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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第0章 魔法が苦手な魔法使い編
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65話 魔法騎士団……副隊長!?


 放送で呼び出された通りに7と書かれたトレーニングルームに入る。事前に予約を入れられていたみたいで何事もなく入ることはできた。

 ジョーさんかな、と思ったのだが……中には誰もいない。ジョーさん関係ではないみたいだ。


「イタズラかな……?」


 誰もいないならここにいてもやることがないと帰ろうとした。その時だった。


「おっ! ごめんごめん。ちょっと席外してた」


 扉から入ってきたのは人間年齢で20半ばの青年。人の好さそうな笑みを携えて手を振りながらこっちに歩いてきた。

 さらにその後ろにはなんとミルフィア、キリール、そしてベルベットの治療をしてくれたアンリーまで連れていた。



「君がアスト君……だよな? 俺は魔法騎士団ウィザード・ナイツ第一隊副隊長の『フリード・ヴァース』。よろしくっ」



「よ、よろし……魔法騎士団!?」


「そ、魔法騎士団」


 驚く僕を見てフリードさんはニヤ~と笑う。こういう反応をするだろなと予想していて、それが当たったという顔だ。



 魔法騎士団には部隊が5つほど存在している。

 第一隊は「対人間部隊」。第二隊は「対魔物部隊」。第三隊は「他種族対策部隊」。第四隊は「国内対策部隊」。第五隊は「災害及び魔法事件対策部隊」。


 第一隊は魔法騎士団の中でも花形。なんたって魔法騎士は人間と戦うのが使命のようなもの。そうなれば人気が集中するのは当たり前だ。

 その中でも「副隊長」となればとんでもない名声である。強さと人気を兼ね備えた存在。エリート中のエリートだ。


「なんでそのフリードさんがこんなところに?」


「ん? 俺とベルベットは個人的に繋がりがあってね。彼女の身に何かあった時は俺が君のサポートをするように言われてたんだ。そこにいるキリールちゃんみたいなもん」


 とか言いながらキリールさんを指さす。キリールさんは「ちゃん呼びしないでください。気持ち悪いです」とフリードさんとは仲悪そうだけど。


「え? でもフリードさんって第一隊なんですよね? 第一隊は対人間部隊だったような……。言ったらなんですけど僕のサポートなんかして大丈夫なんですか?」


 ベルベットから言われて来ているということは僕が人間だってことを知ってることになる。それならばと遠慮なく質問させてもらったがこれはかなりマズイことに思える。


「あ~……団長にバレたらクビかも。まぁウチの隊の隊長はベルベットとも知り合いだし、そういうとこ緩いから許してくれるだろうけどね。基本的に俺は自由に動けるようにしてもらってるし」


 フリードさんの上司にあたる隊長の話題になるとアンリーさんが思い出したように「あ」と声を上げた。


「そーいやあんたのとこの隊長、この前飲食店で見かけたけどさ。お子様ランチ食ってたわよ。あのハンバーグに旗ついてるやつ。旗とって喜んでたわ」


「まぁまだ子供ですから。今でもピーマン食べられませんよ」


「ガキだな~ほんと」


 アンリーさんとも知り合いみたいなので2人で話が弾んでいるけど魔法騎士団それでいいのか……? 子供って……。


「安心していいよ。君が人間ってことは魔法騎士団でもまだ俺以外には知られてない情報だから。バレたら速攻暗殺されるだろうけどね」


「あはは……」


 僕、バレたら速攻で殺されちゃうんだ……。ひぇぇ……。


「あと君、昨日と今日に名指しで幼女誘拐の通報が入ってたけどあれマジ? ちょうどいいから俺が代わりに聴取に行くことになったんだけど」


「それマジじゃないやつですから……!!」


 本当に魔法騎士団に通報されてたよ。嘘だろ……。


 そんなことはどうでもよくて。どうでもよくないけどっ!




   ♦




 さて本題だ。どうしてこの面子が呼ばれたのか。気づいてはいるが僕まで呼ばれたのがわからない。


「『リーゼ』のことだけど、俺とミルフィアちゃんで対応するってこと? キリールちゃんはどうすんの?」


「私はベルベット様の護衛に入ります。それとちゃん付けはやめてください。イラっとします」


 フリードは正直なところキリールの助力が欲しかったがそういうわけにもいかないらしい。ベルベットにあんなことがあれば護衛は確実に必要だ。


「ねー、アンリーさんも来れない? 俺とこの子だけでリーゼはさすがにキツイって。俺死んじゃうよ。それにリーゼくらいのレベルと対等にやりあえるのってぶっちゃけ俺達の中じゃベルベットかアンリーさんくらいでしょ?」


「うっせー。魔法騎士が魔工に助力求めんな。盛大に殺されてこい。言っとくけど治してやんねーかんな。骨もその場に放置しといてやる」


「ひどー。それにしてもリーゼかぁ。……昔、あの子にセクハラしてからめっちゃ嫌われてるんだよね。会ったら次こそ確実に殺されるわ俺」


「ミルフィア。ヤバイと思った時はこの男を盾にして逃げなさい」


「了解しましたキリ姉様!」


「いや、それマジでひどくない? ミルフィアちゃんも了解しないで……」


 例のリーゼをどうするかの話し合いが進んでいく。僕はもうこれには関わらないはずなのでここでの僕の存在は必要ないのだが。



「あ、そうそう。アスト君、君に聞きたいことがあったんだった」



 フリードさんが思い出したかのようにこっちに振り向く。おかげで置いてけぼりだった僕もなんとか存在感を取り戻した。


「なんですか?」


「リーゼの件に関係することなんだけど……最近この近くで吸血鬼を見なかった? 第三隊の連中が捜してるらしくてさ」


 吸血鬼……か。

 見た、どころか匿ってる最中だ。正直に言ってしまっていいのかな……。

 ミルフィアとも目が合う。非常に困っている目をしていた。



「知り……ませんね……」



 嘘を、ついた。カナリアが言うにはカルナは不正で入国している可能性がデカいと。なら、ここでバラすのは得策じゃない気がした。

 ましてやフリードさんはここに個人的な目的で来てくれているとはいえ魔法騎士団の人だ。第三隊に情報をリークしないとは限らない。


「知らないかー。じゃあなんかわかったら俺に連絡くれる? ほい、これ連絡先。マジックフォンに入れといて」


「はい。それでは」


 僕はフリードさんから離れた。隠し事をしているせいだろうか。早くこの場から離れたいと思っていた。息も少しだけ苦しかった。


 しかし、


「どうせトレーニングルームに来てるんだ。ちょっと俺と一戦やらない?」


「へ?」


 フリードさんからはまさかの提案を受けた。僕が……魔法騎士団副隊長と一戦!?


「内緒の話し合いにはここが一番良いんだけどさ。せっかく取ったんだったら若人のために先輩が一肌脱がなきゃってね」


 なんてありがたい提案だ。しかも魔法騎士団副隊長だなんて手合わせできる機会はそうないぞ。1回あるだけで奇跡だ。断る理由なんてあるわけない。


「やります!!」


「おーおー、元気いいね。それじゃ、準備しよっか」



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