1/6
1。生まれたときは貴腐人ではありませんでした。
物心がついたのは3歳も終わりの頃。
幼い『私』は早熟な子供だったらしく、4歳の誕生日にお父様の書斎の難しそうな御本と、お母様の化粧品をおねだりしたそうだ。美しく利発な子になると両親は周りが呆れるくらい大喜びだったと、兄達が苦笑しながら教えてくれた。
今、あの時のパーティーで覚えているのは、大きなケーキくらいだから、子供の記憶なんていいかげんなものだ。
そう、 “子供の記憶” は。
『私』が昔を思い出したのは7歳の時。
お決まりのようにおたふく風邪で高熱を出して、数日うなされて、目が覚めたら前世の記憶を思い出していた。
だから、予防接種があったら私は今の『私』にはならなかったわけだ。いや、この世界、防疫の方はいまいちだけど、回復魔法と薬が発展してるから、現代日本並みに死亡率は低いんだけど。
そして『この世界』とか『回復魔法』と述べたように、『私』が現在生きている世界は剣と魔法のファンタジーな世界だった。