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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
幕間 少女が泥濘の日々に生まれた意味を
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180話 炎森喜鬼



「……これで五人目か」


 レオンは襲い掛かってきたハンターを斬り捨てて呟く。

 さっきからハンターとよく出会う。アストの言う通り、今の自分達がハンターの罠にかかり包囲されているのは本当のようだ。


 だが、今のところ出会っているのは下っ端の部類だろう。ここに参戦してきているのはどこまでのハンターなのか。そこが重要だ。



(もしもリーダーか、それに近い実力を持っているハンターがいるのなら退却するタイミングを早めないといけないな……)




 自分やフリード、リーゼならなんとかなりそうだがアストは違う。



 まだ彼に強力なハンターとの戦闘は荷が重すぎる。

 魔人は人間よりも身体能力が高い。それは魔力があるおかげで、それが使えない人間は一見すると不利に見える。


 しかし、人間はその分戦闘技術を磨いている。鍛え、鍛え、鍛え続けて人間が人間を超えた時、その者は魔人にも等しい身体能力を有する。



 ハンターの中には、



 「ただ『異能』を持っただけで一人前の魔人狩りになれたと己惚(うぬぼ)れる雑魚」と、



 「修練の果てに人間を辞めた化け物」



 の二種類があるのだ。



 前者ならよほど強力な異能持ちではない限りアストでもやれるかもしれない。



 だが……後者と出会ってしまったなら……




 そこでレオンは思考を止める。



 新たな敵が、現れたから。





「ようやく当たりを引いたようだな」


「ほう……(ぬし)は」



 鉢合わせたのは一角の赤鬼─「炎鬼(えんき)」だ。



 レオンは魔人対策の部隊の隊長。だからこそ他の種族の主要な魔人の詳細は頭に入っている。


 の、だが……



(赤色の鬼……ぬらりひょんの新しい配下か……?)



 あんな妖怪に心当たりがない。いや、正確に言うと「これほど大規模な事態になるほどの作戦を任せられるであろう妖怪の中に」だ。



 ぬらりひょんの下には「妖魔四天王」と呼ばれる四人の強力な妖怪がいる。実質的な妖怪の中のナンバー2~5だ。


 そして、重要な作戦ならば必ず四天王の誰かが出張ってくる。


 今回のようなことならまず間違いなく出てくるはずなのだが……こんな下っ端のような魔人に任せたのか?



(今は気にすることではないか)



 レオンは頭を戦闘に切り替える。

 知りたいことは、こいつから聞きだせばいい、と。




「炎の門、開きて 閻魔の怒り 地上に燃ゆる烈火の叫び」




 炎鬼もレオンと戦うことを選択。即座に3節を詠唱する。




「『炎地獄(えんじごく)』!」




 周囲に赤色の魔法陣がいくつも展開。そこから炎が噴き出し、火の海と化す。




 レオン自体はこの魔法を難なく躱す。だが……



 火の海は木を飲み込み、そこからさらに別の木に燃え移っていく。


 そう。ここはエラの森。そんな場所で火の魔法を使えばどうなるか。

 危険どころの話ではない。このままでは大災害だ。




 ──魔法騎士として、これを見過ごすわけにはいかない。




「起動しろ。【フリージング・イフリート】」



 レオンは燃える炎のような烈火色の剣を引き抜く。

 さらに、魔力を込めると……その剣の装飾として埋め込まれていた蒼色の宝石が光った。



「炎を凍てつかせろ」



 一度剣を振るうと、魔法武器から魔法によって発せられた冷気が炎を凍らせて鎮火していく。このままでは大火事になったところをレオンはなんとか防いだ。




 しかし、それが隙となる。




 いつの間にか接近していた炎鬼は鋭い爪でレオンの肩を切り裂く。


 訓練された反射神経により避けようとしたが、火事になることに気を取られていたレオンはこれを完璧には避けることができなかった。服だけを切り裂かれたので出血こそ免れたが、次も運よくいくとは限らない。




「魔法騎士、というのは窮屈なものよなぁ。自分の身よりも他人のことを考えねばならん」




 これも炎鬼の作戦。


 相手はあの魔法騎士団(ウィザード・ナイツ)の隊長。普通に戦って勝てる相手ではないことはわかりきっている。


 ならばこそ、そこを利用しない手はない。



 魔法騎士団(ウィザード・ナイツ)に従事している以上、ただ相手を屠ればいいだけではない。周りの被害を考えなくてはならないのだ。


 当然、この場所でもそれは同じ。エラの森にはおそらく自分達と妖怪、それにハンターしかいないだろうが、もしも他の何の関係もない魔人が偶然居合わせていればどうなるか。魔法騎士団(ウィザード・ナイツ)にいる以上はいるかどうかもわからない相手のことを考えて動かなければならないのだ。




 そして不運にも、レオンの所持属性魔法は『炎魔法』。



 下手に強い魔法を撃てばこの森は大炎上してしまう。



 故に、ここまでレオンは魔法を使わずにハンターを相手にしていた。



「ほれ。ほれ。我はこの森が燃えようが一向に構わんぞ!」



 そんな気も知らず、いや、知っているからこそ。炎鬼は次々に魔法を放つ。


 その度にレオンは【フリージング・イフリート】で凍らせて消化していく。


 しかし、いくら魔法騎士団(ウィザード・ナイツ)の隊長と言えど魔法が自由に使えない状態で、唯一の攻防手段である魔法武器さえも炎の鎮火に使わされていれば、




 隙は、生まれる。




「ほぅれ!!」


「……!」



 とうとう、炎鬼の爪はレオンの体にヒットし始めた……!



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