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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第0章 魔法が苦手な魔法使い編
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49話 光の裁き 天体竜プラネタル!!



「!? な、にが……起こ……」


 突如魔法攻撃に襲われ、地面に伏していたアストはすぐに顔を上げる。その主を見つけるためだ。



 ……が、探す必要などなかった。そいつは夜の闇の中から出てきて自ら姿を見せてきたからだ。



 それは自分と同じくらいの歳の少年。

 銀色の髪に空色の瞳を持ち、目はギラリと鋭く、触れれば切れる刃物ような印象を受ける。


 白いローブを羽織っていて、中の服装を詳しく確認できなかったが……アーロインの制服ではない。


 少なくともアーロイン学院の生徒ではないと考えられる。夜に制服を着ているやつ自体いないと思うが……こんな生徒は同学年で記憶にないからだ。


「おま……え、は……誰だ……?」


 攻撃してきた時点で敵であることに変わりはない。謎の男に問いかける。せめて誰なのかを知るために。




「名か?……『ゼオン・イグナティス』」




 ゼオン。男は簡単に自分の名を名乗った。

 偽名なのか、バレても別に構わないってことなのか。



 それとも……僕を生きて帰す気が無いからか。



 とにかく。敵と戦うためにこちらも戦闘態勢に入らなきゃいけない。


 剣は……今は持ってない。当たり前だ。なんたってここまで「逃げる」ように走ってきたのだから武装のことなんて考えてなかった。



(なら……マジックトリガーしかない……!)



 僕はすぐにマジックトリガーを探す。ゼオンという男の魔法攻撃を受けたせいで今は自分の手元に無いのだ。


「あっ…………」


 だが、気づいてしまった。3つのマジックトリガーが全て自分から遠く—ゼオンの足元に落ちていることに。



 ゼオンは自分の足元に落ちているマジックトリガーを全て回収していった。



「おい……それを、どうするつもりだ!」


「これはお前らが触っていい物じゃない。それに、これを回収しにきたのが俺の目的だからな」


「マジックトリガーを知ってるのか……!?」


「お前よりかは知っているつもりだ。これについてはな……」


 3つのマジックトリガーを回収し終えたゼオンはこちらに背中を見せ、帰ろうとする。

 仕事は終わった、お前に興味はない。というのが聞こえるように。


 名前を明かしたのに命を奪わないままなのは驚いた……が、このまま帰すわけにはいかない。


 僕が魔法を使えるようになるには……あれしかないんだ!!



「待て……『ファルス』!!」



 武器がない、魔王の力も今は使えない、となれば素手しかない。

 強化魔法をかけて、ゼオンへと突進する。




 僕の拳はゼオンの背中を撃ち貫く。




 と思われたが、空を切った。ゼオンの姿が一瞬にして消えたのだ。



「一線を越えたぞ、お前は。俺と戦うつもりか?」


「!?」



 背後から声がした。

 いつの間にかゼオンは自分の背後へと移動していた。



「今日はマジックトリガーを回収できて気分がいい。冥途の土産に見せてやろう」



 そう言ってゼオンは服の内ポケットからある物を取り出す。それは……



「マジックトリガー!?」



 注射器の形をした機械。色は赤でも黄でも緑でもない。


 「黒」のマジックトリガーだ。つまり……4種目?



「言っておくがこれは『マジックトリガー』では、ない。俺の中のとある『力』を無理やり解放することができる特別な道具だ」


「なに……?」



 マジックトリガーでないというなら何なのか。その答え合わせはすぐに行われた。ゼオンはカチリ……と機械を起動させる。





「解放宣言」


『認証 サタントリガー・アクティブモード

 解放—「魔王の左腕」』




「え………………………………」



 サタン……トリガー? 魔王の左腕?


