95話 エピローグ【エピソード3 真紅の女王と盟約の鎮魂歌】(完)
こうして魔王の1ページは幕を閉じた。素晴らしい活躍だった。実に楽しかったよ。
「魔王」として覚醒し、真紅の女王を打ち破り、大きな決断を胸に謎の魔人が造り出した絶望の道を進み切った。偉大なる魔女の過去を知り……決意を深めた。
それにしても……まさか「真紅の女王 リーゼ」すらも破るとは。さすがは「支配」の魔王といったところか。
あ、そうそう。リーゼで思い出したよ。
吸血鬼には様々なルールが体に刻み込まれている。その中に「人間」と関係したルールがあったような。
確か……「人間に惚れてしまった吸血鬼は、その人間の血液しか飲めなくなる」だったかな?
ふむ。どうやら……魔王は「真紅の女王」すら支配してしまったかもしれないね。
彼女と出会って結んだ縁はこれからどうなるのか。その顛末は……次のページを覗いてみないとわからない。
さて。彼も「支配」の魔王として始まったことだ。これからのページが楽しみだよ。
「僕」も『語り部』として一層頑張らないとね。
1つの終わり。そして新たなスタートを切ったアスト・ローゼン。
彼は世界に平和をもたらす「王」となるのか。それとも……
世界を破壊する「魔王」となるのか。
実に楽しみだ。
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これは全てが終わり学院に帰って、その次の日の夜に見た、少年の夢。
少年は金色の瞳を持った小さな女の子と2人で観覧車に乗っていた。
少女は「吸血鬼」で、その運命に縛られ、苦しみ、少年はその少女のために戦った。
彼女は見る物全てに目を輝かせて興味を持って、自分の笑顔が好きだと言ってくれた。彼女の「大好き」という言葉はとても嬉しかった。
「次は何をして遊ぼうか?」
少年は少女に問いかけた。
彼女は笑顔を浮かべるが、
「うーん。疲れちゃったから、今日はもうおしまい!」
その答えは少年にとって残念なものだった。
そしてそれは少女との楽しい時間の終わりを示している。
少年は顔を悲痛に歪ませて、
「……ごめん……僕のせいで……僕が、弱かったせいで……本当に……ごめん……!」
少年は少女を抱きしめて、涙を流して謝った。少女は笑顔のまま、
「アスト。あの時、わたしを助けようとしてくれて……ありがとうっ!」
「僕は……君を……救えた?」
「うんっ! わたし、アストのこと……だいすき!」
そして……少年と少女は手を繋いで観覧車を出た。
それが、少年がとある日の夜に見た夢だった。
「6月1日」。その日の夜の夢。
覚めて起きると……横には誰もいない。それを見て少年は頬に伝う涙を拭いて、
「もう、あの子はいないんだ」
少年は自分に言い聞かせるようにして、再び眠りについた。
いくつもある可能性の未来の中で……もしも僕が彼女を救えた未来があったなら。
その時のカルナも笑顔でいてくれたのかな?
それを知る方法はないけれど。きっと笑顔に違いない。
おやすみ、カルナ。
第0章『魔法が苦手な魔法使い編』ラストエピソード
【真紅の女王と盟約の鎮魂歌】終了。
次回、第1章『ヴェロニカ編』エピソード4
【完全理想の支配と救世の竜神】に続く。




