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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
幕間 少女が泥濘の日々に生まれた意味を
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177話 死体玩具



「おい……ほんとにこの森ん中にいんのか? その……アスト・ローゼンって魔人は」


「知らねーよ。リーダーの命令だからしゃーねーだろうが」


「俺ぁ暴れられりゃなんでもいいけどなぁ」



 エラの森の中で三人の男が魔物を狩りながら愚痴をつつき合う。


 今では三百人にものぼる大勢のハンターがここに進行しているが、この森は広大。たった一人のいるかいないのかも定かでない存在を見つけるのは至難の業だ。


 せめて目は効率よくバラまこう、ということでハンター全員に発信機を付けており配られた携帯端末を確認すれば今回の作戦に参加したハンターの位置がわかるようになっている。


 これによってエラの森を上手く探索しているのである。



 だが、ハンターも長くここをうろついていられない。危険だ。

 だから例外はいるが、最低三人のパーティを組んで行動している。



「おっ? おいおいまた誰か死んでんぞ」


「ざっこーwww」


「三人もいて魔物に殺されるとかハンター向いてねーよバーカ」



 定期的に端末を確認して同業者と重ならないルートを選んでいる……が、今ではただの暇つぶしにしかなっていなかった。こうして仲間の死体を眺めるゲームにしか役立っていない。



「つか、マジで魔物ばっかは飽きたぞー」



 そろそろ魔物ではない、「人」が出てこいと祈った時だった。




「あ、おじさん達はっけーん!」




 ニコー、と戦場には似合わない可憐な笑顔と共に現れたのはミーシャ・パレステイナ。

 こんな見た目をしているが百戦錬磨のエリア6ハンターの一員。先日一人のハンターが彼女にたてついて首を吹っ飛ばされたのを知っている。



「ど、どしたー? 道にでも迷ったか?」


「嬢ちゃん。なんなら俺らと一緒に来るか?……ははは」



 本来なら若造のくせに自分達と同じ仕事をやっているイラつきから「ガキ」とでもなじってやりたいところだが、そんなことすればあのアホの二の舞に遭うのはわかりきっている。

 あんな凄惨な光景を見ておいてまだこの女をバカにするという愚行を行うほど彼らはアホではないのだ。生きるために媚びを売っておかなくては。



「んーとねー、えっとねー」


「え? あれ? つか、嬢ちゃん端末に映ってなくね? 発信機外れ─」





「ごめんなさい♡」





 ズパンッ! と空気を強烈に裂く音が鳴り。




 ミーシャに近づいた一人の男の首が飛んだ。



 ボトン。ゴロ。ゴロゴロ。



「はい?」


「は??????」



 自分達の足にぶつかった男の首。目がギョロリと明後日を向き宿主をなくして機能消失。



 何が、起こった?




「あははっ! なんかこれに似たおもちゃ見たことあるー。なんとか危機一髪ってやつ? 死んでるけどー」



「いや、いやいやいやいや………」



 お、




「俺達が何したって言うんだよ! おい!! な、なんでぇぇー!?」



 恐怖のあまり失禁して叫び出す。意味がわからない。どうしてまたあの惨劇が目の前で起こったのか理解できない。自分達が何か間違えたか? 夢なら夢と言ってほしい。




「昔ね。アッ君がね。ミーシャに教えてくれたんだー。悪いことしたら謝れーって。ミーシャね。アッ君の言うことだけはちゃんと聞かなきゃダメなの」


「あ、……あっくん???」


「だから~」





「いや『あっくん』って誰だよ!!!!!!」


「うらぎってごめんなさい♡」





 せめてもの抵抗で二人の男はミーシャに襲い掛かるが、一瞬で四肢と首が斬り飛び絶命した。


 ミーシャは端末を開いてまたニコーと笑顔になる。



「あと287人♡ いっぱい斬れる♪ いっぱい斬れる♪」



 自分の発信機は外し、こちらは相手の発信機を辿れる。

 これによって相手からは見えない、レーダー付き殺人鬼の出来上がりだ。



「これ終わったらアッ君と一緒に帰ってアイスたべよー。まっててくれるかなー」



 ブンブンと自分の得物である槍斧(ハルバード)を振り回しながら、笑顔の殺人鬼は血を求めてまた歩き出した。



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