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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第0章 魔法が苦手な魔法使い編
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71話 クールガールズ


 そんなこともあってカナリアとは一旦お別れして……次に向かったのは「シューティングマウンテン」。


 距離が離れた場所に配置されている景品を備え付けられているゴム弾が入った銃で狙撃して落とすことでその景品がゲットできるという遊び。景品はヌイグルミだったり綺麗な装飾品だったりと多種多様。


 シューティング─名前からして「あの子」が行きそうだなと予想していると……


「もうやめてくれー! これで何個目なんだよ!」


「やめない」


「ぎゃああああ! また落としやがった!」


 なんか聞いたことある声と誰かの悲鳴がセットでここまで届いてきたぞ。これは絶対……


「ライハ。ここにいたんだ?」


「! アスト」


 撃ち落とした景品を受け取っているライハに話しかけると……横に景品の山があることに気づく。いくらなんでも落としすぎだ。

 無理もないか。ライハにとってはある程度離れた場所でも難しいことじゃない。それこそ朝飯前である。


 狙撃といっても長距離の物を撃つわけじゃない。10mあるかないかの位置なので完全にライハの間合いだ。百発百中なのは当たり前。


「僕もこれやっていこうかな」


 興味が湧いてきた僕は1ゲームだけやってみることにした。1ゲームは3発までチャンスがあるので1発でも当たってくれれば嬉しいんだけど……。


「銃は自信ないな。剣ばっかりだから……」


 ライフル銃型の物を手に取って立ち尽くしていると……


「わたしが教える」


 頼れる援軍がやってきた。なんと。まさかの本職からレクチャーである。


「構えはこう…………もっと顔を近づけて」


「う、うん……」


 言われる通りにやってみる。狙いの付け方を教えるためにライハも近くに寄ってくるのだが……


(ち、近い……!)


 目と鼻の先にライハの顔がある。顔を傾ければ当たりそうなくらいに。もっと言えばライフルのストック部分にほぼほぼお互いが頬付けしているに近い状態だからもう超超至近距離だ。

 彼女の息遣いまで感じて急にドキドキしてしまう。

 ライハは僕に狙いの付け方を教えるために一緒に覗き込んでそこから見える物や距離感を教えてくれているのに何1つ頭に入ってこない。


「アスト。やってみて」


「は、はい……」


 いつの間にかレクチャーは終わり。そこから発砲1発。

 全然聞いてなかった僕はまったくカスリもしない位置に当ててしまう。うぅ……。


「ごめん。下手だよね、僕」


「そんなことない。もう一度教える」


 そしてまたも超超至近距離に。またこれが始まってしまった。


「もう大丈夫! 狙いの付け方は聞いたから!」


 狙いの付け方はまったく聞いてなかったけどこの距離はマズイとすぐさま変更を願い出る。そもそもこんな至近距離じゃないとレクチャーできないのだろうか?

 銃に関しては素人だから教え方に関してはライハを信じるしかないんだけども……


「まだ基礎がなっていない」


「はい……」


 ライハはもう一度と強く出る。僕は渋々またも頬付けするのだが。


 ……さっきと違うことが起きた。ライハからの視線を、すっごい感じる。


 またも至近距離。けれどもライハは僕の顔をジーっと見てきている。目と目の距離なんか数センチしか空いてないこの状態で、だ。


「…………あの、ライハさん?」


「どうしたの?」


「視線が……その……」


「気のせい」


 いや全然気のせいじゃない。そう言ってる間もずっと見てるし!


 ただでさえライハは美少女の部類に入る女の子だ。そんな子からこんな近くで見つめられるなんて。体だって密着してるし。

 そのまま謎の形で受けたレクチャーを通して僕は見事に3発全弾をカスらせることもなく終えた。ライハはどこか満足気だったが。本当に教えるつもりだった……? 真相は闇の中だ。




   ♦




 次に向かったのは「ティーカップ」と呼ばれる遊具。中に入ってクルクル回る定番のアレだ。


 そこにいたのは……


「あ、キリールさん」


「アストさんですか。そんなに幼女を引き連れてよく通報されずに生き残れましたね」


「僕を不審者みたいに言わないでください」


「ですが、ここまでです。……あ、魔法騎士団の方でしょうか?」


「ちょっと! 通報しないで! っていうかあなた身内でしょ!」


 僕がそういう輩ではないと知っているくせに……。


「そうだ。キリールさんも一緒にこれ乗りましょうよ。せっかくここで会ったんですし」


 僕はティーカップを指さして誘うと……


「なるほど。アストさんにとって私は都合のいい女だったというわけですね。幼女を楽しむ間に挟み込む息抜きといったところでしょうか」


「あの、僕をどうにかして犯罪者にしようとするのもうやめません……?」






 なんだかんだあってキリールさんも含めた僕達4人はティーカップの中に入る。

 スタートすると一定の速度でクルクルと回りだす。これは中央にあるハンドルを回すと回転速度が増す仕組みになっているのだが……


「フィアちゃん、カルナ……もうちょっと加減を……!」


 ミルフィアとカルナは楽しくなってきたのか思い切り回しまくって僕らのティーカップだけ狂ったように回りまくっていた。は、吐きそう……!


 僕は体勢を崩してしまい大きく横に倒れてしまう。横にはキリールさんが座っていて……


「あ……!」



 なんとキリールさんに覆いかぶさるように倒れこんでしまった。それならまだしも……僕の顔はキリールさんの胸にダイブする!



 「柔らかい」だとかそんな言葉では到底足りないくらいの感触。クラクラするほどに良い匂い。触れて意識してしまう細い体。いつものその毒舌から触れてはならないと思わせるキリールさんの体に触れてしまったという……やってはいけないことを盛大にやってしまった感がむしろ僕の感覚を刺激してくる。


 絶対何か言われる……! とまた犯罪者呼ばわりを恐れるが……




「こんなところをベルベット様に見られたら怒られてしまいますね」


 僕を跳ねのけるでもなくクスッと笑って僕を見ていた。その余裕やいつもと違ったキリールさんの顔に胸の鼓動が早くなった。


 僕はすぐにその場から離れて謝るが……鼓動はなかなか普通の調子を取り戻してくれない。

 キリールのその顔はとても綺麗で「このことはベルベットには内緒にしよう」と悪戯をしてやったという可愛さも持ち合わせていた。……これだからギャップというのは恐ろしいものだ。



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