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4。風変わりな親子

お父様に連れられて控え室に戻ろうとしたところで、呼び止められた。

立ち止まろうかと思うと、肩に添えられた手はそのまま歩けと促してくる。

振り向かずに呼び止められた辺りを横目で見たら、壁の花というか、壁と同化しているような父子が頭を下げていた。


控え室に入ったところで、父子も同じように入ってくる。気配を消しているのか影が薄いのか、お父様と私の影ですか?ってくらい、静かにやってくる。

逆に不審で気になって、さっきまであんなに食べたかった子供用のごちそうが運び込まれてくるのも忘れてたくらい。


侍女達が下がったところで、お父様が父子を呼んだ。

真正面に並んで居住まいを正すと、別に影が薄いというわけでもなく。ただ、知っている貴族と比べて、着飾っているのに使用人に近いような違和感があった。

どちらも整った顔はしているけど、欠点も無い代わりに、これといった特長も無い。

イケオジとかダンディなおじさまとか、服の上からでも良い身体をしている男性とかは覚えてたんだけど、ちょっとかっちりしていて好みから外れてるんだよね。バリトンとか歌ったら似合いそう。


「こちらはクロード12位男爵。私の部下で、史書官をしている」

「クロードと申します。めでたき生誕の祝賀にお呼び頂けて感謝しております。以後、お見知りおきを。レディ」

「彼は土地持ちだよ」

「妻のですがね」

型通りの挨拶をして、言葉とは裏腹に、クロード男爵は友好的というよりはなんとも言えない顔をしている。

そして、私も得心した。


この世界というか、この国だと、王宮に出入りできるのが20位から始まる。出入りの商人とか下働きで、騎士とか侍女だと15位から。

貴族は12位以上で、王族と大公は3位以上、公爵は3〜4位、侯爵は5〜6位相当とされる。

相当、というのは、爵位は土地に根ざしていて、純粋に領土の広さと価値で決まる。

で、複数爵位を持つことがあるから、一番上の爵位で呼ばれる。爵位を持たない場合は12位文官とか細かく12位史書官とか呼ばれるわけだ。

また史書官というのは図書室に詰めて文字通り歴史などを管理している役職なんだけど、政治に合わせて国内外の事例を探してくるお仕事だったりする。毎日辞書を調べているようなもので、食いっぱぐれないけど大変ということで人気が無いというか、本好きか歴史オタクの巣窟と言われてる。


で、クロード男爵の場合、優秀だったから伯爵以上の誰かが傍系の娘に手持ちの男爵位を付けて、子飼いの婿養子みたいなものにしたわけだ。

これで出世欲が強かったらもっとギラギラしてるんだけど、毎日辞書を調べていることで目をかけられたような男性だ。無欲で派閥に興味が無くて、華やかな場所が嫌いなんだろう。


むしろなんでここにいる?


というのが感想だった。

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