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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第0章 魔法が苦手な魔法使い編
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72話 ヒーロー!ハプニング!バトル!


 そしてそして、次は……というところで。


「兄様兄様! あそこを見てください!」


「ん……あれは?」


 ミルフィアが指示する方を見やるとそこには多くの人だかりができていた。その先にはステージがあるみたいだ。



「我ら、魔法戦隊ウィザードレンジャー! ちびっ子達よ、私達が来たからにはもう大丈夫だ!! 魔物は私達が倒す!」



 そこではヒーローショーをやっているようだ。あれは日曜の朝にテレビでやってるらしいヒーロー戦隊の人達。子供に人気だからこんな人だかりができていたのか。よく見ると子供連れの親御さんが多い。


「兄様見に行きましょう!」


「アスト! 見たい!」


 そういえば僕も子供連れだったのを思い出した。ミルフィアは13歳だから子供かどうかは怪しいところだけど。……まぁ子供か。



僕らも人だかりの一部となってそのヒーローショーを見学するのだが……


「見えないですー!」


「見えない―!」


 2人はピョンピョンと跳ねながらそんなことを嘆く。ミルフィア達の身長では大人の体に邪魔されて前が見えないのだ。


 どうしようかな……と悩んでいると、



「おい。しゃがめ! 肩車しろ! ほら!」


「ちょっ! 隊長、勝手に乗んないでくださいよ! あーもう! 副隊長はどこ行ったんスか……あの人絶対またサボりだろちくしょう!」



 カルナくらいの女の子を肩車している青年を見つけた。肩車させられてるようにも聞こえたが。……あれ? お化け屋敷にもこんな声いたような。そんなことはいいか。


 ……こんな時は僕の出番だな。他にも子供を連れてる親御さん方もやってることだし。


「フィアちゃん。肩車してあげよっか?」


「いいんですか? お願いします!」


 こうすればミルフィアの身長は一気に増加。阻む壁などありはしない。

 カルナは抱き上げることにした。


「これで見える?」


「うん! アストありがとう!!」


 すっかり2児のパパみたいな姿になってしまった僕。この子達の喜ぶ顔を見ると僕もほっこりとなるから心までパパになってきているのかもしれない。


「…………ん?」


 と、そこで頭のところで問題が。



(フィアちゃん……く、苦しいよぅ……!)



 ミルフィアはヒーローショーに興奮しているのか太腿で僕の顔を締め上げる。

 それだけではなく上でバタバタと暴れるせいでいつの間にかスカートの内側に僕の頭が侵入! かなり深い位置で僕の顔を抱え込んでいるのか首あたりに何やら布の感触が。それと人肌の生暖かさも。これって……???

 これ以上考えると僕の心が汚れてしまう気がしたので思考を中断した。いや、もう察してはいるけども!





 ヒーローショーが終わって。やっぱり注意しておこうと思ったので、


「フィアちゃん……肩車してもらった時に強く抱きしめるとその……大事な部分と言いますか……それが首にさ……」


 なんか言ってる途中でこれセクハラじゃないのかと後悔もしてしまう。けれど注意しておかないと。次こんなことをもう一度と言われるのは勘弁だ。

 僕がモゴモゴと何か言っていると最初はミルフィアも何のことかわかっていなかったが自分にも心当たりがあるのか気づいて……



「もう……兄様のえっち」



 と真っ赤な顔で僕の耳に吹き込んでくる。自分の汚名を伝えるためにこんなことを言ったんじゃない!




