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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
幕間 少女が泥濘の日々に生まれた意味を
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175話 救出作戦開始!



「む……?」


 アリスを抱え、エラの森へと入った妖怪である四人の鬼。そのうちの一人が異変に気付く。一つ角の、赤色の肌をした鬼──炎鬼(えんき)だ。



「どうした炎鬼よ」


「いや……森の入口近くから魔力を感じる。この強大な魔力……魔物ではあるまい」



 炎鬼が魔力を感知したことを伝えると、妖怪達は一層警戒心を高める。


 目当ての少女であるアリスを攫った後、しばしの休息を取った。森を無事に抜けるための魔力を回復するために必要なことではあったが、その休息が(あだ)となったか。



「迎え撃つか?」


「うむ。こちらはこの女子(おなご)を抱えた一人が我らの国へ戻れば良し。それに……()()()()()を遂行するのならば、我らのうち三人が足止めする方が良かろう。……毒鬼(どっき)。お主が持て」



 そう言って、雷鬼(らいき)は抱えていた少女を三つ角で紫色の肌をした鬼……「毒鬼(どっき)」へ渡す。

 この中でも毒鬼は直接戦闘を得意とする者ではない。故に、敵の足止めではなくアリスを国へ届ける役目になった。

 とはいえ決して単独で弱いわけではない。魔力は満タンなのでこの森を抜けるだけの力は充分にある。



「炎鬼、雷鬼、刃鬼よ。その魂……」





「「「「ぬらりひょん様のために」」」」




 宣言し、鬼たち四人はバラバラに散開した。




   ♦




「ここからは四人バラバラに動くぞ」



 エラの森へ入ってすぐに、レオンは今だけチームとなっている三人に作戦を告げる。



「まー、それしかないか」


「賛成ですわ」



 フリードとリーゼはすぐに了承するがアストはそれを聞いて黙ってはいられない。



「ちょっと待ってください。自分一人だけの時だったならまだしも、今はせっかく四人いるんですからバラバラに動くのは危険じゃないですか?」


「だが、それではいつまで経っても奴らを見つけられない。この森は広すぎる。一つでも多くの目と足が欲しい。それに魔物が多すぎて魔力感知も難しいからな」



 これには場所が悪かった。


 おそらく、森の入口付近にいる自分達の魔力は相手からは感知できているだろう。


 だが、森の中に完全に入り込んでいる妖怪達の魔力はもはや他の魔物に紛れて区別がつかなくなっている。木を隠すなら森……とは上手く言うもの。まさにそんな状態だ。



「アスト、覚悟を決めろ。ベルベット達を巻き込みたくないのなら、こうなる覚悟は出来ていたはずだ」



 ぐ……そうだ。レオンさんの言う通り。僕だけでやらなきゃいけない。その覚悟で来たんだろ。



(「ローゼンくん。レオン隊長の意見は正しいと思いますよ。この森の中で固まっていては相手を見つけることすら困難で、それこそ本末転倒です。多分ですが向こうも複数人というのならバラバラに動いている可能性が高いです。それならこちらもバラけて各個撃破……これがベストです」)



 クイナも同じ意見のようだ。それならもう反論の余地もない。



「時間は三十分。それが過ぎても尚、妖怪と接敵しなかった場合はポイントを決めて一旦合流することにする」


「わかりました。皆さん、気を付けてください」


「三十分……ね。りょーかい」


「では、行くとしますわ♪」




 僕を含めた四人はそれぞれのルートで森の中へ入っていった。



 少し進んだだけで、自分を囲むように柱のごとくあちこちに生える木々の隙間から何かが襲ってきそうで恐ろしい。


 闇が深くなってきてしっかり目を凝らしていないと、魔物の対応に遅れそうだ。



(「一段と暗くなってきましたね。視覚支援を送ります」)



 クイナの声と共に、闇に支配されそうになっていた僕の視界が一気に澄み渡るように明るくなっていく。


 「明るく」と言うと語弊があるが、夜の闇の中にいるにも関わらず森林の奥まで見えるようになった。光のような眩しさではなく、視界的な明るさと言うべきか。



「すごい……こんなこともできるんだ」



(「聴覚支援は慣れている人でないと耳が音を拾いすぎて(うるさ)く感じると思うので今は切っています。なので視覚だけ。……とは言っても音はこっちで拾っていますので異変があればすぐに伝えます。周囲の魔力もこちらで観測していますので」)



 いや、本当にすごいぞ。魔力感知や気配を探るというのは僕の苦手な分野ばかりだ。


 どうしても僕はキリールさんやフィアちゃんみたいに感覚が鋭くない。だから訓練をしてどうにか鍛えてはいるんだけども……これは助かるな。



(「それで。たしかアリスさんという方を捜す……と言いましたよね? 所持している属性魔法がわかればサーチできますが。もしも同じ属性の魔物がいればそれとは区別できませんけど」)


「え、えっと……あ、属性魔法は知らないなぁ……」



 とても便利な手段があったみたいだが肝心の情報が不足しているせいで使えない。こんなことならファミリーネーム同様、属性魔法も無理にでも聞いておけばよかったよ。今更言っても仕方ないけど。



(「それでは仕方ありません。私達はこのまま進んでみましょう。この先の魔物を出来る限り避けるルートを算出します。…………出ました。ルート、転送」)



 そう言うと、僕の視界に矢印が一本現れる。



「これは……」


(「はい。近くの魔力をサーチしながら、それを避けるルートを演算して割り出しました。この通りに進めば戦闘をある程度避けられるはずです」)


「ありがとう……!」



 一体どこまで役立つ支援が存在するのか。これだけでもお腹いっぱいなくらい役立っている。


 今思えば僕だってアレンやムウがいつもサポートしてくれてたし、やっぱりそういうのって重要なんだなと感じる。ただ、クイナが通信をかけている状況で二人が出てきたら頭がパンクしそうだけど。



「よし……このまま……」



 視界に表示されたルートに従って突き進む。


 ……しばらく進んでも、たしかに魔物と出会わない。

 時々、左右から魔物の鳴き声が聞こえてきたりするけど、上手く木に隠れるような進路になっている。




 このまま、上手くいけばいいが……





(「! ローゼンくん、右方200m先に人の反応! こちらに凄まじい速度で向かってきています!! 魔力反応なし…………『ハンター』です!!」)


 突然、クイナが緊急事態を伝えるように声を張り上げる。その声に引っぱたかれるように僕は警戒態勢に入った。

 



 な……ハンター!? もうエラの森に入ってきていたのか……!



 僕は剣を構える。


 いきなりハンターと戦うことになるとは運が無い。が、こうなることは覚悟していたんだ。来るならどこからでも……



 ザザザザザッ!!! と草木をかき分けて現れたその人影は──








「アッ君み~つっけた♡♡♡」


「…………え?」





 狂気の笑みを携え、可憐な少女の姿をした




 悪魔だった。





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