 まさか、まさか……! ゼオン、お前も……




「『()()()()()』なのか!?」



 魔法が使えるようになるマジックトリガーと同様に、「魔王の力」専用のトリガーが存在していることにも驚いたが。自分と同じ「魔王後継者」が現れたことに最大の驚きを得た。


 僕のその驚きを含めた叫びを気にすることなくゼオンはそのサタントリガーと呼ばれる物を自分の左腕に刺す。

 プシュッ! と音が鳴り、それがマジックトリガーのような針がついた物とは違って噴射式の注射器だと知ることになる。



 ゼオンの体がドクンッ! と跳ねると……左腕がバキバキ、バキキッ!! と変化していく。



 人としてなんらおかしくもない普通の腕から……悪魔のように鋭い爪が生え、禍々しい力がそのまま形を成して左腕に纏われ……それは黒い籠手でも装備したかと勘違いしてしまうほどにドス黒い左腕となった。



 しかも、それで終わりではなく……





「出でよ 我が絶望の過去を影に堕とす光のマジックサークル!」




 これは……詠唱なんかじゃない。僕自身が一番よく知っている。


 ゼオンが左腕をかざすと宙に「黒い魔法陣」のようなものが現れた!






「降臨せよ……『天体竜 プラネタル』!!」





 そこから……「光の尾」が出現する。


 光の体。光の爪。光の翼。それら全てが発光していて、「光」としか形容できなかった。


 しかし、その身を露わにして初めて理解した。それが「竜」であったと。




「キュウアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!」




 高く、耳をつんざくような咆哮を上げて光の竜—「プラネタル」は現れた。

 ゼオンの左腕とは真逆に、神々しい姿を有したその竜を前に僕は言葉も出ない。


 魔人にとって人間に力を与えた「神」はもう崇める対象ではなくなっているが……それでも元から存在している本能が叫ぶ。




 「神々しいその姿は美しい」と。




 その光輝く姿は、いくらここが人が来ない場所と言えど目立ってしまう。とくに大きい竜の魔物が出たとなると誰も黙ってはいない。すぐにここに人が集まることになる。


 それを察し、ゼオンは



「標的は奴だ。……やれ」



 攻撃の命令を告げる。

 その瞬間、プラネタルはまた一度叫びをあげて天空に白い魔法陣を展開させる。



 そしてそこから極大の光のレーザーが僕に向けて撃ち落とされた!!




 ドッッ!!!!!!!!!

 ガアアアアアアァァァァンンン!!!!!!!




 眩しき光が体中を焼いていく。

 最初に不意打ち気味に受けたレーザーとは破格にならないその一撃は全身が消滅してしまうんじゃないかと錯覚する。


 冷たい地面に倒れ伏し、意識が朦朧とする。



「う、あ……あ…………」


「まだ、生きているのか」



 虫の息にも近い。戦闘なんて行えるレベルではないのは明らかだ。

 全然相手になってない。ゼオンはまだ何もしていないのだ。


 魔王の力だって、魔物の召喚しか行っていない。

 きっと自分の「魔王の心臓」のようにその先の「力」がまだあるはずなのに。


 獰猛な肉食動物に追い詰められる小動物。それが今の状況を表す言葉に違いない。



「次で終わりだ」



 ゼオンはまた光り輝く竜に命令を下そうとする。


 マズイ。……もう、次の攻撃には耐えられな—


「……ッ!!」


 ゼオンは突然、ピクッと何かに反応する。

 すぐに攻撃を中断してその場から離れた。



「ガアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」



 そこに灼熱の獅子が舞い降りる。

 ゼオンの竜—プラネタルを光が形となった存在と表現するならば、それは炎が獅子の形をとったと表現できる。


 ゼオンが距離を取ったのを確認すると炎の獅子は虚空へ消えた。




「アスト!!」




 と、同時に聞き慣れた声が。



「ベルベ……ット」


「大丈夫?」



 倒れている僕に心配そうな顔を覗き込ませる。でも僕は後ろめたい気持ちか、顔を背けた。


「……アストが無事でよかった」


 ベルベットも察してか何も聞かない。

 アストがマジックトリガーを盗んだのは元はと言えば魔人の世界に放り込んだ自分が悪いのだから。




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