   ♦




 ハプニングを超えての次。そこは……「バトルソード」という施設だった。

 これは魔法使いの遊園地しかないであろう施設。中はアーロイン学院のトレーニングルームくらいに戦闘が十分に行えるほどの広さの部屋があり……そこで入った2名が剣を持ち、戦って遊ぶのだ。


 剣を持って戦う……いかにも物騒に聞こえる。しかし、剣は魔力で造られたもので人の体に当たっても斬れたりはしない。その代わりに人体に当たれば「HIT!」という表示を出す魔法がかけられている。

 その機能からもうわかると思うが……用意された剣で相手を攻撃してその「HIT!」表示を3回出した方が勝ち。そんな感じで遊びの要素を強くした勝負形式の遊び場だ。


 そしてその「バトルソード」で出会ったのが……


「ようアスト。お前もここに来たか」


「ガイトも? 奇遇だね」


 実はウィザード・ランドのことを調べていた時からこれに目をつけていたのだ。遊びではあるもののやっぱり魔法騎士として訓練していることもあってやってみたいなと興味が出てしまう。ライハがシューティングをしていたのと同じだろう。


「一戦やるか?」


「うん! やろう!」


 この「バトルソード」では魔法は使用不可となっている。それに魔力を纏う必要がないので魔力云々の勝負でもなくなるわけだ。だからこそ僕でも楽しめる場所になっている。


「兄様―! フレーフレーですー!」


「どっちも頑張れー!」


 観客席も2階に用意されていてそこではミルフィアとカルナが応援してくれる。これは負けられないな。


「ガイトは剣も使えるの?」


「魔法武器は剣じゃねえんだけどな。なんとかなるだろ」


 それなら僕の方に分があるかもしれないのか。ぜひとも勝ちたいところだが……。

 まだガイトがどのくらい動けるのかわからない。戦ったことはあってもそれは魔法道具によって正気を失っていた時の話だ。

 僕が上から目線なのはおかしいけどガイトの実力が気になるのは本当だ。



『それでは両者準備が完了しましたので、「バトルソード」スタート!』



 機械音声がそう告げた瞬間、僕達の目の前に突如光の粒子が集まり……「剣」の形となる。これは【バルムンク】を出す時と似ているな。


 僕とガイトはそれを手に取り……互いに駆ける!!


 剣がぶつかり魔力の光がはじける。光の糸のような剣閃が何度も煌めく。それは芸術とも言えるくらいに綺麗で、なんでこんな遊び場があるのか納得してしまった。


「隙あり!」


「お前もな!」


 互いの体が交差すると「HIT!」表示が2つ。僕とガイトは同時に相手への攻撃に成功した。

 そこから何度も何度も斬り結ぶ。この剣は折れたり欠けたりしないのでぶつけあっても破損を考えなくていいので助かる。



(それにしてもガイトの位置取りって……)



 武器を使って戦うとどうしても自分の体に染みついている動きが出てしまう。僕やカナリアは剣に慣れているしライハは銃だ。

 銃になれているライハが剣を手にとってもいきなり接近戦重視となることはないだろう。銃を使っている時の距離を取りながらヒット&アウェイの戦法を取るに違いない。


 そのように自分の慣れている武器にあった位置取りをしてしまうのは癖になっているからこそこういう時にも出てしまうものである。そこからガイトの使用している魔法武器も予想できそうだ。


(剣……ともまたちょっと違うな。若干遠い。それでも離れすぎてないし……長物かな?)


 おそらく……槍あたり。そんなところだろう。

 それでもガイトの剣は上手い。動きも速いし魔力を纏ってなくても力強い。


「よっ……と!」


「あっ……」


 戦闘は続き……とうとう僕が先に3度目の「HIT!」表示を出してしまった。


「あー。くっそー!」


「俺の勝ち。ジュース一本おごりな」


「えぇー! 聞いてないんだけど! ずるっ!」


「勝者の特権だ」


 ぐぐぐ……負けた者は潔く従おう。悔しいなぁ……あともう少しだったんだけどな。

 1組に選ばれているだけあってガイトの実力は結構高い。音魔法と魔法武器を使えばどんな戦い方になるのかも見たいな。

 本人は「自分は大したことない」って言ってたけど案外ライハと良い勝負したりするんじゃなかろうか。



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