けたい訳ではない。
ただ何もせずに生きている自分が、本当に生きているのか確認するためにやってしまう。
痛みを感じれば、流れ滴る血を見れば、私はまだ死んでいないのだと理解出来る。
痛みはいい。
寂しさを誤魔化してくれて、また自分を傷付けるのは嫌だと再確認させてくれる。
腕にいくつも残る傷痕を眺めれば、自身の愚かさを数えることが出来る。
これ以上は増やしたくないなぁ……と漠然と思いながら、カッターはいつまでも手放さなかった。