2。物足りない世界でした。
さて。せっかく異世界に生まれたんだから、ちょっといろいろと試してみたくなるよね!
子供の身体で大人の知識があるなんてアドバンテージだし、チートな能力があるかもだし。
そうじゃなくても前世は結構優秀な技術者だった(たぶん)から、この知識で異世界に改革を起こしてもいい。
そんなわけで、私はお屋敷の図書室やお母様のコネで王城の資料室に出入りして、この世界について調べまくった。街の図書館とかも行きたかったけど、こっちは危ないからと却下されてしまった。
結論からいくと、ビミョーとしか言い様がない。
この国は王家と王家の親族の大公家、後は公爵から男爵家までがあって、うちは侯爵。
大陸ではなく大きな島で、温暖で風光明媚。芋とか豆も麦も米も取れちゃう。
魔法もある世界だからちょっと囓ってみたけど、攻撃魔法を使うような大きな野獣もあんまりいない。
治癒魔法はそんなに興味ないし、うちのお抱え治癒術師や神殿にいる聖女達なら大抵の病気やケガは何とかしてくれる。
つまり、なんでもできるけど、特にやることが無いのだ。
じゃあ、まったりとスローライフを楽しもうかと思ったところで、ふと気付いた。
アニメやゲームやネットはともかく、漫画どころか小説も無い!という事実に。
足りない。人生の娯楽が半分以上足りない。
前世でアニメ以下略抜きにして平日夜とか土日って何してたかというと、原稿書くか寝てた。
でもここは、原稿書く原動力になる作品そのものが無い。スカイプで友達とチャットはしてたし、彼氏もいたから人生が枯れてたわけでもないんだけど、今、フリーだし。彼氏と萌えは別腹だからなー。
でもせめてどっちか欲しい。
こうして、私ことユリアーナ8歳は悶々と日々を過ごすのだった。